今年も主演作3本が公開予定。その1本目となる映画『木の上の軍隊』(堤真一さんとのW主演)が公開スタートした山田さんに、本作についてや、今も大切にしているデビュー作への熱い思いを伺いました。
当時の過酷さに倣い本物のウジ虫を食す

山田裕貴さん(以下、山田):食べました。僕、虫が大っ嫌いなんですけど、木の上で撮影しているということもあり、だんだん気にならなくなってきてたんです。それにモデルになった方の気持ちを、ずっと考えていたら、偽物を食べるという嘘はつきたくないと思って。撮影前に「本物を食べます」と伝えました。「だったら俺らも食べるよ」と、平(一紘)監督と助監督さんも食べてくれて「大丈夫、大丈夫」と。
――(苦笑)。ちなみに実際、どんな感じでしたか?。
山田:アサリをもっと薄味にしたような感じでした。出来上がった作品を観たら、本物なのかはわからなくて、堤さんには「食べなくてもよかったじゃん」と(笑)。
初共演の堤真一とはプライベートで対面済み

山田:いつかこういう作品にチャレンジしたいと思っていたところに、このお話をいただいて。
――本作で初共演と聞きましたが、プライベートではお会いしていたんですね。
山田:そうなんです。そういったご縁もあって、いつか堤さんとお仕事でご一緒したいと思っていました。「W主演です」と聞いて、頑張って俳優で飯が食えるようになって、ついに自分もここまで来たんだなと。そうした思いとともに、もちろん日ごろから感謝はしていますが、いま、こうした日常のありがたみや、ご飯が食べられることを忘れないでと作品が伝えてくれている気がしました。
いろいろな思いが詰まったこの作品が、RやPG指定(映画鑑賞における年齢区分)などがついていない、子どもたちも観られる映画として上映されていることも嬉しいですね。
自分の生まれた場所を忘れないのと一緒

山田:エキストラ出演をいれると、それまでにもいくつか作品に出演していましたが、僕の全てはゴーカイブルーから始まりました。そのときから、「山田さんまた出てください」と言ってもらえる存在であり続けたいなと思っていたので、「今後また出てほしい」と言われたら絶対に出演すると決めていました。
――本当に大切な作品なんですね。
山田:「ゴーカイブルーのときから好きです」とか、「今でもあの作品のファンです」と言ってくれる方もいますし、共演した後輩に、「あの作品を見て育った」と言われたこともありました。
当時の自分に「覚悟しておいたほうがいいよ」と伝えたい

山田:僕は細く長く活動していくタイプの俳優だと思っていたので、真ん中に立つことが連続するようになれるとは思っていなかったんです。だから、そうですね。今の自分への感想というより、当時の自分に「覚悟しておいたほうがいいよ」と伝えたいです。「あなたが感じてきたプレッシャーなんて大したことないよ。まだまだ体験したことのないプレッシャーが押し寄せるから頑張って」と(笑)。
――でもそうやって頑張ってきた結果が今に繋がっていますね。
山田:そうですかね。逆にあの時の自分から見たら、今の自分はとんでもないところに行っちゃったなと思うんじゃないですかね。
――まだまだこれからも期待しています。
山田:いやいや、ハードルは下げておいてほしいです(笑)。
いまの日本が平和かというと、そうは思わない

山田:『木の上の軍隊』も戦争を題材にしている映画ですし、戦争について知ることはいいことだし勉強するのもいいけれど、僕自身が戦争について語るのは違うなと思っていて。銃弾が飛び交う状況で生きたわけではないですし。彼らがどういう思いだったのかと、考えて考えて、考え続けながら撮影に挑みました。
いま、日本には戦争はないけれど、平和かというとそうは思わないし。銃や戦車や爆弾を使わなくても、傷つけ合うこともやっている。「戦争とは」と問われるとなんと答えていいか分からなくなるけれど、この作品をきっかけに、またいろんなことを考えています。
<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/小林純子 スタイリスト/森田晃嘉>
映画『木の上の軍隊』は新宿ピカデリーほか全国公開中
(C) 2025「木の上の軍隊」製作委員会
『木の上の軍隊』…太平洋戦争末期の沖縄・伊江島で、アメリカ軍の猛攻撃から命からがら木の上に身を潜めた2人の日本兵が、日本の敗戦を知らぬまま2年もの間生き延びた衝撃の実話をヒントに、作家・井上ひさしが上演した舞台の映画化。









【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi