シンガーソングライター・あいみょんのタトゥーが物議をかもしている。8月8日発売の月刊女性ファッション&カルチャー誌『GINZA』9月号(マガジンハウス)の表紙を飾ったあいみょんだが、左腕の二の腕に人型のような模様のタトゥーが入っていた。


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 このことにSNSでは好意的な声もある一方で、“例によって”批判的な声も少なくない。とはいえ、タトゥー発覚が必ずしも騒動の引き金になるわけではない。あいみょんだからこそ反響が大きかった理由を分析したい。

気取らない関西の姉ちゃんというイメージ

 まずあいみょんのイメージが大きい。あいみょんは音楽フェスでもメインステージを任されるなど、間違いなくトップアーティストの地位に君臨している。しかし、これまで「気取らない関西の姉ちゃん」「自然体で飾らない」という印象が根強い。ゆるっとした関西弁も親しみやすさを与え、トップアーティストという遠くにいる存在でありながら、いい意味で“近所にいそう”である。

 独自の世界観を示すタイプのアーティストであれば、タトゥーを入れようが、奇行を見せようが、そこまで目くじらを立てられることはない。もちろん、あいみょんも共感できる歌詞やキャッチーなメロディーなど、“あいみょん”という世界観を築けている。ただ、やはり気さくさを感じやすい曲調やキャラクターからあいみょんには親近感を覚えやすい。

急に遠くに行ってしまったような感覚

 とはいえ、タトゥーは依然として暴力性や反社会性を連想されやすい。そんなタトゥーが入っていることがわかり、急に遠くに行ってしまったような感覚に陥った人もいそうだ。昔はよく遊んでくれた近所のお兄さん・お姉さんが、悪そうな友達と歩く姿を見たときのようなショックを受けた人もいたのではないか。

 また、その親しみやすさゆえに幅広い年齢層から支持されているが、その中にはタトゥーに抵抗のある中高年層も少なくない。
アイドルではないため、“ガチ恋勢”は多くはないが、それでも「裏切られた」と感じる男性ファンもいたのではないか。

良すぎる歌詞とのギャップ

 あいみょんの歌詞も関係している可能性が高い。あいみょんの楽曲は恋愛や日常を真っすぐかつ純粋に描いた歌詞が多いが、「歌詞の内容は本人の人柄や生き方を映している」という幻想を抱く人は珍しくない。あいみょんが作詞作曲を担っていることも手伝い、「あいみょん=ちょっと不器用なピュアな女性」という先入観を持たれたことが、反響の大きさにつながったように思う。

“近所の姉ちゃん”あいみょんのタトゥーで波紋…なぜここまで? 騒がれる歌手とそうでない歌手の“明らかな違い”
『ギター弾き語り あいみょん Songbook』(シンコーミュージック)
 また、ストーリー性のある小説・映画のような歌詞の楽曲も少なくない。楽曲を聴きながら、あいみょんを主人公にして、その情景を思い浮かべながら聴いていた人にとっては、「主人公にはタトゥーが入っている」という設定を追加する必要が生まれる。

 夜中のクラブや田舎の銭湯が舞台の楽曲であれば、タトゥーキャラを登場させることは難しくない。しかし、先述した通り、何気ない日常や純愛物語を描写した楽曲が目立つため、脳内でイメージを馴染ませることは容易ではない

 親しみやすい楽曲だからこそ可能だった“楽しみ方”の難易度が上がったために、残念がっているファンもいそうだ。

ポップ=大衆向け? 凝り固まったイメージ

 曲調がポップであることが一番大きい気もする。ロック系やヒップホップ系のアーティストにタトゥーが入っていたとしても、大きな騒ぎにはならない。タトゥー発覚が騒動になったアーティストと言えば、優里やYOASOBI・Ayaseが挙げられるが、いずれもポップ寄りの曲調をしている。

“近所の姉ちゃん”あいみょんのタトゥーで波紋…なぜここまで? 騒がれる歌手とそうでない歌手の“明らかな違い”
『バンド・スコア あいみょん「瞬間的シックスセンス」』(シンコーミュージック)
 ポップソングは大衆向け、ロックやヒップホップはアングラ向けというイメージが、ポップソングを生業とするアーティストに品行方正を求める空気感を醸成し、タトゥーが発覚したときの大発狂につながっているのかもしれない。


 とはいえ、あいみょんや優里が堂々とタトゥーを見せることで、ポップソングの凝り固まったイメージをほぐし、新しいポップソングが生まれることにもなるだろう。あいみょんをはじめ、タトゥーの入ったアーティストの今後の活躍に期待したい。

<文/浅村サルディ>

【浅村サルディ】
芸能ネタ、炎上ネタが主食。好きなホルモンはマキシマム ザ ホルモン。
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