「たぬき」という動物に、どんなイメージを持っているだろうか。
のんびり、おっとり、マイペース。
昔話や、スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』など創作物の中のたぬきたち、あるいは、信楽焼のたぬきの置物などデフォルメされたタヌキ像に触れてきた我々にとって、彼らとはコミカルでユーモラス、そして親しみ深い存在だ。
だからだろうか。2025年9月、X上でとある〝集団〟に、大きな関心が寄せられている。
日本たぬき学会、総会でござい。
9月6日、Xユーザーのいしみね(@rock8393)さんがそう呟きながら披露したのは「日本たぬき学会 様 御席」と書かれた看板。
このポストには、5万2000件を超える「いいね」(9月9日時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「めっちゃ気になるなぁ」
「なにやら年に一度タヌキ鍋を食べてそうな感がありますね」
「なぜ緑のたぬきなのか、議論する必要がある」
「化学の研究をしてそう」
「学会を終えて帰ろうとすると周りには誰もおらず、辺り一面何も無い原っぱだったそうじゃ」
何千何万というXのポストの中で、「たぬき学会」というワードに強烈に引き付けられてしまった人が続出している。強力な磁力のようなモノが秘められているのだろうか。たぬきのマジカルパワー、あなどりがたし......。
さて、X上には「日本たぬき学会」が何に取り組んでいるのか気になって仕方ない人が溢れ、勝手な想像や憶測も飛び交っているわけだが、その実態は?
Jタウンネット記者は、日本たぬき学会の江戸城代(=東京都支部長)を務める投稿者・いしみねさんに、詳しい話を聞いてみた。
狸を愛し、狸心を大切にする人々が集結
いしみねさんは、日本たぬき学会江戸城代(=東京都支部長)。化け物狸、狩猟鳥獣としての狸、食べ物としての狸を研究しているという。日本たぬき学会とは、たぬき文化の探究と情報の発信を目的とし、「狸を愛し、狸心を大切にする人」が100人が属する組織。いしみねさんにその主な活動内容を尋ねると、次のように話してくれた。
「年に一度の総会の開催、会報の発行、会員の方同士の情報交換等となります」
「また不定期ではありますがそれぞれの会員が登壇し研究発表をする研究会であったり、ただ酒席にてたぬきについて話す支部会などが行われております」
「総会の開催日時は9月6日に行われ、開催場所については毎年日本のどこかで開催されており、今回は神奈川県(湯河原)にて行われました」(いしみねさん)
落語家を呼んで寄席を行うようなこともあるそうだが、今回の総会はゆるい食事会形式。こぢんまりとした中で気張らず、しかし濃厚な会話ができる場になったという。
「はじめに決算報告など真面目なお話をさせていただいた後は、たぬきについてそれぞれが行なっている研究であったり、最近触れたたぬきに関わる創作物についてだったり、出版されたたぬきに関する書籍のお話だったり、いろいろとお話しさせていただき、誠に有意義な時間を過ごさせていただきました」(いしみねさん)
湯河原での総会はなかなか充実していたようだ。
たぬき学会員、増加中!?
また、いしみねさんの投稿をみると、湯河原の街なかで、たぬきの置物鑑賞を楽しんだ様子もうかがえる。
なんといっても湯河原は「たぬきが見つけた温泉」の伝説が伝わる地。町のマスコットキャラクターはたぬきがモチーフの「ゆたぽんファイブ」だし、たぬきにあやかったご当地グルメ「たんたんたぬきの担々やきそば」や、たぬきを祀る「狸福神社」もある。他にもいろいろあるに違いない。
さて、そんな楽しそうな「日本たぬき学会」へのSNSでの反響は、予想以上に大きかった、といしみねさんは語る。
「これを機に入会していただいた方もいるようで会長ともども慄いております。
こうしたことで当学会、またたぬきに関心を持っていただけたらとは思いつつ、あまりにも多くの人の目にとまっておりますので穴でも掘って隠れていたい気持ちもあったり、なかったり」(いしみねさん)
たぬきを愛する人々は、たぬきのようにチャーミングであるらしい。
総会に集まった会員たちの間では、「動画プラットフォームを駆使してたぬきにまつわるお話を発信していけたら」「たぬきの置物や研究ポスターをレイアウトした展示会を開けたら」といった構想も、話題にのぼっていたそうだ。
より活発な発信をたくらむ、日本たぬき学会。人々を魅了するたぬきのマジカルパワーも、より強力に発揮されるはず。
気付けばお隣りのあの人も、SNSのフォロイーも、いつの間にか「日本たぬき学会」会員になっている、なんて日も近いかも......? 筆者自身もいつのまにか入会しているかもしれない。読者の皆さんも、いかが?