
現代の日本では、ほぼ100%が火葬というかたちで弔われているが、地方では、昭和の時代まで土葬文化が残っている地域もあった。
世界的に見ると、火葬と土葬の割合はおよそ半々だとも言われている。
ではアメリカの場合、火葬炉に入れられた遺体はどのように遺灰や遺骨となるのか?その過程をCGシミュレーションした映像が話題となっていた。
アメリカで火葬を選択するとこうなる
アメリカのYouTuber、ザック・D氏が運営しているZack D. Filmsは、登録者数が1,520万人を超える人気チャンネルだ。
そんな彼のチャンネルで、再生回数が2,270万を超えるほど注目されていたのが、「火葬の仕組み」と題した動画である。
この動画の中でザック・D氏は、アメリカの火葬の様子についてわかりやすく説明してくれている。
人が亡くなると、遺体は摂氏980度に達する特別に設計された火葬炉に入れられます。このすさまじい熱により、遺体は2~3時間で骨片と灰になってしまいます
その後磁石を使って、手術用のピンやピアス、インプラントなどの金属を取り除きます
残った骨片は細かい粉末に加工され、遺灰と一緒に骨壺に納められるのです
アメリカにおける火葬では、遺骨はその最終段階で、文字通り粉々になるまで砕かれるのだ。
日本の火葬場事情について
さて、我が国の場合は現在、ほぼ100%が火葬ということになっているが、火葬炉の中がどうなっているのか、考えてみたことがある人は少ないかもしれない。
日本の火葬炉は「台車式」と「ロストル式」の2種類があり、台車式は棺を台車ごと火葬炉内に運び込む方式で、ロストル式は棺だけを格子状になった火葬炉の中に置いて燃やす方式だ。
今のところ台車式の方が一般的だが、都市部ではより燃焼効率の高いロストル式が使われることが多くなっているそうだ。
棺が火葬炉に納められ火がつけられると、遺体の皮膚や筋肉、そして骨の順番で燃焼が進んでいく。
日本には遺骨を近親者が骨壺に入れる「骨上げ」の文化があるため、できるだけ骨のかたちを保つことが重視される。
そのため燃焼時間や炉内の温度は、「火葬技師」によって細かく調整されている。特に「喉仏」がキレイに残るかどうかが大切で、技師の腕の見せ所となる。
つまり、諸外国のようにただ焼けばいいというわけではないところが、日本の火葬の特殊性であり、経験を積んだ火葬技師の職人技が試されるのである。
ちなみに炉内の温度は最低800度以上と決められており、最新式の火葬炉だと1,200度に達するモデルもあるそうだ。
旧式の場合は2~3時間待たなければならないが、最新式だと1時間程度で火葬が完了するという。
最新式の火葬炉は、コンピューターによる温度管理も導入しているため、今後は火葬技師のスキルや経験が求められる場面もなくなるのかもしれない。
インドでも電気式火葬炉が登場し始めた
逆に火葬がデフォの宗教としては、ヒンドゥー教が有名だ。ガンジス川の河畔で、薪を積んで遺体を焼いている光景を、動画や写真などで目にしたことのある人もいるだろう。
もちろん、今も伝統的なやり方での火葬を望む層は多いし、可能であればガンジス川の岸辺で火葬されたいと願う人は後を絶たない。
だがインドのヒンドゥー教徒全てがそうやってガンジス川へ還っていくのかというと、必ずしもそういうわけではない。薪の値段は高騰しているし、僧侶へのお布施なども払わなければならない。地球温暖化や河川の汚染への配慮も必要だ。
現在では、薪を買うお金がない庶民や無縁仏の場合は、自治体などが運営する電気炉での火葬になることも多いという。
裕福な人ほど薪での火葬にこだわる傾向があるが、都市部では近代的な火葬炉を供えた火葬場も建設されているそうだ。
インドの火葬の一部始終を撮影したこんな動画もある。
日本の火葬率は世界一
日本では現在、亡くなった方の99.97%が火葬にされているという。この割合は現在のところ、ぶっちぎりで世界最高なんだそうだ。
イギリス火葬協会の機関誌「Pharos」2021年冬号のデータによると、各国の火葬率は次のようになっている。
- 日本 99.97%
- 香港 91.7%
- 韓国 89.65%
- チェコ 84%
- シンガポール 82.17%
- タイ 80%
- イギリス 78.45%
- カナダ 73.12%
- ドイツ 72%
- アメリカ 56.1%
- フランス 39.01%
- イタリア 30.68%
- ロシア 29.22%
遺体の扱いは、もちろん宗教によっても異なって来る。イスラム教やユダヤ教、キリスト教といったいわゆる「アブラハムの宗教」では、死者が復活するためには身体が必要とされるため、本来は火葬は禁忌とされてきた。
だが近年では宗教観が希薄になったほか、土葬する土地の確保が難しいといった理由から、キリスト教でも火葬を選択する人の割合も増えている。
さらに新型コロナウイルスの影響もあってか、ここ数年で世界的にも火葬率は上がってきているのだとか。
今後は世界の人口の爆発的な増加に伴い、宗教的な制約がない地域では、火葬の割合がますます増えると予想される。
弔いのかたちも、時代とともに変わっていく。日本でもこれまでのように家ごとの墓に入るのではなく、夫婦だけ小さな墓や永代供養の納骨堂、散骨といった選択をする人も増えているようだ。
これからは「自分にその時が来たらどうしてほしいのか」を事前に身内とよく話し合っておくことが、残される者たちへの一番の心遣いになるのかもしれないな。
追記:(2024/10/03)本文を一部訂正しました。