(台南中央社)台湾の南西の海域で臨検を拒んだカンボジア船籍の漁船から大麻やヘロインなどの違法薬物718キロ超が見つかった。末端価格は15億台湾元(約73億円)を超えるとみられる。
海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)捜査分署台南偵察隊(偵防分署台南查緝隊)が22日、明らかにした。漁船は外国籍で、船長と3人の船員はいずれも中国籍だったものの、中華民国(台湾)の国旗が掲げられていた。

報道陣の取材に応じた同隊の許哲理副隊長によれば、南シナ海の東沙(プラタス)諸島や南沙(スプラトリー)諸島周辺の海域で船舶が密航者を輸送しているとの情報を手にし、同隊が調査を行っていたところ、外国船籍の漁船が南部・屏東県猫鼻頭の南西約128カイリ(約237キロ)の海域に進入するのを13日に発見した。

同船が中華民国の国旗を掲げながらも、船舶自動識別装置(AIS)を作動させていなかったため、作動させるよう呼びかけようとしたところ、漁船は加速して逃走を図った。甲板に不審な積み荷が多数あったことを目視で確認したことから、停船して臨検を受けるよう複数回にわたって警告したが、漁船はこれを拒否。海巡署の船が近づくと、漁船は蛇行して乗船させないようにする行為を繰り返した。

1時間に及ぶ追跡の末に漁船への乗り込みに成功し、甲板にあった積み荷を調べたところ、薬物反応が出た。同署は漁船を台湾に連行し、台湾台南地方検察署(地検)に捜査を要請した。

これまでの調べで、船長や船員はそれぞれ8万~10万人民元(約170万~210万円)の報酬と引き換えに、カンボジアから薬物を運び出そうとしていた疑いがあることが分かっている。

許氏は、漁船が薬物運搬の母船の役割を担い、特定の地点まで航行し他の船舶に分けて積み替える予定だったとみていると説明。供給源や流通先についてさらなる調査を進めると述べた。

(楊思瑞/編集:田中宏樹)
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