佐藤繊維(寒河江市)のニット (ヨシダナギ撮影、山形県ポータルサイト「いいもの山形」より)

ヨシダナギさんという写真家をご存じだろうか。

約10年前から単身アフリカへ渡航し、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影し、作品を発表している。

鮮やかな色彩感覚と直観的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」などに選出され、講談社出版文化賞写真賞を受賞した。

そのヨシダさんが、山形県のものづくりの現場を撮影した。山形ならではの色彩の世界を表現している。

たとえば上の写真は、山形県寒河江市にある佐藤繊維のニット工場。「極細のモヘア糸」を紡ぐクリエイターたちだ。エネルギーと活気にあふれる独特のポージング、鮮やかな色彩感覚は、まさにヨシダナギさんならではの世界観だろう。

山形県とヨシダナギさんとのコラボは、いったいどうやって実現したのだろうか。Jタウンネット編集部は、山形県商工労働部産業政策課に詳しい話を聞いた。

「かっこいい」職人たちも大喜び

プロの写真家が山形の職人を撮ったらこうなる 「とにかくカッコいい」「戦闘能力高そう」

米沢織 新田(米沢市)の絹織物 (ヨシダナギ撮影、山形県ポータルサイト「いいもの山形」より)

県のモノづくり企業を紹介するPR動画「colors Yamagata Crafts」、その動画監督、写真撮影を担当したのが、ヨシダナギさんだ。作品に登場するのは、冒頭に紹介したニットの佐藤繊維(寒河江市)の他、写真上の米沢織の新田(米沢市)、写真下の鋳物業の菊地保寿堂(山形市)など、モノづくりに携わる人々である。

それぞれの技が彩る「色」が一貫したテーマとなっている。写真の一部が、山形県ポータルサイト内で「いいもの山形×ヨシダナギ」として掲載され、注目を集めている。

Jタウンネットの取材に答えてくれたのは、山形県産業政策課の担当者だ。

――「いいもの山形×ヨシダナギ」の企画はいつごろから? その企画意図は?

「山形ブランドの確立をはかるために、2016年度に策定したブランドコンセプトとブランドマークのイメージを用いた統一的なプロモーションを実施しております。山形県産品の知名度を高め、ものづくり県としての山形県のイメージを向上させることで、県内外の方々から山形県産品に対して興味・関心を持っていただき、山形県産品の購入に結びつけることを目的に、取組を展開してまいりました。
プロモーションの一環として、県産品の魅力を消費者に伝えるため、浸透度の高い効果的な情報発信として、ものづくりPR動画を制作しておりますが、その一つがヨシダナギさんの『colors Yamagata Crafts』(2018年度)です」

――ヨシダさんを起用した理由は?

「ヨシダナギさんは、雑誌『Pen』においては、アフリカ特集、アマゾン特集が組まれるなど、華やかな色彩が評価される新進気鋭の写真家であり、テレビ、雑誌等への出演は多数であること、SNSでのフォロワー数は、14万人超であること等から、山形県の魅力を伝えるものづくりPR動画の監督を担当していただくことになりました。
ヨシダナギさんを監督に起用することで、本県のものづくりPR動画が国内外を問わずに、多くの方から見ていただけると考えたものです」

プロの写真家が山形の職人を撮ったらこうなる 「とにかくカッコいい」「戦闘能力高そう」

菊地保寿堂(山形市)の鋳物 (ヨシダナギ撮影、山形県ポータルサイト「いいもの山形」より)

――実際の取材・撮影にはどんな苦労があったのか?

「アマゾンの少数民族を被写体としてきたヨシダナギさんが、初めて日本人を撮影するにあたり、出演者(山形の職人)への撮影意図の伝え方や気持ちの乗せ方に工夫しました。
できあがった映像では、ヨシダナギさん独特のポージングや、出演者がまばたきをせずに常に目線をカメラに据えることで、ヨシダナギさんがいままで撮影してきたスチール作品を彷彿させる世界観を表しています。


また、ヨシダナギさんは色彩に特徴があり、色彩の豊かさを表現するため、場所や時間帯、光の入り方を考え、羽黒山や山寺を撮影場所として選定、早朝に撮影するなどし、被写体の質感や色をライティングなしで表現しています」

――被写体になられた方々の感想はいかが?

「『今までにないかっこいい撮り方』と喜んでいただきました」

――「いいもの山形×ヨシダナギ」に関するツイートが拡散中ですが、その反応は? 

「山形県産品ポータルサイト『いいもの山形』のアクセス数が通常の何十倍にもなっています」

ツイッターには、こんな声が寄せられている。

「皆さん何だか戦闘能力がえらく高そう」
「それぞれの仕事にちなんだ特殊能力で戦うアベンジャーズ感があってかっこいいね!」
「構図がとにかくカッコいい こういう役者でもない人を味あるキャラクターに仕立てるセンス大好き」
「市井の人びとをかっこよく撮ることができる写真家はプロフェッショナルです」

ヨシダナギさんが監督した山形県のPR動画は、YouTubeでも閲覧できる。