今回はそんな経験をした女性のミラクルなエピソードをご紹介しましょう。
真夏でエアコンが故障! その時、元カレから連絡が
真夏のある日、富沢紘子さん(仮名・30歳/会社員)は、仕事を終えて一人暮らしの部屋に戻り、いつものようにエアコンのリモコンを手にとるとスイッチを押しました。「するとエアコンから聞いたことのない異音がして、風は出てくるけどいつもと違うぬるい風なんです。え? と思い、設定温度をどんどん下げてみたんですが風量が強くなるだけで全然冷えなくて」
色々試しているうちにエアコンの電源すら入らなくなってしまい、紘子さんは焦ります。
「エアコンのつかない室内はとにかく暑くて……ポタポタ垂れる汗をタオルで拭いながら、何か解決方法はないかとスマホで検索してみましたが、どうやら故障のようでした。夜だったのでマンションの管理会社は対応時間外。翌日連絡して修理や交換をしてもらうしかなくて、途方に暮れてしまいました」
そんな緊急事態に、たまたま元カレの直樹さん(仮名・29歳/会社員)から連絡が来ました。
「なんでも大掃除をしていたら、付き合っていた当時に私がなくしたと探し回っていた母親のお古の指輪が出てきたらしくて。それで連絡をくれたんです」
まだ少しだけ未練があった元カレの家へ
指輪が見つかったことは嬉しかったですが、つい直樹さんに「今エアコンが壊れちゃって、部屋が暑すぎてヤバい」と愚痴をこぼしてしまいました。
そして懐かしい直樹さんの部屋に向かうことに。
「まだ少しだけ直樹に未練があった私は、心配してもらえたことが嬉しくて。これはピンチがチャンスに変わるかも! とワクワクしていました」
そして久々に直樹さんと再会した紘子さんでしたが……。
元カレの隣にいたのは、今の彼女だった
「なんと彼の横には小柄で可愛らしい女性がいて『あ、彼女は1年前から付き合っている夏希(仮名)。グラフィックデザイナーをやってるんだ』と紹介されてしまって、はぁ? って感じでしたね。普通彼女いるのに、元カノ部屋に呼ぶ? ありえないだろ? と心の中で叫んでいました」
「そしたら直樹の部屋で封筒に入った指輪を渡された時に、こっそり耳打ちされてしまって」
実は大掃除中、この指輪が出てきた時に「こんな大切なものは絶対に本人に返してあげなきゃダメだよ」と、夏希さんが紘子さんに連絡するよう強く言ってくれたというのです。
「さらに『エアコンが壊れたのなら、ここに泊めてあげればいいんじゃない? 私もいるんだし安心でしょ』と言ってくれたのも、夏希さんだっていうんですよ」
心からふたりのことを祝福できた
そして直樹さんも初めは「彼女もいるけどいい?」と紘子さんに伝えようかと思ったものの、「そんなことを言うのは、紘子から復縁を迫られると勘違いしている自意識過剰な行動では? 紘子はただエアコンの効いた部屋で眠りたいだけなのだから、別に言わなくても構わないだろう」と判断したそう。「もちろん最初はちょっと面白くなかったですが、普通に夏希さんがいい子で……すぐにシャワー浴びさせてくれて『暑くて大変でしたね』って冷たい麦茶を出してくれたりと、なんだか居心地がよく、いつの間にか3人で楽しく話をしたりして、不思議な気持ちになってしまいましたね」
2人にとてもお世話になった紘子さんは、少し直樹さんに下心があった自分を恥じました。
「やっぱり夏希さんみたいな子と付き合える直樹は改めていい男だったな。よかったね! と心から思えたんです」
エアコンの故障から広がった“素敵なご縁”
そして紘子さんはすっかり夏希さんと仲良くなり、一緒に遊びに行く仲にまでなったそう。「夏希さんは友達が多くて、色んなジャンルの人達と交流があって。食事会などに誘ってもらうようになったんですよ」

「まさか元カレの彼女に紹介してもらった男性と付き合うなんて、想像もしていませんでしたね」と微笑む紘子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop