
AI技術により、たった半年の間に世界文化遺産「ナスカの地上絵」が新たに303点発見された。
どこか宇宙人を思わせる人型、切断された頭部、ナイフのようなものを手にしたシャチなど、新たに発見された地上絵はどれもこれもユニークなものばかりだ。
古代ナスカ文明の遺産とされるナスカの地上絵は、大きすぎて地上からはなかなか確認できないことが、研究を難しくしている。
そこで山形大学ナスカ研究所とIBM研究のチームは、AIモデルを使って膨大な量の航空写真の中に地上絵が隠されていないか探させた。
その結果、たった半年で既知の地上絵が倍増するほど効率的に捜索を行えるようになったという。
AIを利用した巨大なナスカ地上絵を探すプロジェクト
世界文化遺産「ナスカの地上絵」は、ペルーのナスカ川とインヘニオ川に挟まれた砂漠に描かれた古代の地上絵群だ。
それらは紀元前200年から紀元500年に描かれたもので、古代ナスカ文明の人々は、砂漠の表面の赤みを帯びた部分を取り除き、色の明るい部分を露出させることでそれらを描いたと考えられている。
その特徴の1つとして、地上からではわからないほどの絵の巨大さが挙げられる。そのために新たな地上絵の捜索は、人工衛星や飛行機などで撮影した航空写真が利用されていた。
ここで1つ問題になるのが、ナスカの地上絵が400km2以上にわたる広大な範囲に描かれていることだ。
撮影された航空写真は膨大な量で、それらを人力で1枚1枚精査し、現地調査を行うのは、時間的にも労力的にも現実的ではない。
そこで、山形大学ナスカ研究所とIBM研究所の共同研究プロジェクトが発足し、AIによる地上絵探しが始まった。
これは、AIモデルに地上絵の有力候補をリストアップさせ、それらを研究者自身が確認するという方法である。
その結果、ナスカの地上絵が続々と発見されているのは2022年と2023年にお伝えしたとおりだ。
わずか6カ月で303点の新たなナスカ地上絵を発見
こうして絞り込まれた候補を現地調査してみると、2024年には、たった6ヶ月で303点もの新しい地上絵が発見されたという。
新たに発見された地上絵には、どこか宇宙人を思わせる人間、切断された頭部、家畜や動植物、さらにはナイフらしきものを手にしたシャチのような姿も含まれている。
ナスカ絵は2つのパターンに分かれることが判明
AIによる調査でたくさんの地上絵が発見されたことだけでも素晴らしいが、同じくらい素晴らしいのが、地上絵の数が増えたことでより細かい分析が行えるようになったことだ。
そうした分析からは、ナスカの地上絵は比較的小さくて複雑な「面タイプ」とより広範囲をカバーし直線を多用する「線タイプ」のものに分けられることが明らかになっている。
また線タイプ地上絵のほとんど(64%)は鳥やシャチなどの野生動物をモチーフであるのに対し、面タイプ地上絵の大多数(82%)は、人型や家畜がモチーフであることもわかったという。
面タイプと線タイプの使用目的の違い
それぞれモチーフが描かれる場所も違っており、線タイプのものは、直線と台形のネットワークに沿うように分布していることが判明した。
主に共同体の儀礼のために使われたと考えられている。
一方、面タイプの地上絵は、曲がりくねった小道に沿って描かれていることがわかった。
描かれているのは家畜や人型のみで、通行人がそれを目にするよう意図されている可能性があるという
なお今回のAIは、最近の研究で候補として挙げられながらも時間の都合で確認されていないものについても、地上絵だろうと判定しているという。
研究チームは今後数年間でそうした候補の現地調査も行い、さらに250点の地上絵が発見されるだろうと見込んでいる。