
アメリカのネブラスカ州ボイド郡には、人口がたった一人の村がある。
「モノウィ」というこの法人化された村には、現在90歳になるエルシー・アイラーさんという女性がたった一人で住んでいるのだ。
エルシーさんは、村の唯一の居住者なので、村長、会計係、書記、バーの運営、図書館司書の仕事をすべて1人でこなしている。
そんな忙しい中でもこの村にいるのが一番幸せだという彼女の暮らしを見てみよう。
人口1人のアメリカの村
モノウィ村の広さは0.54平方kmですべて陸地。そして人口は1人。2024年で90歳になる、エルシー・アイラ―さんたった一人だ。
1930年代までは120人以上の住人がいたというが、1980年までに18人、1990年には6人、2000年にはエルシーさんと夫のルディさんの2人だけになった。
そして2004年にルディさんが亡くなってからは、エルシーさんがこの村で一人暮らすようになった。
村長で、バーも図書館も経営するスーパーおばあさん
たった一人の住人となったエルシーさんは、村の運営も一人で担うこととなった。たった一人の納税者でもある彼女は、住人であると同時に村長であり、税務係でもあり、総務もすべて担当している。
住人がいる限りインフラの整備は必要で、電気や水道を維持するために、エルシーさんは自ら納めた税金を使い、州からの助成金を確保して、道路のメンテナンスも行っているのだ。
基本的に私はここで幸せです。私は本当にここにいたいのです。でなければとっくにこの村を出ていたでしょう
エルシーさんはこう語っているという。
住人は一人しかいないが、夏の間はそんな村に興味を持った観光客が訪れる。彼らは村の独特の魅力を体験し、エルシーさんの仕事を手伝ったりもするそうだ。
村には「アイラーズ・モノウィ・タバーン」という酒場があって、ビールやホットドッグ、ハンバーガーが楽しめる。
この酒場もエルシーさんが1人で切り盛りしていて、なんと彼女はそのために酒類販売免許を取ったのだとか。
バーテンダーはエルシーさんだし、料理を作るのももちろん彼女だ。
酒場の営業は週に6日。村にはほかに図書館があって、エルシーさんはここの司書も務めている
図書館は亡くなった夫のルディさんを偲んで作られたものだという。
村を訪れる人々は酒場で喉を潤し、お腹を満たし、図書館で心を満たして帰るのだ。
村に住んでいるのはエルシーさん一人だが、彼女の親類が生活や仕事の手助けをしているんだそう。
彼女の酒場の一角には、エルシーさんのこれまでの人生が凝縮された一角があって、まるで小さな博物館のようになっている。
日本でも超高齢化に伴い、限界集落や廃村も増え続けている。
山がちな我が国では辿り着くのすら難儀な場所も多く、こんな風に観光客でにぎわう村づくりは難しいかもしれない。
酒場の営業時間は午前9時から午後9時まで。月曜日が定休日だそうだ。ネブラスカ州を訪れる機会があったら、ぜひ立ち寄ってみたはいかがだろうか。