
オリオン座の一角を占める死にゆく恒星「ベテルギウス」には、実は相棒がいるのかもしれない。
地球から見えるもっとも明るい星の一つであるベテルギウスは、冬の夜空を飾ってくれるだけでなく、何かと人騒がせな星だ。
だが結局爆発せず、また明るさが戻った。ベテルギウスはもともと不可解な明るさの周期があることで知られ、変光星に分類されている。
これまでこの星の明るさの揺らぎの原因は謎に包まれていたが新たなる研究によると、ベテルギウスは伴星を伴っており、それが原因で明るさが変化して見える可能性があるという。
なぜベテルギウスの明るさは変化するのか?
多くの場合、星の明るさが周期的に変化するのは、星が膨張と収縮を繰り返すためだ。
高温の核の周りの気体は、加熱されて表面まで上昇し、それによって星全体が膨張する。
ところが、そうしたガスはやがて冷えて、今度は内側へと戻り、星は縮んでいく。こうしたサイクルが明るさに揺らぎをもたらすのだ。
恒星で、赤色超巨星のベテルギウスの場合、このような気体の循環によって約400日周期で明るさが変化する。
ところがこの星にはもう1つの長い周期がある。2170日周期(6年)でも明るさが変化しているのだ。
このもう1つの長い周期を作り出す原因は、今のところ謎に包まれている。
仮説としては、核と表面の自転スピードのズレが背景にあるといった説や、乱れた磁場によって作られる黒点が原因であるといった説がある。
最近では、ベテルギウスはボコボコ沸騰しているという説も登場した。
ベテルギウスには伴星があり、それが明るさを変化させていた
今回、ハンガリーのHUN-REN天文学・地球科学研究センターをはじめとする国際研究チームは、これらの仮説を検証し、もっともありそうな可能性を絞り込んでいった。
その結果、最後に残されたのが、ベテルギウスには相棒がおり、それが周囲の雲を散らすことで明るさが変化するというものだ。
研究チームは、この相棒のことを「ベテルバディ」と呼んでいる。”ベテルギウスの相棒”という意味だ。
ベテルギウスは塵やガスの雲によっておおわれていると考えられているが、この雲を時折ベテルバディが突き抜けていくのだ。
そのコースがちょうど地球がある側だと、そこの雲が散らされるので、地球からはベテルギウスが明るくなったように見える。
今回の研究によるなら、これが長い二次サイクルの原因だと考えられる。
ベテルギウスの伴星「ベテルバディ」は太陽の質量の約2倍
ベテルバディは惑星よりもずっと大きく、研究チームの計算によれば、どうやら太陽の最大2倍の質量がある星であるようだ。
ただし、大きさについては最終的な結論ではなく、中性子星(直径20kmほどの範囲に太陽並みの質量をもつ星)である可能性もある。
この場合はX線によってその存在がわかるはずだが、今のところ見つかっていない。
ベテルギウスに伴星があるという説は、今回初めて提唱されたが、統計的にはそれほど驚くべきことではないという。
というのも、宇宙に存在する星の多くは、1、2個の相棒を連れているものだからだ。
いずれにせよ、仮説はあくまで仮説だ。
その正しさを証明するには、実際に伴星を観測する必要がある。それは現在の技術では難しいかもしないが、それでも研究チームはチャレンジしようとしている。最初の観測チャンスは、今年12月に訪れるとのことだ。
この研究の未査読版は現在『arXiv』(2024年8月17日投稿)で閲覧できる。
※(2024/09/19)本文を一部訂正しました。