TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。
第50回となる今回は、40歳の誕生日を目前に思うことを綴ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
もうすぐ40歳になる私の悩み
今月40歳の誕生日を迎える私。順調にオトナの階段を上っておりますが、最近やはり年齢を感じる瞬間が出てくるようになった気がします。私はもともと食が細いタイプではありますが、まともな食事をしていないと明らかに肌がしぼむ感覚が。内側からの張る感触が足りなくなり、目元にはうっすらとシワまで……。
20代のアナウンサー時代は、「めんどくさいし別に食べなくてもいいや! むしろダイエットになるかもだし!」くらいの感覚で一食一食をないがしろにしていた節がありましたが、今は食べること=一種のアンチエイジングであり、私にとっては「肌管理」のようなもの。
しかもあまり痩せすぎだと骨粗しょう症のリスクも上がりますからね。でも胃がどうしても食べ物を受け付けない日もあるからつらい。ここにきて「食べられない」が悩みになるだなんて思わなかった……。
自分がどんどん祖母に近づいていく感覚

そして最近だと、なにかしらの音がないと眠れない、という現象まで。無音だと眠りにつけず、うっすらとラジオを流しておいてスリープタイマーで就寝、というのがすっかり癖に。
実はこれ、うちの祖母もそうだったんですよね。一緒に寝るときよく祖母は耳にイヤホンをいれてポケットラジオを使っていたっけ。子どものときはその行為、まったく意味不明でしたが、横にいる私を起こさないように気を遣って寝ていたんだなあ……。わかってあげられなくて申し訳なかったと感じると同時に、自分がどんどん祖母に近づいていく感覚が怖い。
さて、自分からいわゆる「身体的若さ」がどんどん目減りしていっていることを日々実感する一方で、最近強く感じるのが「精神的なみずみずしさ、場合によっては強さ」が、あきらかに20代のころの自分に負けているという現象。
そう、身体的な面のみならず、精神的な面でも、なんだかかつての自分に負けているような感覚があるのです。
20代、局アナだった頃を振り返る
最近よく思うのです。20代のころの自分、なんであんなに自由闊達だったんだろう、そして精神的にかなり強く、独立心も旺盛だったな、なんて。当時の私は局のアナウンサーで、若さゆえ、知識不足ゆえ、生放送でやらかして上司やらディレクターにこっぴどい注意をうける、なんてこともよくありました。
悔しくてトイレでひっそり涙を落とすくらい落ち込むような出来事があっても、あのときは自分で自分を鼓舞し、元気づけ、自分で自分を癒す能力があった。誰かに泣きつくとか、しなかった。
なぜあのときの私はあんなに強かったのだろう、と、自分のことであるにも関わらず「かっこいい女だったな」なんて思い出す瞬間が最近よくあるのです。
当時の私の趣味は一人旅。
彼氏がいようがいまいが、自分の予定は自分優先。旅先で、「あ、帰るの明日なんで」と事後報告、なんてこともあったな。自分で自分の機嫌をうまくとり、自分の力でリフレッシュをし、それを明日への活力にして日々仕事を頑張れていたものでした。
今年、一人旅が実現しなかったワケ

昔は旅行の予定を立てている瞬間そのものが楽しくて楽しくて仕方なかったのに、今は「何時のJRに乗って、そのあと何番のバスに乗って……」と考えるだけでなんだか脳が沸騰しかける。
あのときのやる気はどこに!? もしかして女性ホルモンの乱高下の影響か……と不安になった私。
先日婦人科を受診した際、「20代のころは身心ともに安定していたのに、最近あれほどの元気もないし、なんか浮き沈みがあるような感じがするのは年齢のせいですかね……」と独り言ともつかないつぶやきを主治医に吐露したところ、いつもさばさばした女性医師は、いつも以上のさばさばレベルで「20代なんて何も考えずに突っ走れますからね! 今は考えることが多いから当たり前ですよ!」とさらっとかるーく流したのでした。
そ、そうか。
まあでもあのころのフットワークの軽さには目を見張るものがあったのは確か。
もちろん若さゆえに猪突猛進できていたのもあるでしょうが、あれくらいの勇気が今の私にもほしい。今の私に必要なのは、むしろ精神的なほうの若さなのかも。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne