今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)にレギュラー出演する倉悠貴が、『あさイチ』(NHK総合)7月25日放送回にVTR出演した。

NHK『あんぱん』25歳俳優の“鎖骨”に注目集まる。朝ドラ初...の画像はこちら >>
 このVTR出演が話題なのは、『あんぱん』で演じる岩清水信司役と実際の倉とのビジュアル的なイメージがかなり異なっていたこと。


 2020~2021年放送の『おちょやん』が朝ドラ初出演作だったのだが、メンノンモデルにして俳優・倉悠貴の魅力とは?

 男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、倉悠貴の「鎖骨」や微動に注目してその魅力を解説する。

毎週毎朝聞きたい「どういたがですか?」

 土佐弁というのはあまり聞き馴染みがなかったけれど、今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』を見てすっかり日常語だと感じる。

 今田演じる主人公・若松のぶが感嘆を表す「たまるか」を頻出ワードとする本作だが、筆者はもう一人特に注意して聞いている土佐弁の使い手がいる。

 のぶの後の夫・柳井嵩(北村匠海)が入社した高知新報が発行する雑誌『月刊くじら』編集部員・岩清水信司(倉悠貴)である。のぶと嵩がやっとお互いの恋心を共有する感動的なラスト場面を描いたのが、第17週第85回だった。

 3か月後、編集部を辞めて代議士の下で働くのぶが選挙運動で高知に帰ってくる。久しぶりにのぶと会った嵩もまた東京行きを決意するのだが、それを編集長・東海林明(津田健次郎)に伝える朝の場面(第18週第86回)。そわそわする嵩を見た岩清水が「どういたがですか?」と控えめに聞く。

 このあっけらかんとした慎ましい一声こそ、毎週毎朝聞きたい。それくらい耳福な土佐弁だと感じる。

トップ声優との再共演で「聞き馴染みのある声」に

NHK『あんぱん』25歳俳優の“鎖骨”に注目集まる。朝ドラ初出演では「ヤクザ者」を演じたが
NHK『あんぱん』©︎NHK
 編集長役の津田健次郎がゲスト出演した『あさイチ』では、部下役俳優として倉がVTR出演。津田が声を吹き込んだ人気キャラクター『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(2000~2004年)の海馬瀬人役の声を披露してくれた現場エピソードなど、小さい頃から「聞き馴染みのある声」だとコメントしていた。

 上述した「どういたがですか?」を含め、『あんぱん』視聴者からすると倉が繰り出す土佐弁もまたすっかり「聞き馴染みのある声」になった。津田と倉は第78回カンヌ国際映画祭に正式出品された『恋愛裁判』(2025年)でも共演経験があるが、トップ声優との上司部下役での(撮影時期は前後するかもしれないが)再共演によって、明確な声の魅力をより確かなものにした。


 ただ倉の魅力はもちろん声だけではない。『あさイチ』では冒頭にもVTR出演。津田との共演場面での細やかなやり取りについて話していたのだが、彼が話す間、VTRをスタジオで見るMCの博多華丸・大吉が「イメージが違う」とコメントを入れていた。たしかに『あんぱん』で岩清水役を演じる倉に対して『あさイチ』でVTR出演する実際の倉は随分しゅっとした精悍な印象がある。

露な「鎖骨」が魅力を提示

 スタジオトークではさらに大吉が、VTR出演した倉のある部分についても言及。「あんな鎖骨出します?」と着目していた。

 唇のリップの照りも色っぽくきらめきながら、白いシャツ(タンクトップ?)から露な「鎖骨」がはっきりとその魅力を提示する。このVTR出演で倉悠貴がいかに「鎖骨」が魅力的な人かわかった。

 するとどうだろう、今度は鎖骨の周囲にすら魅力を感じてくる。ここで『あんぱん』初登場場面を確認しておく。第13週第64回、戦後、のぶは速記の勉強に励んでいた。力試しに闇市に行き、真っ昼間から飲んだくれている居酒屋客の会話を書き取る。

 その中に東海林と岩清水がいた。
ワンカット目、二人はテーブル席に座っていて、カメラは岩清水の後ろ姿を写す。これが初登場の瞬間なのだが、注目すべきはつまみをもぐもぐ、動かす岩清水の後ろ顎あたり。後ろ姿でも気になる、この動き……。

俳優としてもモデルとしても見せ方に余念がない人

NHK『あんぱん』25歳俳優の“鎖骨”に注目集まる。朝ドラ初出演では「ヤクザ者」を演じたが
NHK『あんぱん』©︎NHK
 初登場場面2カット目、カメラはテーブル席側に寄る。今度は岩清水の顔が写るが、ピントが画面奥ののぶに合っていて、岩清水の顔はピンぼけ。後ろ姿同様、ピンぼけ画面でも気になる、もぐもぐ微動する顎の動き。顎のラインと魅力的な微動が、『あさイチ』VTR出演で露になった鎖骨の魅力までつながっていたりして……。

『あんぱん』では、鎖骨の周囲である顎のラインを印象的なもぐもぐで微動させ、視聴者の目を釘付けにする。こうした鎖骨の周囲を魅力的に見せる演技は、倉にとっての朝ドラ初出演作『おちょやん』でも顕著だった。

 同作で倉が演じたのが、主人公・竹井千代(杉咲花)の弟・竹井ヨシヲ役である。第58回、千代の夫である天海一平(成田凌)から水をぶっかけられる場面がある。

 ヤクザ者のヨシヲが「何さらすんじゃわれ」と言ってドスを効かせると同時に下着の下から刺青が浮き上がる。
刺青はちょうど鎖骨の周囲に描かれている。朝ドラに出演する倉はどうやら魅力的な声と鎖骨の周囲に演技のアピールポイントを置いている気がする。

 2018年、大阪のアメリカ村にある古着屋で働いていた倉は、『MEN’S NON-NO』誌にスナップ写真が掲載され、それが俳優デビューのきっかけになった。『あさイチ』で露わにした鎖骨すらファッショナブルな装いの一部にしてしまう。そもそも出演時と「イメージが違う」ことは演技のバラエティが豊富ということ。俳優としてもモデルとしても見せ方に余念がない人だ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
編集部おすすめ