毒親育ちだと、婚活で苦戦しやすい理由
今年結婚し、愛する旦那さんと幸せいっぱいの彩乃さん(仮名)ですが、じつは結婚の1年前は人生のどん底にいました。29歳になる直前で、3年半付き合って両親に会わせる話まで出ていた恋人の翔太さん(仮名)が二股をかけていたと分かったのです。彩乃さんは毒親育ちです。家事も育児もせず祖母に任せっきりで子どもと関わろうとしなかった母親のもとで育ち、その後の歴代彼氏とも良い関係形成はできませんでした。
婚活支援の現場に携わっていて感じることですが、毒親育ちだと婚活で苦戦しやすい傾向があります。自己肯定感の低さや大切に扱われた経験の少なさから、不誠実な人をうまく見抜けなかったり、人との距離感を掴むのが苦手だったりするのです。
個人的感覚ですがダメンズを渡り歩いたタイプの女性の婚活は、恋愛経験が乏しい女性の婚活より難易度が高いと感じています。これも理由は、とにかく男性を見る目がないためです。
彩乃さんに結婚も視野に入れていた男性から裏切られたどん底から立ち直り、自分の家族を作るまでを取材しました。
「お父さんが体調不良ってことにして、福岡に帰ってきなさい」
彩乃さんは街で彼氏・翔太さん(仮名)が他の女性と親しげにしている場に鉢合わせます。その女性は「翔太の彼女」を名乗りました。彼氏の二股現場を見てすぐ、親友に電話して迎えに来てもらいました。

「お父さんが体調不良ってことにしていいから、福岡に帰ってきなさい」
父親は彩乃さんを温かく迎えてくれました。
「今になって思うと、翔太の家にはクレンジングが置いてあったんです。それまでの彼氏が実家暮らしだったので、一人暮らしの男性の家に行ったのは初めてで。翔太は美容男子だったのでクレンジングぐらい使うのかなと思ってました。でもそのクレンジング、ほとんど減っていなかったんです。多分、彼女が置いているものだったんですね」
二股男に制裁を加えるため、相手の親と話すことに
友人の「一人でいちゃ危ない」という判断は間違っていなかったのでしょう。一人でいると、感情のままに翔太さんに連絡してしまいそうだったといいます。
①「男紹介するよ!」次の男紹介派
②「飲みに行こう!」うさ晴らし派
③「許せない!」制裁加えよう派
彩乃さんは驚くことに、全てのアイディアを実行することに決めます。自分は20代後半の3年半という貴重な時間を奪われたのに、翔太は何も失っていないのですから。「まずは翔太の親に、息子が3年半も浮気していたことを伝えると決めました」。
そして、翔太さんとビデオ通話をする約束を取り付けます。彩乃さんは自分の父親にも同席してもらいました。翔太さんにもそちらの親とも話したいと要望を伝え、ビデオ通話の場で実家に電話をかけてもらいます。翔太さんの親が出たので、スピーカー通話に設定してもらいました。
先方の親と会話して分かったのは、翔太さんには学生時代から交際している親公認の恋人がいるということでした。
「あちらの親から謝罪の言葉はなく、変な女が息子に絡んでいるような印象を持たれたようです」と振り返る彩乃さん。ビデオ通話とともに、3年半にわたる翔太さんとの関係は完全に終了しました。
私の「好きセンサー」は当てにならない
その後、新しい恋愛について相談した30代の友人からは「早く婚活しな! 29歳で動くか30歳で動くかで、出会える男性が全然違うから」と強く説得されたそうです。すぐに、次の出会いのために動こうと気持ちを切り替えました。主要なマッチングアプリであるwith、Pairs、Omiaiの3つをダウンロードし、並行して、友人が紹介してくれた男性ともデートをします。マッチングアプリでは大学名も開示し、年収も隠さず600~800万円台を選択します。
そのころ、彩乃さんは筆者のところへご相談にやってきました。
私は、結婚という明確な目的があるのなら、独身証明書を提出している男性だけが登録する結婚相談所利用も勧めました。彩乃さんは結婚相談所も含め、トータルで20人以上の男性と会ったそうです。

