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四六時中育児に追われ、身も心もボロボロになったとき、いちばん寄り添ってほしいのが「夫」の存在。けれど、そうはいかない場合の方が多いようです。
佐藤あおいさん(仮名・34歳・主婦)は、育児が一番大変な頃に、「一緒許せない言葉」を夫に言われてしまったそうです。
慣れない子育てに息が詰まる日々
「息子は敏感な子で、本当に子育てが大変でした。1歳から場所見知りがはじまり、子育て広場のようなところに連れて行っても、ほかのママ友の子どもは楽しそうに遊んでいるのに、息子だけは帰りたいと泣き叫びました。育児に追われる中で、ママ友との会話は唯一気持ちがやすらぐときでしたが、息子にかわいそうなことをしている気がして、子育て広場に行くのもやめました。子どもに何か問題があるのか、自分の育て方が悪いのかと悩んで、息が詰まりそうな毎日でした」
夫に相談するも「考えすぎ」と一蹴
そんな苦しい日々の中で、子どものことを話せる相手が少なくなってしまったあおいさん。夫にだけは分かってほしいと、相談を持ち掛けたそうです。「どこに行くのも嫌がるし、しまいには不安がって家を出たがらなくなってしまった息子。育児相談に行こうかと主人に相談しましたが『考えすぎだよ』『なんでも病気にしようとするな』と取り合ってもらえませんでした」
相談する相手もおらず、役所の育児相談窓口や療育センターなどに電話したこともあるというあおいさん。それでもあまりしっくりする返答は得られず、かなり子育てに行き詰まっていたそうです。
追い打ちをかけた「一生許せない言葉」
そこに夫から「一生許せないひとこと」をぶつけられてしまいました。「毎日子どもと接するのはわたし。育児の悩みは男性には分からないのだろうなと思いました。だったらせめて、ちょっとした愚痴でも聞いてもらえればスッキリするかなと思い、主人に『今日はイヤイヤがひどくて疲れちゃった』など、育児の愚痴をこぼしてみたんです」
すると、驚くような言葉が返ってきたといいます。

「子育てが大変なのは当たり前」
夫の主張は、「子育てが大変なのは当たり前で、それを頑張るのは母親として当たり前。そんなことも想像しないで産んだのか」ということだそう。これはあおいさんだけでなく、全国で奮闘する母親たちを敵に回すような発言でしょう。そもそも2人の子どもなのですから、育児も2人でするべきなのに…。あおいさんに任せっぱなしなうえに、ひどい言葉をかけるなんて、信じられません。「『大変だね』とか『おつかれさま』とか、ちょっとしたねぎらいの言葉だけでももらえたら、それでよかったんです。ママ友ともあまり話せず、つらい状況だったので、本当に苦しかったです」
誰にも相談できず、メンタル不安定に…
その後、ウツ気味になってしまったあおいさん。心療内科に通い、カウンセリングを受け、薬を飲んでいた時期もあったといいます。
そんなあおいさんの子どもも徐々に成長し、いまも慎重な性格ではあれど、友達もできて、元気に学校に通っているそうです。
辛い時期を乗り越えても、忘れられないあの言葉
「昔のような、誰にも相談できない状況ではなくなり、わたしも趣味などで自分の時間も楽しめるようになりました。けれど子どもの昔の写真を見ると、辛かった思い出も一緒によみがえってくることがあります」このことは、“人生で最も怒りを感じた瞬間”として、子どもが大きくなったいまでも忘れられない言葉としてあおいさんの心に残っているようです。
「ときどき、このとき言われた言葉を思い出して、主人に対して、とてつもない怒りが湧き上がってくることがあります。
しかし、いまは夫にこのことを伝える気はないそう。その代わり考えていることがあるとか。
許せない発言は、夫の死後に精算?!
「主人はこの発言を忘れていると思います。他人の気持ちが分からず、何の気なしにひどいことを言う人ですから。だから、いまそのことを主人にぶり返しても平行線なだけなので持ち出すつもりはありません。その代わり、もし主人がわたしより先に亡くなったら、その件については許せなかったといって、お墓に泥を投げつけるつもりです。もちろんそのあと掃除はするつもりですが(笑)」とんでもない決意をしているあおいさんですが、ひとつだけ懸念があるそう。
「ただ、主人は健康オタクで長生きしそうなんですよね(笑)。わたしが先に死んだら、この怒りを持ったまま死ぬのかな、と思うと無念です」
命を懸けて育児をしているママにとって、誰よりも理解者であってほしい夫。そんな夫の心ないひとことは予想以上に傷つくものです。あおいさんの怒りが、いつか良い形で昇華してくれればよいのですが…
<文/塩辛いか乃 イラスト/とあるアラ子>
【塩辛いか乃】
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。
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