主演を務める映画『もういちどみつめる』(髙田万作さんとのW主演)が公開中の実力派俳優・筒井真理子さん(65歳)。繊細かつ深みある演技で、作品の世界へと誘う筒井真理子さんに話を聞きました。


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 話題を集めたドラマ『愛の、がっこう。』をはじめ、2025年も数々の作品で存在感を示した筒井さん。しかし、映像作品への本格的な進出は30代に入ってから。年齢を重ねるほど役が減るとされる日本の俳優業界の現状に対し、筒井さんは「打ち破りたい。パイオニアになりたい」と口にしました。

まったく違う背景を持つ相手でも「根っこは同じ人間」

「ようやく“社会人としてスタート”した」65歳・ベテラン女優が“年齢で役が減る”業界で打ち破りたいこと
筒井真理子さん①
――筒井さんは大きく外見を変えずとも、役柄によってまったく別人のように見えます。『もういちどみつめる』で演じた、生きづらさを抱える典子さんも、佇まいや表情からこれまでの役とは異なる印象を受けました。役の内面が深く結びつくことで、自然と外見の見え方も変化するのでしょうか。

筒井真理子さん(以下、筒井):メイクさんや衣装さんの力をお借りしながら“見せ方”を形づくっていきますが、私は何より“その人物がどんな人生を歩んできたのか”を掘り下げるのが大好きなんです。いまの姿に至るまで、過去にどんな要素があったのかを徹底的に探る。その過程こそが一番の醍醐味で、人間って本当に面白いなと感じます。そうした探求を積み重ねることで、役ごとに見え方の違いとして表れているのかもしれません。

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筒井真理子さん⑦
――『もういちどみつめる』は対話の大切さが伝わってくる作品です。
筒井さん自身が対話の大切さを感じる瞬間はありますか?

筒井:あります。むしろ対話こそがすべての始まりだと思っています。人は生きてきた環境も価値観も違っていて、ひとりひとり確実に異なる存在です。それぞれに活躍の場があり、良いところがある。ただ、それを見つけるには対話を続けるしかないと思います。一方で、まったく違う背景を持つ相手でも「根っこは同じ人間なんだ」と感じられるのも、やっぱり言葉を交わす瞬間なんじゃないかと。

年齢や性別の壁を「打ち破る開拓者に!」

――筒井さんは、演劇を始めたのは学生時代ですが、映像作品への本格的な進出は30代に入ってからです。日本では30代での進出というと。

筒井:遅いですよね。特に私の時代なんて10代しかデビューできないと言われていましたから。

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筒井真理子さん②
――特に映像作品では、内容的にも年齢とともに役が減っていったり狭まっていくと耳にします。

筒井:そうですね。私はそこを打ち破りたいと思うんです。
パイオニアになりたい。私たちが子どもだったころは、40歳くらいといえば、ずいぶん年上というイメージでしたが、今はまた意識が違いますよね。女優さんでも40代でブレイクされる方もだいぶ増えてきましたね。俳優さんでは、酒向芳さんも60代で大人気ですし。学び直しや挑戦が何歳からでも始められる時代だと感じています。

私なんて特にのんびり屋なので、今になって学ぶことが多く、ようやく“社会人としてスタートした”くらいの感覚ですね(笑)。あと、これまで当然のように男性俳優だけが演じてきた役にも挑戦してみたいんです。

――というと。

筒井:無頼派の刑事や、ドラマ『エルピス』で岡部たかしさんが演じられていたような役も演じてみたいですね。ああいった役も、男性じゃなくても面白いですよね。

――たしかに、そうですね。

筒井:「男性のイメージだったけれど、筒井さんどうぞ」って言ってもらえる時代になってほしい。
その流れをつくる開拓者になっていきたいんです。

実年齢ではなく“今のエネルギー”で評価を

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――そういえば、年齢を重ねてのブレイクといえば、筒井さんは、今年大ブレイクのほいけんたさんが大好きだとか。

筒井:そうなんです!大好きです、『千鳥の鬼レンチャン』で見せる「カラダぐぅ♪」。あの堂々とした姑息さ、ある意味“発明”だと思います。ほいさんも60歳ですよね。あの方、芸には厳しいんですって、ああ見えて。ああ見えてって(笑)。それでね、お客さんにも厳しいそうで、そこもたまらなく好きなんです(笑)。疲れた時に見ると、元気をもらえるんです。

今は年齢という概念自体が昔とは違っていて、役も“実年齢”ではなく“生物年齢”で選ぶ時もあって欲しい。ハリウッドのオーディションでは自分の思うカメラ年齢《Age range》を書いて提出するそうです。その人の“今のエネルギー”で選考される環境が浸透すればいいなと思います。

いろんなことを面白がれることが大切

――そうですね。
最後に、これを読んでいる人生の後輩たちに、ひと言メッセージをお願いします。

筒井:自分にも世界にも、素直で正直であってほしい。本当のことを積み重ねていくことが、内面も社会性もいちばん健やかに育っていく唯一の道だと、この年で確信しています。そして、面白いことを探してほしい。というより、いろんなことを面白がれることが大切かもしれません。何でも面白いんですよ。

年齢を重ねるほど、母として、友人として、社会人として、いくつもの“仮面”をかぶる場面は増えてくると思います。それでも、それらすべてが自分で、全て大切です。そのひとつひとつに正直で、楽しみながら生きていけたらいい。軽やかで素敵だと思います。

<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/竹川紗矢香 スタイリスト/伊里瑞稀>

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映画『もういちどみつめる』は全国順次公開中
(C) Aerial Films

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【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。
映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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