転売を繰り返す本当の理由とは?

マクドナルドハッピーセットの転売が止まらない“本当の理由”。...の画像はこちら >>
 この夏、マクドナルドで大騒ぎになっていたハッピーセットの転売問題。おまけのポケモングッズが転売目的で即完売になり、食品の大量廃棄が明るみになりました。


 これがきっかけとなり、予定していた「ワンピース」のシリーズが販売中止に。さらには消費者庁が日本マクドナルドに対して販売方法の改善を要望する事態にまで発展したのです。

 そのため、ハッピーセットの今後の動向には大きな注目が集まっていましたが、9月12日からプラレールやサンリオの新シリーズが発売されることに。発売初日には販売制限を行っていたものの、翌日からは通常販売に戻り、アプリや宅配での購入もできる状態に復活したのです。この状態にモヤモヤした人、少なくないのではないでしょうか?

 今後のハッピーセット、いったいどうなっていくのでしょうか? 転売が繰り返されるのか? それとも転売が加熱しないようなおまけになってしまうのか……? 今回はそんなことを考えてみようと思います。まずは先日、アメリカ在住の友人に言われた一言にハッとさせられたのです。

ハッピーセットの転売問題は日本ならでは?

マクドナルドハッピーセットの転売が止まらない“本当の理由”。アメリカ人の一言で考えさせられたのは
9月12日から発売されているシリーズは、玩具の他にDVDやシールなど付く充実した内容になっている
 日本で起こったハッピーセットの転売問題は、アメリカなどの海外でも起こっているのでしょうか? アメリカ在住の経営者友人に聞いてみたところ、返ってきた答えはこうでした。

 ブランド品やレゴなどの玩具の転売は普通にあるけれど、ハッピーセットはあまりないと思うよ。大して稼げる額じゃないよね? 日本、大丈夫なの?

 この答を聞いて、私は愕然としてしましました。うーん、確かに納得。大金をもうける価格ではないのに、転売が横行しているということは、原因の根底にあるのは日本の経済状況や労働環境の悪化なのかも……。

 そもそもハッピーセットの転売は違法ではなく参入障壁がもっとも低い商売になりうるため、少しでもお金を稼ぐために転売をはじめる人がいてもおかしくありません。

 今後しばらく景気後退が指摘されている日本において、ハッピーセットの在り方に明るい未来はあるのでしょうか? ここで私は、日本のハッピーセットの特性や魅力を冷静にとらえてみることにしました。


日本のハッピーセットのおまけは世界一

マクドナルドハッピーセットの転売が止まらない“本当の理由”。アメリカ人の一言で考えさせられたのは
小学館の図鑑NEOシリーズの特別版ミニ図鑑「月 宇宙なんちゃら こてつくん クイズ&ゲームつき」
 私はこれまで海外のマクドナルドに足を運び、さまざまなハッピーセット(海外ではハッピーミールと呼ばれる)を購入してきました。

 その経験の上で断言できるのは、日本のおまけのクオリティーが高すぎるということ。多くの国におけるおまけの多くが人気キャラクターとコラボしたフィギュアやミニ雑貨である一方で、日本では知恵を育むようなミニ図鑑や、発達の観点から設計された知育玩具が開発されているのです。

 実は日本マクドナルドでは、2022年1月以降のハッピーセットのおもちゃを、幼児の発達支援の専門家である沢井佳子先生(日本こども成育協会理事、チャイルド・ラボ所長)が監修するようになりました。

 しかも新シリーズの発表ごとに沢井先生のコメントが発信されていて、それらの内容をじっくり見ていくと、食育を探求する立場として、ひとりの親として、心から感銘を受けるのです。

 さらに、遊び方に合わせて発達ポイントが提示されている点にも、日頃の育児のヒントになるような視点・考え方をたくさん発見することができます。

 例えば8月8日スタート(現在は終了)のハッピーセット「ポケモン」ではリリースでは、「想像力」「図形・空間」「生活習慣・身体動作」といった発達ポイントが解説されていて、沢井先生からのこんなコメントも掲載されていました。

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■「森や海や街角に生きるポケモン」を想像して遊ぼう
「自分のまわりの世界には、まだ見ぬ生きものがたくさん居るに違いない」と信じて、木を見上げたり、海を眺めたりする時間は、子供の想像世界を大きく広げてくれます。個性豊かなポケモンたちの物語も、この世界にいる多様な生きものへの好奇心を引き出してくれるでしょう。ポケモンのおもちゃを、回したり、転がしたり、的に当てたりする動作は、手指の小さな動きではありますが、目や腕や背中も使って調整する「全身の遊び」でもあるのです。手のひらの上のポケモンのおもちゃを動かしながら、ポケモン世界の物語をたくさんお話しして遊びましょう。
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 このように品質の高さに加えて価格がリーズナブルですから、今後も商品によって転売は起こるべくして起こってしまう可能性があります。

これからのマクドナルドに期待することは何なのか?

 それでは今後同じような転売問題でモヤモヤしてしまわないように、私たちがマクドナルドに期待すべきことはどのようなものなのでしょうか?

 もちろん、転売防止やフードロスへの対策について、大企業マクドナルドに期待される責任は大きいでしょう。
しかしながらもっと別の観点で希望を見出せるのであれば、ハッピーセットの存在を素直に歓迎できるはずです。

 今回の転売問題を機に、多くの人にとって知る価値の高いことは、日本におけるハッピーセットのおまけは子どもの成長や発達をプロが考えた商品であるということ。そしてこれらの開発背景やコンセプトが、多くの子どもたちやその家族にしっかり届くことです。

 これらの啓発活動を今後もっと積極的にやるべきであり、まだまだ伸びしろがありそう。

 ハッピーセットの存在価値や意義について、多くの人々に正しく理解され、健やかなファンが増えていくことこそが、私たちがマクドナルドに期待する、明るい未来なのではないでしょうか。さあ、みなさんはどう考えますか?

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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