新種のシュモクザメが発見される。ハンマーというよりショベル型
image credit:Mays Family Foundation

新種のシュモクザメが発見される。ハンマーというよりショベル型...の画像はこちら >>

 シュモクザメと言えばまるでハンマー(トンカチ)のような頭部が特徴的で、英語ではハンマーヘッドシャークと呼ばれているが、大西洋の西部で、ハンマーと言うよりはどっちかというとショベル寄りの頭部を持つ、新種のシュモクザメが発見された。

 その新種「スフィルナ・アレニ」は、世界最小のシュモクザメ「ウチワシュモクザメサメ」によく似ており、当初はこのサメと勘違いされていた。

 ところが、詳しく調べてみたところ、背骨の数や頭部の形状が違っており、さらにDNAも独自のものであったことから、新種であることが判明したのだ。

これまでウチワシュモクザメと間違えられていた新種

 北米と南米の沿岸部に生息する「ウチワシュモクザメ(Sphyrna tiburo)」は、サメとしては珍しい雑食性の種だ。

 シュモクザメ最小の種とされるが、オスは85cm、メスなら95cmほどになるため、小魚というわけでは決してない。

 それでも最小種だけあって、ウチワシュモクザメの”ハンマー”はあまり発達していない。

 その頭部はどちらかというと”シャベル”や”スコップ”に似ており、「シャベルヘッド」とも呼ばれることもある

 今回新種と認定された種も、ウチワシュモクザメに似て、ショベル型の頭をもっていることから、当初は間違えられていたそうだ。

[画像を見る]

マイクロソフト社共同創業者にちなみスフィルナ・アレニと命名

 この新種のシュモクザメは、スフィルナ・アレニ(Sphyrna alleni)と名付けられた。

 この名前は、マイクロソフト社の共同創設者である故ポール・アレン氏にちなんで命名された。

 彼が設立した「グローバル・フィンプリント財団」は、多くのサメやエイの保護活動や、研究を支援しており、今回の発見も基金の援助を受けて成し遂げられた。

[画像を見る]

DNAや体の特徴から新種であることが判明

 当初、ウチワシュモクザメと勘違いされていたスフィルナ・アレニが新種であることを明らかにしたのは、米国フロリダ国際大学とモート海洋研究所の研究チームだ。

 フロリダ国際大学のシンディ・ゴンザレス氏は、2015年にパナマでサメを研究していた際に、ウチワシュモクザメにはじつは2種類いるのではないかと疑念を抱くようになったという。

 一方、モート海洋研究所のデミアン・チャップマン氏らは、2016~2019年にかけてベリーズの漁師が捕獲したサメのDNAを分析。その結果、ゴンザレス氏と同様のことに気がついた。

 だがDNAだけで新種と認定するには不十分だ。そこでゴンザレス氏とチャップマン氏は協力して、この2種の体を調べて、別種であることを示す違いがあるかどうか確認することにしたのだ。

 折悪く、当時は新型コロナが世界中で猛威を振るっていたという。

だが両氏はそれで諦めることなく、ゴンザレス氏が自分のアパートを即席の研究室に改造し、調査を進めていった。

 地元の漁師たちが献身的に協力してくれたことも幸いし、最終的に新種らしきサメとウチワシュモクザメには、背骨(椎骨)の数と頭部のハンマーの形状にそれぞれ違いがあることが判明。

 こうしてスフィルナ・アレニが新種であることが確認されたのだ。

[画像を見る]

絶滅の危機に直面するサメを守るために大切なこと

 IUCNのレッドリストでは、ウチワシュモクザメは「絶滅危惧」に分類されており、おそらくスフィルナ・アレニも同じだろうと考えられている。

 どんなサメでも漁業網にかかってしまうことがあるが、とりわけ小型のサメは混獲されがちだ。またウチワシュモクザメは食材として人気があり、乱獲されている。

 こうした状況からサメを守るためには、きちんと研究を進めることが大切なのだと、ゴンザレス氏はプレスリリースで訴える。

[画像を見る]

 その一方、ラテンアメリカ諸国の地域コミュニティにとって、シュモクザメは文化的にも経済的にも重要な存在だ。

 そのため、保護活動を進めるにあたっては、漁師と協力することが大切になるとのことだ。

 なおウチワシュモクザメは、大西洋側に生息する「Sphyrna tiburo tiburo」と太平洋側に生息する「Sphyrna tiburo vespertina」の2つの亜種に分けられてきた。

 だがゴンザレス氏は、後者もまた別種ではないかと睨んでおり、さらなる調査が必要であると述べている。

 この研究は『Zootaxa』(2024年9月23日付)に掲載された。

編集部おすすめ