ホウボウの進化した胸ビレは、海底を歩くだけでなく、触覚や味覚も感じ取っていた
Credit: Anik Grearson, MBARI, CC BY-SA

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 ホウボウという魚は、進化させた胸ビレが6本足のようになっており、それを使って器用に海底を歩くことができるが、他にも機能が満載だったことが判明した。

 触覚として海底の砂にうもれた獲物を探し出したり、味覚としても機能する革新的なセンサー内蔵器官だったのだ。

 最新の研究によると、それは意外にも私たち人間の手足の発達にもかかわる遺伝子が関係しているという。

ホウボウの脚(胸ビレ)は触覚と味覚が内蔵されたバイオセンサー

 世界中の熱帯や温帯域に生息する「ホウボウ」は、とてもユニークなカサゴ目の魚だ。なんだか鳥の翼のような大きなヒレがあるかと思えば、カニのような足まである。

 6本足のように見えるが、実はこれ、胸びれの一番下の軟条3対が発達したものだ。まさに適応進化と言えるかもしれない。

その6本足は海底を歩くことはもちろん、なんと触れたものを感じ、しかも味わうことまでできる触覚兼味覚センサーなのだ。

 米国ハーバード大学のニコラス・ベロノ氏らが、この不思議な魚に興味を引かれたきっかけは偶然だった。

 ウッズホール海洋生物学研究所を訪れた際、たまたまホウボウを見かけたのだという。

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 彼らの目を引いたのは、ほかの魚たちがホウボウの後をついてまわっていたことだ。

 どうやら、ホウボウは砂に埋もれたエサを探すのが上手で、それを当てにして魚が集まっているらしかった。

 この出会いをきっかけにホウボウを調べみると、そのカニのような足に進化した胸ビレは、貝のエキスやたった1つのアミノ酸まで検出する高感度センサーであることがわかったのだ。

 その秘密はホウボウの脚をおおう「感覚乳頭」だ。

 それらは触れた感覚を感じる神経細胞(ニューロン)につながっているほか、味覚受容体まで備わっている。

 こうした脚の独特な構造は、ほかの魚にはほとんど見られないもので、ホウボウが独自の進化を複数のレベルで遂げてきたことを示している。

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故きをたずねて新しきを知る、進化は温故知新で進む

ところがそのゲノム解析からは、意外なことが明らかになった。

 ホウボウ自慢の2ウェイセンサー内蔵の脚(胸ビレ)の鍵を握るのは、「tbx3a」という転写因子(遺伝子の発現を調整するタンパク質)だった。

 それは脚の発達だけでなく、感覚乳頭や穴掘り行動にも関わっている。

 ホウボウの革新的な脚は、新しい進化によって獲得された最先端の生体器官に思える。

 ところが、tbx3a自体は非常に古くからあって、私たちの手足の発達にも関連しているものだ。

 つまりホウボウは、ずっと以前から持っていた遺伝的メカニズムを上手に利用することで、触覚としても味覚としても機能する便利な脚を手に入れたのだ。

 これについて研究チームの一員である、スタンフォード大学のデビッド・キングスレイ氏は、次のように述べている。

新しく見える特性はたくさんありますが、大抵の場合、それらは昔からずっと存在していた遺伝子や構成要素で作られています

それが進化の仕組みです。進化は温故知新によって進むのです(デビッド・キングスレイ氏)

 こうした発見は、よく理解されているモデル生物だけでなく、野生生物が見せる複雑な特性とその進化について理解を深める手掛かりであるとのこと。

 研究チームは今後も、ホウボウの進化をうながした遺伝的変化やゲノムの変化についてさらに解明しようと考えているそうだ。

 この発見は『Current Biology』(2024年9月26日付同26日付)に掲載された2本の研究で発表されたものだ。

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