渡鬼シリーズ終了後の歩み、そして現在にいたるまで——当時は語れなかったことも含めて、宇野さんが“今だからこそ”綴るエッセイ連載。今回は、宇野さんが日々考えているという“自身の老後”について綴ります。(以下、宇野さんの寄稿)。
日々、老後について考える
皆様、ごきげんよう、先日誕生日を迎えた年女、宇野なおみでございます。日々、老後について考えているわたくし、先日めでたく年金の追納が終わりました(国民年金)。
現時点(2025年8月時点)で独身。「ひとりでしにたい」もとい、「ひとりでしぬかも」もだいぶ現実味を帯びてきております。
しかして私は結婚を、縦の意見と横の意見を織り成して世界でひとつのブランケットを作っていく「ラップバトル」だと思っていますので。
サイファーしたくなってあっさり結婚していることもあり得ます。もっとも結婚生活をラップバトルと考えている女と結婚したがるニンゲンがいるかどうかはまた別問題……。
老後、どう過ごしたい~?
私の周りは独身女性も多いので、最近のトレンドトピックは上記の「老後をどう過ごしたいか」です。何せ生涯未婚率は近年上がっており、2020年では50歳の生涯未婚女性の割合は17.8%。1980年にはわずか4%だったことを考えると、大幅に増えていると言えるでしょう。
日本は平均寿命の長いことで知られます。
昔は「仲良い友達と協力し合いながら暮らしたいよね~!」なんて夢物語を学校からの帰り道にしていたものです。現実問題として、お互いに助け合わないと社会そのものが成り立たない時代が近いと考えられるのではないでしょうか。
人生スパンの新たなターン

第1期が10歳で渡る世間の出演が始まった頃。最終シリーズが終わったのが12年後の22歳。
23歳から35歳を能力値と経験を積む時期と規定し、フリーランスとしてさまざまな仕事をして参りました。芸能の仕事以外で言えば、MC、ナレーション、飲食スタッフ、接客業、美術館のツアーガイド、通訳、翻訳、保険営業の研修、アニメ会社のスタッフ、取材・インタビューライター、エッセイを書く、あとなんだっけ……あれやこれや。
もちろん一気通貫で仕事を続けられる方は素晴らしく、尊敬しておりますが、己の体の弱さを考えると仁王像よりは千手観音像になりたかったのです。
今年、36歳になり。46~48歳に向けて、スキルのさらなる構築、資産や人間関係の形成、そして何より健康のため、体を鍛えていきたいと思っている所存です。
石井ふく子先生の過ごし方に憧れて
ちょっと前に、石井先生が、仲良しの女優さん達と同じマンションに住み、緩やかな相互扶助女子会をやっているという記事を読んだことがあります。以来、素晴らしい老後だと憧れていることしきりなのです。もはや比較するのもおこがましきハイソサエティの暮らしは難しくとも、友人たちと近所に住みたい、協力し合えたらなあとは常に思っております。
今後も独身のままの女性は増えていくでしょうし、そうなると問題はやはり住居。30代半ばになると、新卒で就職した女性陣から、マンションを買う話がちらほらと出てきます。
定年までに支払いが終わるようにローンを組むことを考えると、30代半ばというのが1つのターニングポイントになるのでしょう。
令和の音無響子(ロマンス抜き)を目指したい
で、わたくしの人生における壮大な目標は、「令和の音無響子(ロマンス抜き)になる」ことでして。だいたいの人は一発で理解してくれますので、日本の漫画文化って素晴らしいですね。ありがとうるーみっく先生。
これだけ多様なジャンルで「オタク」が増えてきた今日この頃、オタク女性のシェアマンションがあったら面白いんじゃないか、と思っています。入居の折、自分の好きなものについて語れること、入居者が亡くなったら手伝いをすることを条件にするような。
まだまだ絵空事ですけど、このエッセイがバズったら、ワンチャンスあるかもしれない(笑)。ま、響子さんはご自分の物件ではないのですが、平たく言うと「入居者の方と協力しながら生きる管理人さん」になりたいんですね。
弱い紐帯、もとい「ゆるい紐帯」を

弱い紐帯とは、アメリカの社会学者マーク・グラノヴェッターが唱えた「弱い紐帯の強み」”The strength of weak ties” 説、が大元です。
ざっくり言いますと、繋がりが薄い人のほうが持っている情報が被らず、新規性のある情報を得やすいという説ですね。例えば事業会社の経理をしている人が航空業界に転職したい場合、同じ会社の同僚より「高校の同級生だった空港勤務の高校の同級生」のほうが情報を持っている、みたいな感じでしょうか。
ちなみにこれについて、私は長年の推し作品・『スタンドUPスタート』(福田秀/集英社)という漫画で読みました。あ、お気づきのことを今更言っておきますと、私は本と漫画がないと生きていけないタイプのオタクです。
この「弱い紐帯」をもっとゆる~くしたものを、今後どんどん広げていけたら、と願っています。
走り続ける偉大な先達を目にし続けて

何しろ私の目の前には橋田壽賀子・石井ふく子というもはや歴史に名を刻みし御大がいましたし、多くのベテラン女優さんの活躍も目の当たりにしていたので。もちろん、見てきた方々が一握り中の一握りだったことは否めませんが、幸運な目撃者だったと思っています。
“青春”が終われども、その後は朱夏、白秋、玄冬(※中国の人生を四季で区分した考え方、北原白秋のペンネームの由来と言われます)と続くわけです。こちらのほうがずっと長い。
ならば、そのすべてをのびのび、つやつや、ワクワクと生きていきたい。昔も今も、考えは変わりません。
私は自分の人生を肯定したいですし、人様のそれも肯定したいんですよ。
みんな頑張って生きているんですもの。新型コロナウイルスなんてものがはびこったり、馬鹿みたいに暑かったり、信じられないくらい円安になっちゃったり、そんな中でも生きている。
渡る世間は鬼ばかりと言いますが(ことわざでは言わない!)もしかしたら自分だってもう鬼の側かもしれない。だったら、鬼同士、この鬼ヶ島でできる限り、楽しく生きていこうじゃありませんか。
いつどうなるかわからないからこそ、このマインドは持っておきたいものです。
そう、おれたちの戦いはこれからだ!
……これ、漫画好き以外の人に通じるオチですか?
<文/宇野なおみ>
【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中