つるのさんは育児に専念するために二度にわたり芸能活動を休止するという、男性タレントとしては珍しい経験をもっています。
結婚20年を超えますが、今は夫婦喧嘩もないといいます。つるの家のこと、50歳を迎え、どう人生を送るか。つるのさんご自身に今の心境を聞きました。
読んで初めて知った妻の思い

つるの剛士(以下、つるの):おそらくですけど、「仕事をしたい」という言葉の中には、子育てが落ち着いたら自分の好きなことをやりたいという意味があるんだろうなと思いました。それが仕事なのか趣味なのか、奥さんに聞いてみないと分からないのですが(笑)。頭の中に具体的に描いていることがあるのなら、家に帰って話を聞いてみようと思いました。
――それは応援したいですよね。
つるの:もちろんです! 僕も楽しみです!
――ご結婚20年、夫婦喧嘩をしても互いを許せるようになったと会見で言われていましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?
つるの:結婚して20年間、それほど夫婦喧嘩はなかったんです。最初の頃は喧嘩をすることもありましたが、お互いに丸くなっていって、エヘン虫が研磨されて丸くなっていくようなイメージでしょうか。質が変わったんでしょうね。
最初は人間同士の文化の違いがあるから、ご飯粒が付いている・いないで喧嘩をしたこともありましたが、だんだん子育てのほうに神経がいくようになっていって、いつの間にか喧嘩らしい喧嘩がなくなり、喧嘩にもならないというか。
――あれはそうだったんですね! 芸能界ではめずらしかったですよね?
つるの:いつ休みでいつ仕事なのか、芸能界の場合は分かりにくけれど、当時の僕は忙しかったので言葉にして「育児休業で休みます!」と言ったので、余計に目立っていたかもしれません。喧嘩がなくなったのは、そのことが大きかったと感じています。
つるの家伝統の育児「心はかけても手はかけず」

つるの:これは僕だけの発信ではなく、いろいろな方がいろいろな表現で言っていることですよね。言葉は違っても、みなさんも似たような表現をしていると思います。僕にはこれが一番しっくりきます。「心はかけているよ、愛しているけれど、手はかけないよ、自分たちでやってね、育つよね?」という感じで、「大丈夫だよ」と子どもたちの心配を取り除くような意味もあるんです。
――子育ての最中に、言葉がしっくりきた局面があったのでしょうか?
つるの:野菜作りの経験が大きかったかもしれないですね。野菜って、無肥料・無農薬の状態でもすくすく育つんです。病気になるとほかの畑に移って農薬を使ったほうがいいこともあるんですけど、基本的には何もしなくても育つ。
お芋だって土に埋めなくてもなります。
大学は“人生の寄り道”のひとつ

つるの:そうです。マレーシアやカナダ、最初はさすがに心配でしたけどね。行かせてよかったなと思うのは、海外に送り出したあとの結果論にはなります。改めて子どもってすごいなって思いましたよ。高校生で英語も話せず親元を離れて海外で住むなんて、僕なら絶対に無理。すごいなと思います。
――その一方、学業という意味ではつるのさんご自身も今年春に東京未来大学のこども心理学部通信課を卒業されましたし、学びへの意識が高いですよね。
つるの:まあ寄り道です(笑)。人生の寄り道なんです。今している芸能の仕事が本道であれば、たまには寄り道していろいろな気づきがほしいなって思うことがあるじゃないですか。
最初は保育士の資格を取りたいという目的があって短期大学に入って、その目標は達成できました。そこでなんとなく目標を失ってしまったのですが、系列大学に「こども心理学」というものがあると知り、それならと入ってみたら、子どもに限らず心理学を学ぶ学部だったんですよ(笑)。
今は心理学にどっぷりハマっている

つるの:心理学を学ぶつもりはなかったですし、初めは興味もなかったんです。でも、勉強を始めたらとても面白くて、今ではもうどっぷりハマっています。そんなことになるなんて想像さえしていなかった。これって、寄り道のおかげなんですよね。
よく考えたら僕の今まで人生がすべてそう。夢はウルトラマンになることと芸能界に入ることだけ。それは叶いましたが、ほかに関しては全部寄り道なんです。
おバカタレントだって寄り道だし、歌手だって寄り道だし、自分がやろうと思いついて始めたことではなくて、偶然にそうなっていただけだけれど、結局寄り道の先には何かがあった。僕の人生、ずっとそう。だから、あんまり計算してもしょうがないなって。目の前に想像もしないことが起こる。それが人生で、楽しいですよね。
――そのモットーは、これからの先の人生でも同じでしょうか?
つるの:たぶん続くと思っています。昔は芸能界に入りたい、ウルトラマンになりたいという夢がありました。今は大きな夢はない。でも反対に、何が起こるかわからない感じが楽しいというか。だからずっと寄り道していたいと思います(笑)。
<取材・文/トキタタカシ>

【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。