「もらえて当たり前」という顔で、義父が待っていたもの……それがバレンタインのチョコだったとしたら、あなたはその期待に応えますか?

 今回は、そんな経験をした女性のエピソードをご紹介しましょう。

バレンタインの日に起きた、違和感の始まり

バレンタインに“おかき”を贈っただけなのに…義父が不機嫌にな...の画像はこちら >>
 酒井瑞穂さん(仮名・31歳)は、ある日用事があって義実家を訪ねました。手土産として選んだのは、年配の方にも食べやすいおかき。
ところが、その心遣いはまったく届かなかったといいます。

「その日は義父がおかきには目もくれず、妙にソワソワしていて。ずっと落ち着きのない感じで話していたのですが、私が『そろそろ失礼して……』と帰ろうとすると、急にムッとして自室に引っ込んでしまったんですよ」

 まるで期待を裏切られた子どものような態度で、そのあまりに露骨な変化に、瑞穂さんは呆然とします。会話を振り返り「自分が何か失礼なことを言ってしまったんだろうか」と必死に考えていると、義母が困ったような表情で打ち明けてきたそう。

「ごめんなさい。あの人、今日は絶対に瑞穂さんからバレンタインのチョコもらえるに違いないって張り切っていたものだから……」

 思いもよらない理由に、瑞穂さんは愕然としてしまいました。

「そんなに欲しいなら……」大人の対応を選んだ結果

「え、なんで私がそんなことをしないといけないの? と全く腑に落ちませんでしたが、そんなに欲しいというのなら仕方がないと思い、数日後にそれなりにお値段のするチョコを購入し届けに行きましたが、まだ機嫌が悪くて」

 自分の中で消化しきれない違和感を抱えながらも、大人としての対応を選んだ瑞穂さん。しかし、それでも話は終わりませんでした。

 義父の「もっと欲しい」という欲求は、常識の範囲を超えてエスカレートしていきます。

息子への嫉妬? 義父の要求は

「あの人、息子が瑞穂さんからもらった手作りチョコケーキが羨ましかったみたいなの。悪いけどあれ、また作ってあげてくれないかしら? お金ならちゃんと払うから」

バレンタインに“おかき”を贈っただけなのに…義父が不機嫌になった「ありえない理由」にドン引き
プレゼント
 自分の息子に向けられた“手作り”という好意にまで張り合おうとする義父。その姿は父親というより、まるで承認欲求をこじらせた1人の男性のようで……。

「正直、気持ち悪いと思ってしまいました。
自分の子どもぐらいの歳の女に手作りのチョコケーキをもらってチヤホヤされたいって何? だったら私が自主的にプレゼントをしたくなるような振る舞いをしろよと思いましたし、自分の思い通りにチョコがもらえなかったからというだけの理由で不機嫌になって負の空気を出しまくる人に、絶対チョコケーキなんか作りたくないと思いました」

家族総出で“機嫌取り”をする義実家の空気

 当然の感情でしたが、義母はひたすら下手に出て、夫までが「お願いします! 作ってあげる振りだけしてくれればいいから」と懇願してきたといいます。家庭内の空気を壊さないため、瑞穂さんは自分の気持ちを押し殺し、仕方なく“手作り風”のチョコケーキを購入し、自分が作ったと嘘をついて義父に渡しました。

「義父は『おっ、息子のケーキより豪華なんじゃないのか? 来年も頼むよ』とご機嫌でしたが、私はこの件で義父の人間の小ささというか、変なプライドの高さというか……見たくないものを見せられてしまったような気持ちになり、来年もまたこの小芝居を続けないといけないのかと思うと、憂鬱な気持ちになってしまいました」

家族っていったい何なんだろう?

 善意を強要し、期待通りにならなければ拗ね、周囲に不機嫌を振りまく。そしてそれを家族全員でなだめ、取り繕う……。瑞穂さんが感じたのは、義父個人への嫌悪だけではなく、そんな歪んだ関係性が“当たり前”として成立している義実家への、言いようのない不安でした。

「義母のことは本当に優しくて大好きなのですが、義父のことになると途端に頼りにならなくなってしまうんですよね。夫も『父さんに何を言っても聞かないし、表面だけ適当に合わせておけばいいから』ってまるで諦めている様子で……家族っていったい何なんだろう? とつい考えてしまいました」とため息をつく瑞穂さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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