「自分の『好きセンサー』で選ぶのは当てにならないと思っていました。かといって頭でジャッジして選ぶと、誰のことも好きになれないと感じたのです。
菊乃さんの記事やブログにも『女性の方が好きになるスピードが遅い』と書いてあったので、よほど年齢が離れている人じゃない限りは選り好みせず、対応にも差をつけずに会っていました。
もう、最初に付き合ってと言ってくれた人と付き合うつもりで婚活したんです」
彩乃さんは自分より年収が低い男性や、高卒・専門卒の男性とも会っていたそうです。結婚相談所は1人会ってすぐやめてしまいました。というのも、お見合いした時には未来の配偶者となる男性とデートを重ねている最中だったからです。
その男性・亮さん(仮名)とはマッチングアプリのwithで知り合いました。
彩乃さんは相手を選り好みせず、デート当日になってから相手のプロフィールを読むようにしていたので、会う当日に相手が3歳年下のイケメンでなおかつ高学歴で年収も自分と同じぐらいのエンジニアだと知ります。条件が良すぎるため、疑いながらデートに向かったそうです。
待ち合わせ場所に相手がいない! ドタキャンされた?
待ち合わせ場所である、焼き鳥チェーン店「三代目 鳥メロ 新橋銀座口ガード下店」に行って予約名を伝えたところ、その名前の予約はないと言われます。ドタキャンされたと思っていたところで相手から「有楽町日比谷口店の方でした、間違えてました」とメッセージが届きます。移動して、亮さんと会うことができました。亮さんは初対面なのに、親が離婚していることや、母と暮らしているけれど関係がよくないことを彩乃さんに包み隠さず話してきます。緊張しているのか、ずっとおしぼりを握りしめていたのが印象的でした。

会話は盛り上がり、次は彩乃さんが気になっている映画を一緒に観に行く約束をしました。
お店を出る時に、亮さんは3歳年下なのに奢ろうとします。亮さんは大学院にも進学していたため、まだ社会人3年目でした。彩乃さんは社会人歴3年目の相手にご馳走になるわけにはいかないと1000円札を握らせて解散したそうです。
2回目のデートでも、亮さんは映画のチケットを予約してくれました。
「私も払うから、請求してね」と伝えたところ「今期最高の映画を教えてくれてありがとう」とコメント付きでPayPayのリンクが送られてきました。
こういったやりとりでどんどん印象が上がっていきます。毎週会って5回目のデートで告白されて交際がスタートしました。
好きかどうかを無視して婚活した結果、大好きな人と結婚
彩乃さんは恋人同士になって初めてのデートで「私は31歳までに結婚したいけど、結婚願望ある?」と確認します。亮さんの結婚願望を確認して、そこから結婚に向けて進んでいきます。結婚のハードルは親でした。亮さんの母親は、当初結婚に反対でした。亮さんが根気強く話し合いの場を持ち、息子が実家を出て離れていくことを嫌がっていることが分かります。結婚後も定期的に実家に顔を出す約束して、ようやく結婚を認めてもらいます。

「最初に付き合おうと言ってくれた人と付き合うって決めて婚活を始めたけど、好きって言われてどんどん好きになりました。
彼は一定以上の学歴と年収など細かく条件を決めて女性を検索していて、年齢は29歳までに設定していたそうです。29歳のうちに婚活を始めなかったら出会えなかったので、本当によかったと思います」
彩乃さんに取材していて、ものすごく共感した言葉があります。
「自分は人を見る目があるって思っている時点で傲(おご)り。見る目なんてない前提でいたほうがいい」
婚活に苦戦しているという方は、肝に銘じてはどうでしょうか。
好条件だからニコニコする、条件がイマイチだから「会ってやってやろうかな」と上から目線で対応する、こうした品定め感は相手に伝わりやすく、まともな男性ほどこうした女性を選びません。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt