東京都では、2024年度の小学校教員採用試験の倍率が1.1倍と過去最低となり、教員のなり手不足が深刻化しています。この背景には、モンペ対応の負担が影響しているとの声もあります。
そして、モンスターペアレントに悩まされるのは教員だけではありません。子どもを園や学校に通わせている親たちも、“関わりたくない”ような行動や言動をする保護者との出会いもを避けられないのが事実。今回は子ども同士のトラブルから発展した、子どもの友人の保護者の“驚くべき行動”にヒヤッとしたという女性のエピソードを紹介します。
神奈川県在住の京子さん(仮名・41歳)は、小学校5年生の男児を育てる主婦。息子さんは4歳のころから野球に打ち込む球児で、野球のクラブチーム内の人間関係がきっかけで、ある日事件が起こったのです。
息子が保護者に怒鳴られた?! 学校から急な呼び出し
「朝一番に先生から、『お子さんがお友達のお母さんに怒鳴られているのを見つけ、事情をご説明したいので、今から学校に来られますか?』と電話があり、一瞬でパニックになりました。詳しい話がよく分からないまま学校に向かうと校長室に通され、泣いている息子と、息子の野球クラブの保護者の美奈さん(仮名)とその息子が座っていました。
先生からお話があり『美奈さんが朝学校に来て、息子さんを廊下に連れ出し胸ぐらをつかんで怒鳴っているところを発見しました』と。その時は意味が分からなくて頭が真っ白になったのを覚えています」
我が子がお友達の母親から暴力を受けたと聞き、理由を聞く前に怒りが込み上げてきたという京子さん。一体なぜそのようなことが起きたのでしょうか。
きっかけは野球クラブでのできごとだった
「実は美奈さんの息子は、ちょっと問題児のような子なんです。野球クラブ内でも学校でも、気に食わないことがあると周りに対して暴力的になって、暴言を吐いたり、友達の靴に石を入れたりしていると聞いたことがあります。
「最近ではその子がお友達に石を投げてコーチから怒られていた話を聞いたこともあり、親子ともども警戒していたのは事実です。
息子は周りと揉めるのを嫌うため、必要最低限の会話しかしていなかったようです。前の日の野球の後に美奈さんの息子が『◯◯(京子さんの息子)にいじめられている、無視されている』と話したんだそう。そこで腹を立てた美奈さんが、翌日に学校へ乗り込んできたという流れでした」
子ども同士だって性格の合う合わないはあると思う、と京子さん。ほかのチームメンバーもプレイに必要な会話以外はしていないようで“何をされるか分からないから怖い”といった話を別の保護者からも聞いていました。
「土下座しろ」罵声を浴びせられ泣き叫んだ息子
「校長室内での事情聴取の際に何があったのかを美奈さんに問うと、『腹が立ったので胸ぐらをつかんで土下座しろと罵声を浴びせてしまいました』とのことでした。息子は泣き叫び、その様子を見ていた児童が慌てて先生を呼びに行ったんだそう。この話を聞いてショックと怒りの両方が交互に押し寄せてきて感情がぐちゃぐちゃになり、私も涙が止まりませんでした」

「実際に話を聞いていくと、美奈さんの息子は『いじめられてるとは言ってない。無視されたと話しただけ』と美奈さん親子内での話は食い違い、事実は分からずのままでした。
うちの息子は、野球でミスをした時に死ねなど暴言を吐かれたことで腹が立ち『言い返すと何かされると思って無視してしまった』と言っており、このことで相手の子に嫌な思いをさせてしまったのは事実だったかもしれません。
しかし子ども同士の揉め事にいきなり親が出てくることへの不信感は拭いきれず、『すみませんでした』と何度頭を下げられても許すことができませんでした」
この日の息子さんは学校でこのまま授業を受けられる状態ではなく、早退することになったんだとか。
後日、謝罪に来たが……逆に怒りがピークに
「後日、美奈さんと旦那さんとその息子が3人で我が家に菓子折りを持って謝罪に来ましたが、どこか反省の色が見えませんでした。さらに『うちの子も嫌な思いをしたことは分かってほしい』と言われたことで怒りがピークに達してしまいました。『そもそも学校外のことなのに学校に乗り込んでくることに不信感がある、子どもたち双方の話を聞く前に保護者が急に怒鳴ってくること、ましてや土下座しろなんてありえない』とお話しし、野球のコーチにも報告させてもらう旨をお伝えしたんです」

その後の関係性は?
「あれからというもの、美奈さんの息子の暴力や暴言に嫌悪感を示す子どもが多いことをコーチが美奈さんに伝えました。より良いチーム作りのための話し合いの場を設けることを提案してくれたのですが、美奈さんは話し合いを拒否したようで、美奈さんの息子は野球チームを辞める流れになりました。学校でも子ども同士関わることはないようで、息子にも今後友人関係で悩んだ時は相談してほしいことを伝えました。あのとき『できるだけ関わらない方が良い』とアドバイスした私が間違っていたのか、人間関係の難しさも学ぶきっかけになりました」
和解には至らなかったようですが、子ども同士の人間関係がこじれたときの対応について改めて考えたという京子さん。本人同士での解決が難しい場合は、中立の立場で話を聞いてくれる大人に相談することを子どもに教えたそうです。
子どもに“相談する力”を伝えることは前向きな一歩です。けれども親の関わり方を誤れば「モンペ問題」として周囲に負担を与え、誰もが被害者にも加害者にもなり得ます。その現実を忘れず、子どもを守りつつ冷静に向き合う姿勢が、私たち大人に求められているのです。
<文/鈴木風香>
【鈴木風香】
フリーライター・記者。