“大人と子どもの狭間”ともいえる大学生活をどう過ごすかは、本人次第。経済学部だった筆者は大学生活を無為に過ごし、あの4年間は単なるモラトリアムでした。


 一方、有意義すぎる大学生活を過ごした若者もいる模様。東京造形大学に通う21歳・ピエロ大好き人間さん(@I_LOVE_Clown)は、貴重な4年間を“左手の複製”に捧げたのです。その結果、本人も満足のいくレベルに到達!

 2025年6月18日、彼は「大学に入って4年! ようやく高精度な左手の複製を安定して行えるようになりました!!」というポストとともに、自身が手掛けた“左手の複製”の動画を投稿しています。

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 毛穴とかシワとか血管とか、リアルすぎてびっくり ちゃんと、指紋まで再現してあるし。

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
あたたかそうな手のひらだ
 どんな方法で、このように見事な左手を複製したのか? そもそも、どうして左手の複製にこだわっているのか? 左手を複製する際に大変なこと、そして意識している点は?……などなど、気になることについてピエロ大好き人間さんから話を聞いてみました。

なぜ、そこまで左手にこだわっているのか

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小3のときに紙粘土でつくった左手。すでに才能が窺える
――左手の複製を行うようになったきっかけを教えてください。

ピエロ大好き人間:
小さい頃からホラー映画が好きだったので「同じように特殊メイク的な造形物を作ってみたいな」と思い、中学の終わり頃から始めたのがきっかけでした。

――ただ、造形物は左手以外にもいろいろありますよね。なぜ、そこまで左手にこだわったのかが不思議です。

ピエロ大好き人間:
一番身近だから……ですかね。作ったときに一番親近感が湧くし、「興味深いな」と思ったので手にこだわりました。左手だけでなく右手など、手全般にこだわっています。

――2024年6月に、「#私はここまで成長しました見た人もやる」というハッシュタグで“小学3年生のときに作った左手”と“大学1年生のときに作った左手”の二つの画像をアップされていたのも拝見しました。
ということは、小3のときにも左手を作っていたんですか?


ピエロ大好き人間:たしか、小3のときは家にたまたま紙粘土があったので、「親にドッキリを仕掛けたい」と思って作りました。

「彼女と下校なう」複製した左手とデートしてバズったことも

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「彼女と下校なう」とラブラブだが、手首から先がない
――本格的に左手の複製を始めたのは中学の終わり頃で、当時15歳ぐらいですよね? 今が21歳なので、6年間も左手の複製を続けてこられているのはすごいと思います。ずっと続けてこられた理由はなんだと思いますか?

ピエロ大好き人間:
なんでだろう? なにかを作るのが昔から好きなんです。別に「誰かに見せたいから作る」というより、本当に自己満足のためにやっています。

――複製を続けているうちに、手に対する愛着は出てきましたか?

ピエロ大好き人間:
最初は形そのものを作れた時点で満足していたのですが、「これは指紋があったほうがいいな」など自分が求めるクオリティのレベルがだんだん上がっていったようには思います。

――自分のなかで課題ができ、それをクリアする……という流れができ上がっていったわけですね。

ピエロ大好き人間:
そうです。最初は「手の形を取りたい」と思って制作し、次は「もっと細かいシワをつけたい」など、自分に求めるレベルがだんだん上がっていきました。



――それで、複製する左手のクオリティが上がっていった。そういえば、高校在学中だった2021年にもXでバズっていらっしゃいますよね?「彼女と下校なう」というポストとともに、駅のベンチで複製した左手と手を握っているデートっぽい写真がアップされています。

あの頃に複製した左手と比べると、複製のクオリティはあきらかに進歩していますね!


ピエロ大好き人間:
はい。昔に複製した手と比べると、自分でも目に見えて成長を感じます。

制作時間は一時間、制作費は3000円

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
この画像に写る左手たちはゆるく開いているが、どうやら成功したようだ
――左手の複製はどのような方法で行っているのか、教えていただいてもいいですか?

ピエロ大好き人間:
はい。僕自身の手でもいいし、女性の手を複製する場合は友人に協力してもらって、まずは左手の型を取ります。
その後、型取りをしたものにシリコンを流します。最後に、シワや毛穴、血管をつけるための塗装をして完成です。

――左手の複製を一個作るために要する制作時間は、どのくらいですか?

ピエロ大好き人間:
昔だと丸一日かかっていたのですが、今は一時間あれば作れるぐらいになりました。

――一時間で作れちゃうんですか! 制作費はどのくらいかかるでしょうか?

