電動ノコギリ(チェーンソー)の起源は困難な出産のための手術道具として開発されたという説

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 チェーンソー(電動ノコギリ)は、今や大工や木こりの商売道具、もしくはホラー映画の凶器として使用されているが、いったいいつ、何のために開発されたのだろう?

 驚くことに18世紀後半のスコットランドで、困難な出産を助けるための医療器具として、今のチェーンソーの原型となるものが開発されたというのが最も多く支持されている説だ。

難産を助ける医療器具として開発されたチェーンソー

 DIY店で見かけるチェーンソー(電動ノコギリ)の登場には実はこんな裏話がある。

 18世紀、ふたりのスコットランド人外科医、ジョン・エイトケンとジェームズ・ジェフリーが、難産の解決法として、新たな手段を考案した。

 ひっかかっている赤ん坊を助け出すため、軟骨や骨を切り開いて母体の骨盤領域を広げるのに、ナイフよりも簡単に切断作業が進むチェンソーを開発したのだ。

 想像しただけで血の気が引きそうだが、彼らは実際に、こうした処置が必要な妊婦が耐えなければならない苦痛をなるべく軽減させようと奮闘していた。

 ナイフでは時間がかかってしまって苦痛が長引くが、チェーンにノコギリの「歯」がついた、彼らの改造ナイフを使えば、素早く骨や組織を切り開くことができたのだ。

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その使用法とは?

 その「改造ナイフ」の両端にはハンドルがついており、医師が鋭い歯がついたチェーンを妊婦の骨盤の骨に巻き付け、2つのハンドルを交互に引いていく。すると骨が切れるという仕組みだったという。

 ただこのナイフによる、あくまでも医師が必要と判断した場合のみに行われ、使用できる状況も限られていたと考えられている。

 のちにこの道具には、手で回すクランクが取りつけられた。この新開発のおかげで、難産は延々と続く拷問ではなく、ただの苦しみになったと言われた。

 この処置は、恥骨結合切開術と名づけられ、四肢の切断といった場面でも効果的に行えることが外科医によって認識されて、医療分野で使われ続けた。

 帝王切開が主流になるまでは、このチェンソーは外科道具の一部として必需品となり、19世紀の大半、ブームは続いたという。

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20世紀、チェーンソーは医療器具から伐採や大工道具に

 20世紀になると、この原理は伐採などの目的のために使用されるようになった。それぞれ重さ4kgを越えるふたり用のノコギリなども登場した。1950年までには、これはもっと軽いモデルにとってかわられた。

 実はチェーンソーが誰が開発したかは諸説ある。

 今回登場した2人のスコットランド医師により出産補助として開発されたという説が有力だが、1830年代にドイツの整形外科医ベルンハルト・ハイネが開発したという説もある。

 いずれにせよ19世紀のほとんどの間、チェーンソーは有用な手術器具として使用されていたようだ。

 こうした歴史のおかげで、今日のチェーンソーは外科病棟から遠ざけられ、物を切断するのに大いに役に立っている。

2020年03月05日の記事を編集して再掲載してお届けします。

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