4月27日から配信開始された、一世を風靡した占術家・細木数子の半生をモデルにしたNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』。日本における週間視聴ランキング(4月27日~5月3日)で1位を獲得するなど、話題を呼んでいる。


「誰かわからなかった…」57歳女優が“老けメイク”で激変。N...の画像はこちら >>
 細木数子の幼少期は渡瀬結美(10)が担当したが、17歳から60代までを戸田恵梨香(37)が演じ切っており、戸田の演技力が本作の人気を後押ししたことは言うまでもない。とはいえ、戸田をはじめ、本作で存在感を示した役者は多い。中でも、数子の母親・みねを演じた富田靖子(57)はすさまじかった。富田の演技について語りたい。

自然なみすぼらしさと負のオーラ

 そもそも、本作のみねは数子に「母のようにはなりたくない」と思わせ、数子に満たされることのない欲望を持たせるキッカケを与える存在でなければならない。そのためにも、みねをどれだけみすぼらしく描けるかが重要になる。そして、富田はみねをその通り、いや、それ以上に演じていた。

 みねは戦後という絶望的な状況で、しかも女手一つで4人の子どもを育てていかなければいけない。しかし、何か秀でた能力があるわけではない。そのため、何とかお金を稼ごうとするも、騙されたりして上手くいかない。その姿は“子ども想いの不器用な母親”と思わせるが、そんなハートウォーミングな設定をかき消すほどの負のオーラを、富田は表情や言動から放っている。

 もう少し“かーちゃん”のような快活さがあれば、数子もみねを尊敬し、あそこまで欲を追求する人生を送ることはなかったかもしれない。数子が反面教師にしたくなるような、自然な情けなさを富田が表現していたことは、物語に大きな説得力を与えていた。


「富田靖子だ」と気づけないほどのヘアメイク

 みねをとことんみすぼらしく描けた要因として、メイクの影響にも触れないわけにはいかない。おそらく、富田という役者をよく知っている人であっても、本作を初めて見た際、みねを見て「富田靖子だ」と気づいた人はそんなにいないのではないか。それほどまでに“老けメイク”がすごかった。

 浅黒い肌、さらには薄くなった髪の毛。過剰に老けさせると“コントっぽさ”が出て、一気に安っぽくなってしまう。ただ、そうはならず、自然なバランスで悲壮感を与える老け感を表現していた。

 派手な演出や壮大なロケーションはNetflix作品の代名詞になっており、視聴しながら「さすがネトフリ、お金かかってるな~」と思う瞬間は珍しくない。ただ、本作ではメイクにおいても驚かされた。派手さが印象的なNetflix作品は多いが、『地獄に堕ちるわよ』は細かいところにも注目したくなる内容だ。

みねとは違った悲壮感が宿る役

 メイクのすごさに触れたが、やはり富田がはまり役だったことは言わずもがなだ。富田は長く活躍している役者ではあるが、ここ数年は特に輝きを放っているように思う。『燕は戻ってこない』(2024年、NHK総合)では、大金を得ることと引き換えに代理出産を決意する主人公・リキ(石橋静河)の叔母・佳子を演じていた。

 佳子は脇役で、ストーリーに大きく関わるわけではなかった。それでも、佳子が登場するシーンはインパクトがすごい。
リキが全然貯金がないものの、閉鎖的な地元を抜け出して東京に行きたいと話した際、佳子が「話にならん、金なきゃ」と返すシーンは印象的だ。諭すような言い方、笑ってはいるがどこか憐れむような視線。背筋がゾワッとする。そして、自由になるための手段として「結婚」を勧めた姿には、みねとは違った悲壮感が宿っていた。

笑顔と憐れみ、目元に感情を集約させた演技

 みね同様、富田が演じる役から鋭利でジメジメとしたオーラが放たれている要因として、目元での表現力に長けていることが挙げられる。笑っているけど憐れんでいる。懸命に生きているけど精気はなく諦めている。そんなさまざまな感情を目元にギュッと集約させているからこそ、富田の目を見ていると、こちらもいろいろな感情を刺激され、「いやーな感じ」にもさせられるのだろう。

 とはいえ、陰のある中高年女性ばかりを演じているわけではない。ドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(2024年、東海テレビ・フジテレビ系)では、男性アイドルに“いい歳こいて”ハマっている主婦・美香を、映画『風のマジム』(2025年)では主人公・まじむ(伊藤沙莉)と一緒に暮らす元気な母親・サヨ子を演じており、役柄の幅はかなり広い。

 どんよりとした空気感をまとった人物だけではなく、快活で親しみやすい役柄まで自然に演じ分けられるのも富田靖子の魅力だ。『地獄に堕ちるわよ』で見せた富田の演技は、改めて“代わりのいない俳優”だと感じさせるものだった。


<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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