ピエロ大好き人間:
型を一度作っちゃえば、一個3000円以内ででき上がります。

――そんなもんなんですか!

ピエロ大好き人間:
一般の方が機材や材料を一から集めて作るとなると10~15万円はかかると思いますが、今の僕の状況ならばもう3000円以内でできちゃいます。

――左手を複製するうえで、特に意識していることはありますか?

ピエロ大好き人間:
型を取るので、「どんなポーズにしようかな」というのは結構考えます。というのも、手の形によってはうまく型取りができないことがあるんですね。ギュッと手を握ってる形だと大丈夫なんですが、ゆるく握ってるものだと型取りが難しくなって失敗しやすいんです。

左手を複製する技術が上がったので未来は明るい

――今年6月に「高精度な左手の複製を安定して行えるようになりました!!」とポストされていましたが、どこら辺に満足したから「高精度な左手の複製が行えるようになった」と満足できたのでしょうか?

ピエロ大好き人間:以前は、型を二分割して手を複製していたんです。まずは、“手の甲側の型”と“手のひら側の型”を作り、その二つをくっつけて完成させていました。ただ、その方法だとどうしても型の境目のところにバリ(加工する際に発生する突起)ができてしまい、その問題点はずっと気になっていました。でも、最近はすべて一つの型で複製する方法にたどり着き、高精度な左手の複製が安定して行えるようになったんです。

――この境地までたどり着いた今、どんな感慨がありますか?

ピエロ大好き人間:
まず、「お金になるな」と思いました。
いいものができるということはいっぱい売れることなので、たくさんの予算ができる。軍資金ができるということは、たくさん作れる。「未来は明るいぞ!」と思いました。

 今、複製した手は主にメルカリで販売していて、価格は5万円です。「美大生の手」で検索したら出てきます。

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
現在はSOLD OUT。人気商品だ
――購入する方は、なんでこの左手が欲しいんでしょうかね?

ピエロ大好き人間:
なんでなんですかね(笑)? 僕もよくわかんないですけど……。

――でも、使い道はありますよね。ピエロ大好き人間さんは以前、複製した左手を彼女の手に見立ててカレーを作らせていました。デートっぽく手をつないでみたり、遊び方はいろいろあります。購入した人もそういうことをしているんでしょうか?

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
「彼女がカレー作ってくれてた ばり美味しそう」と幸せいっぱいだが、手首から先がない
ピエロ大好き人間:どうなんですかね? あまり、考えたことがなかったです……。

――Xを見るといろいろな反響があって、なかでも「まだ手をつないでくれている幼い瞬間のわが子の手がほしい」というポストは印象的でした。そのようなオーダーメイドは可能なのでしょうか?

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
指だけを複製することもある
ピエロ大好き人間:
オーダーメイドはやっていません。
ただ、指の複製技術を教える「指ワークショップ」を開講した際、子ども連れのママさんから「この子の手の型を取ってほしい」と言われ、赤ちゃんの手を複製したことは何度かあります。

今度は自分自身を複製したい

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
自分を複製しようとしているピエロ大好き人間さん
――左手を複製する技術は完成の域に近づきましたが、この技術を活かして今後はどのような作品を制作していきたいですか?

ピエロ大好き人間:
今後は、顔の複製とかもしてみたいですね。

――もしかしたら、全身の複製もできそうな感じですか? ピエロ大好き人間さんが自分自身を複製したり。

ピエロ大好き人間:
あ、それは考えてます。自分自身の複製はやろうと思っています。

――ちなみに、ピエロ大好き人間さんのポストを拝見していると、外出先に左手の複製を持って行くことも少なくありません。そのとき、周囲の反応はどうですか? 引かれないですか?

ピエロ大好き人間:
いや、大問題になる可能性があるので、周りの人からあまり見えないところでX用に撮影しています。

貴重な大学4年間を“左手の複製”に全振り!→メルカリでなぜか人気商品に。作者本人に話を聞くと
周りに人がいないかを入念に確認して撮影した
――そりゃそうですよね。周りの人からすると、いきなり左手が出てきたらホラーですもんね(笑)。

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 中学時代から制作活動を始め、およそ6年後には達人の域に到達していた彼の技術。勉強に打ち込んだり、恋愛を楽しんだり、さまざまな青春の形がありますが、“左手の複製”の腕を磨き上げる青春も素敵だなと思いました。

 いつか行われるであろう、“自分自身の複製”も期待していますよ!

<取材・文/寺西ジャジューカ>
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