最近では「mito ǀ60代バツなしおひとりさま(@60life_mito)」というアカウントでインスタグラムを開設。逗子から発信する楽しくおしゃれな日常が話題になっています。「自由でとても楽しい」という現在の暮らしについて、そして結婚観についてもお話を聞きました。

あえて「バツなしおひとりさま」と発信する理由
──ブログやインスタグラムで「バツなしおひとりさま」という表現を使われていますが、特別な意味があるのでしょうか?折原みとさん(以下、折原):「おひとりさま」とひと口に言っても、「バツあり」と「バツなし」では、ニュアンスが違うと感じています。一度でも結婚したことがある人は周りにもたくさんいますが、一度も結婚したことがない人って、実は意外と少ないんです。だからこそ、「なんで結婚しないんだろう? 何か理由でもあるの?」とまわりからも思われがちで、実際に「なんで一度も結婚しないの?」とよく聞かれるんです。
――そういう質問をする人は一定数いますよね……。

でも、バツなしおひとりさまがどんなに楽しく暮らしていても、世間はなかなかそれを理解してくれません。そう考えた時に、私と同じように「なんで一度も結婚しないの?」と何度も聞かれて、嫌な思いをしている人がたくさんいるだろうと思ったんです。
誰かと一緒にいることで、幸せを感じられる瞬間も
──折原さんは、結婚に対してどのような考えをお持ちですか?折原:私は「結婚しない主義」ではないんです。結婚したいと思えるような相手がいれば結婚したいと思っていますし、そういう方がいなければ結婚しない。そんなスタンスです。
ただ、「女性が家のことをしなければいけない」とか「できるだけ一緒にいないといけない」といった、お互いを縛るような関係は、私には難しいですね。自分で働いて仕事もすごく楽しいですし、好きなことをして自由に生活しているのに、今更、何かを我慢してまで誰かと一緒にいる必要はないかなと考えています。
とはいえ、誰かと一緒にいることで、楽しいことや幸せを感じられる瞬間もありますよね。それはまったく否定しません。だから、お互いに楽しいことや幸せをシェアできる相手がいるなら、結婚という形も「あり」だなと思っています。
「結婚しなきゃ」と強く思っていた40代
──結婚に対して、これまで気持ちの変化などはありましたか?折原:ありましたね。30代後半くらいでしょうか、周りから「なんで結婚しないの?」ってたくさん聞かれたこともあって、「とりあえず一回は結婚したほうがいいのかな」と思っていた時期がありました。一度結婚すれば、周りから何も言われなくなるんじゃないかとも思ったんです。
──何かきっかけがあったのですか?

その半年後に、リキ丸と遠い血縁にある「こりき」という2代目の犬を迎えたのですが、そのとき「こりきもゴールデンレトリバーで大きいから、歳をとってからの介護のためにも結婚しておいた方がいいのかもしれない」とか「この子を見送る時のことを考えて、結婚しておいた方がいいのかも」と思ったんです。辛い時に一緒に乗り越えてくれる相手が欲しいと思った。だから、40代は特に「結婚しなきゃ」と強く思っていましたね。
豊かな人間関係があれば、一人でも孤独ではない
――お一人で大きな悲しみを超えるのが難しいと感じたんですね。折原:そうです。でも、それから12年経って、50代のときにこりきを見送ったとき、一人でも大丈夫だったんです。もちろん、とても辛かったです。でも、周りの人たちが本当にたくさん助けてくれたんです。近所の方もいるし、友達もいる。
豊かな人間関係があれば、一人でも孤独ではない。そして、ちゃんと年を重ねていけば一人でもやっていけると思えるようになりました。
自分にとって何が大切かを改めて考えた
──年を重ねる中で、一人でも大丈夫と思える人生経験を身に着けていたのですね。折原:はい。年を重ねていくことで、パートナーがいなくてもやっていけるスキルも身についていき、「結婚しなきゃいけない」理由がなくなりました。また、自分にとって何が大切かを改めて考えたとき、私にとって大切なものは仕事と犬(現在は3代目・ハルちゃん)だったんですよね。揺るがない大切なものがあることで、結婚の必要性をますます感じなくなりました。50代に入ってからですね。そこから、無理に特定のパートナーを求めたり「結婚しなきゃ」と思うのをやめました。

折原:もちろん、いい人がいれば結婚したいとは思っています。でも「しなきゃ」という義務のような気持ちは、もうないです。犬の介護とか、なにかのために結婚するという目的もありません。だから、もし私が結婚したら、「すごく純粋な愛で結ばれた相手なんだな」と思ってもらえばと思います(笑)。
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豊かな人間関係と自立した気持ちがあれば、一人でも大丈夫。毎日を楽しく豊かに過ごす、折原さんの前向きなメッセージが伝わってきます。
【折原みと】
漫画家、小説家。 エッセイ、詩集、お料理本、絵本、CDなど、様々なジャンルで活動中。 湘南在住、愛犬はゴールデンレトリバーのハルちゃん。着物好きの和物フリーク。 防災士。野草料理研究家。
Instagram:mito/60代バツなしおひとりさま(@60life_mito)
<取材・文/大夏えい>
【大夏えい】
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作。