歌舞伎俳優の尾上松也さん(41歳)が、横溝正史の不朽の名作ミステリーを清水崇監督が現代に再構築した映画『八つ墓村』に主演。幾多の俳優が演じた探偵・金田一耕助役を、これまでにない魅力で好演しています。


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 松也さんは歌舞伎のほか、2027年上演の新作ミュージカル『RRR』では、主人公ビーム役として城田優さんとW主演と演出を務めるなど、演出家としても活躍中です。その原動力はどこにあるのか。話を聞きました。

「驚きとうれしさと動揺」新たな金田一耕助役への挑戦

41歳俳優が名探偵・金田一耕助役に抜擢。「自分に務まるのか」不安を抱えながら挑んだ大役
©2026「八つ墓村」製作委員会 ©Yokomizo Seishi/KADOKAWA
――映画『八つ墓村』は有名な題材であり、しかも主人公の金田一耕助役です。出演が決まった時は、いかがでしたか?

尾上松也(以下、松也):金田一耕助役ということで、最初はとにかく驚きました。自分が金田一耕助役を映画で演じさせていただくことになるとは思ってもいませんでしたので、驚きとうれしさと、動揺と(笑)。同時にこれだけの作品で、これだけ有名なキャラクターなので、自分に務まるかどうかという不安もありました。

――清水崇監督は、金田一耕助役にはどのようなリクエストを?

松也:細かいリクエストはなかったのですが、最初にお話した時に、とにかくこれまでの金田一耕助には囚われずに、新しい金田一耕助を作りたいとおっしゃっていました。ですので、長い髪をかき上げたりする演出などは一切なしでいくということを最初から話されていました。

――確かにビジュアル的にもこれまでの金田一耕助とはちょっと違いますよね。

松也:ズボンスタイル、シャツでコートの洋装でしたので、そこからどういう人物なのかを探っていく感じでした。

――完成した令和版『八つ墓村』、ご覧になっていかがでしたか?

松也:以前に『八つ墓村』を観たことがある方でも新鮮に楽しめますし、観たことがない方でも本当にあっという間に終わってしまうほどに完成された作品だと思いました。ぜひ映画館で観ていただいて、『八つ墓村』の狂気、そしてミステリーの世界に浸っていただいて、横溝正史さんの持っている物語性、現代にも通じる何か裏テーマのようなものを感じて楽しんでいただけるとありがたいなと思います。


映画『RRR』に即答で「やります!」

――今年は歌舞伎、映画『八つ墓村』のほか、実写版『モアナと伝説の海』ではマウイ役で声優を、来年は新作ミュージカル『RRR』と多くの作品に出演されていますが、多忙の中での仕事のモットーは何ですか?

松也:とにかく楽しむことに尽きると思います。どんな作品でもどんなジャンルでも、自分が楽しいと思えないものは、観てくださる方が楽しいと感じることはないと思いますので、自分が楽しむことは作品に参加する際には必要不可欠な要素です。

――今回の『八つ墓村』で言うと、ポイントはどこでしたか?

松也:『八つ墓村』という作品に携われることと、自分が金田一耕助役を演じられるというだけで、わくわくはしましたね。もちろん不安やプレッシャーもありましたけど、挑戦することこそ楽しいですし、清水崇監督がどのように演出をされるのか、想像ができないことへのわくわく感もありましたね。

――新作ミュージカル『RRR』は主人公のビーム役ということで、どこに惹かれましたか?

松也:実は初めて映画を観た時から、歌舞伎みたいだなと思っていたんです。特にインド映画というか、S・S・ラージャマウリ監督の演出方法が歌舞伎の荒事みたいで、とても面白いなと。どんなシーンでも、とんでもなく大袈裟にやるじゃないですか。これを舞台で表現したら楽しいだろうなと、観た時から想像をめぐらせていましたので、お話をいただいた時は、本当にうれしかったですね。即答で「やります!」という感じでした。

――あのナートゥダンスを踊れることへのわくわく感も?

松也:いや、そこまで深く考えてはいなかったのですが(笑)。やるってことは踊るってことを、後から考えて気づくみたいな。『RRR』のあの役を演じられることだけで何も考えていなかったので、あとから大変な事だなと思った次第です(笑)。

――ナートゥダンスは、みなさん期待すると思いますが、それに応えていくことについては、どう受け止めていますか?

松也:僕は歌舞伎『刀剣乱舞』(主人公・三日月宗近役)もさせていただいていますが、今回の『八つ墓村』も同じく、そもそもの作品、キャラクターにファンの方が多くいる題材に挑戦する時は、怖さもあります。
例えば僕自身も『スター・ウォーズ』が好きですので、新作が公開されるとなったら楽しみと同時に「今回は何をやってくれるのだろう?」というファンのマインドもあるんです。

演じるだけでなく、自ら作品を作ることに感じる喜び

41歳俳優が名探偵・金田一耕助役に抜擢。「自分に務まるのか」不安を抱えながら挑んだ大役
尾上松也さん
――先ほど仕事のモットーは「楽しむこと」を言われていましたが、どういう瞬間に楽しさを感じますか?

松也:自分がゼロから制作をするようになってからは、それがお客さまに受け入れられている瞬間が、役者をやっているだけでは感じられない幸福感や充実感がある気がしています。その分逃げ道がないので、すべて自分の責任になりますが、演出と出演も兼ねていたりすると、背負っているものが多い分だけ喜びは大きいですよね。

――そもそも制作までやるきっかけは何だったのでしょうか?

松也:たまたまなのですが、自分の好きな方々と何かやりたいと思った時に、だったら立ち上げから自分の想いも含めて、作りたいものを早い段階から共有できていたほうが形になりやすいのではないかと思いました。たとえば誰かに脚本を託したとしても、意見を言うこともあるわけですので、自分で全部作りに行ったほうが早いかなと。そのこと自体も楽しいと感じるポイントですかね。

――最初は歌舞伎だったわけですよね。

松也:最初はそうですね。それから2019年に始めた、城田優くんと山崎育三郎くんと組んでいるプロジェクトのIMY(アイマイ)もそういうスタイルですね。プロデュースも全部自分たちでやるというスタイルが続いたので、より楽しさと興味がわいたというのはあります。

――最後に、どういう40代を送りたいですか?

松也:あまり感覚的には変わっていないので、今までと比べて何か特別なことをしたいとは思わないですが、必然的に自分がより多くの責任を追い、何かを作ってく機会が増えてきていますので、その機会を楽しみながら、より自分の中で表現できる何か引き出しみたいなものをたくさん増やしたいです。それをできるだけ沢山の方に還元して、できることの限界地の先に挑戦できるようになっていきたいと思っています。


<取材・文/トキタタカシ>

41歳俳優が名探偵・金田一耕助役に抜擢。「自分に務まるのか」不安を抱えながら挑んだ大役
尾上松也さん


41歳俳優が名探偵・金田一耕助役に抜擢。「自分に務まるのか」不安を抱えながら挑んだ大役
尾上松也さん


【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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