家庭で使用するエネルギーをすべて電気でまかなうオール電化。ガス料金と電気料金を実質的に1本化できるなどのメリットがある一方で、電気代が高騰している中、「オール電化にすると電気代がますます高くなるのでは……」と、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。


オール電化のメリット

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 プロならではの視点で、住宅の情報をYouTubeなどで発信する平松建築の平松明展さんは、「オール電化の家は増えていますし、今後もますます増えていくと思います」と教えてくれたうえで、メリットを次のように解説します。

「わかりやすいのは、ガスを使わなくなるので基本使用料を抑えることができる点と、機器をちゃんと選定できれば、省エネな家を実現しやすいという点です。そして最大のメリットは、太陽光発電と相性がいいこと。

 オール電化の家は、自宅で発電した電気をすべて使うことができます。今は電気を売るよりも、買う量を減らしたほうが節約できるので、電気の自家消費率が高くなるほど、お得になるというわけです」

 さらにオール電化と太陽光発電の組み合わせは、災害時に強いというメリットも。

「オール電化は災害に弱いというイメージあるかもしれませんが、太陽光発電と蓄電池でカバーできます。日中発電できれば、停電になったときも電気を使えるので、むしろ災害対策としておすすめです」

オール電化のデメリットは…

 いろいろなメリットがありますが、オール電化にはもちろんデメリットも存在します。平松さんは「特にこの5つが考えられる」と挙げてくれました。

【オール電化の主なデメリット】
① 停電のリスク
② メンテナンス費用がかさみやすい
③ 選ぶ設備によってはオール電化のほうが高くなる
④ 調理器具が限られる
⑤ エコキュートの深夜の音問題

「まずは停電のリスクですが、これに関しては先ほどお話しした通り、太陽光発電と蓄電池を導入することでカバーできます。ただし、豪雪地帯など、日照時間が短くて太陽光発電が向いていない場所では、せっかく導入してもまともに発電できない可能性があります。

 また、もともとメンテナンス費用がかさみやすいのに、雪の重みで壊れやすい分、さらに費用がかかる可能性が高いです。きちんと検討して費用対効果が得られるようであれば、導入してもいいと思います」

そのほかのデメリットを解説

「オール電化が向いていない家」の共通点…あまり知られていない“意外なデメリット”
写真はイメージ
 設備の中にはオール電化に不向きなものがあるそうです。

「例えば電気温水器です。ヒートポンプ式のエコキュートと比べると、電気温水器は電気を消費してお湯を作る効率が非常に悪い。電気温水器を選択した時点で、オール電化は完全にアウトなので、絶対に選ばないようにしてください。


 あとは、不向きとまでは言えませんが、電気代がかかってしまう設備としてスーパーラジエントヒーターがあります。これは『調理器具が限られる』というデメリットにも関係するのですが、オール電化にするとIHヒーターになりますよね。

 IHヒーターは底の丸い中華鍋や陶磁器の土鍋は使えません。それで調理器具が限られてしまうのですが、スーパーラジエントヒーターは中華鍋や土鍋も使えるので、ガスに近い料理をしたい方にはおすすめです」

騒音によるトラブルも注意

また、エコキュートは深夜の音が問題になるケースも。

「音はそんなに大きくないですし、私自身、音が気になったことはありませんが、都市部では注意したほうがいいかもしれません。エコキュートを設置した場所と、隣の家の寝室が近い場合は、夜に使用した時に音や振動が気になるケースが稀にあります。

 隣の家の位置関係がわかっているときは、寝室の近くから外すのが確実ですが、もっと簡単な解決方法は、昼間に効率よくお湯を沸かす“おひさまエコキュート”に変えること。昼間ならエコキュートの音は気にならないと思います」

<取材・文/黒田知道>
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