
中国・深センにある水族館「小梅沙海洋世界」で、展示されていたジンベエザメが実はロボットだったことが判明し、「メカジンベエザメ」としてX(旧Twitter)でトレンド入りする事態となった。
このジンベエザメは展示の目玉として、鳴り物入りで宣伝されていたもの。
ジンベエザメだと思ったらロボットジンベエザメだった
今回の騒動の舞台となったのは、中国最大級の水族館「小梅沙海洋世界」である。
この水族館は5年にわたる改修工事を経て、2024年9月下旬にプレオープンを迎えていた。
そして10月1日、中国の国慶節の祝日に合わせて正式にリニューアルオープンしたのだが、目玉となっていたジンベエザメの展示を見た来場者から不満が爆発した。
なぜかというとこのジンベエザメ、本物ではなく機械仕掛けのロボットだったのだ!
怒った客から「金返せ!」と抗議の声が響く
この事態に来場客からは、「偽物のサメを見るためにお金を払ったんじゃない!」と、返金を要求する声も上がったらしい。
この水族館の入場料は大人240元(約5,250円)、子供150元(約3,150円)と、決して安いものではない。
本物のジンベエザメに会えると思って来場した客の身になってみれば、確かにこれは許せない事態かもしれない。
さらに国慶節の休みとあって、水族館には多くの客が訪れており、中は大混雑に。動線が機能しなくなった館内で、客たちのいらだちは頂点に達し、午後3時には返金を求める怒号が響いていたという。
本物の展示ができなかったため苦肉の策?
報道を見る限り、水族館を訪れた人たちは本物のジンベエザメがいると思って来場したようだ。なぜこんなことになったのか。
水族館側は次のように説明している。
生きたジンベエザメの取引は禁止されているため、数百万元(数千万円)を費やしてこのロボットを開発したんです。お客様をだます意図など決してありませんでした
だが期待を裏切られた来場者たちの中には、SNSで不満をぶつける人も続出。
- ジンベエザメを見るのを楽しみにして来たのに、ロボットだなんて!
- 名前を聞いたときには期待でいっぱいだったんだ。
でも着いて見たら機械仕掛けのジンベエザメが泳いでいて、全然面白くなかったよ- 動物愛護の観点からとはいえ、偽物を見せるくらいなら展示を止めればいいのに
実は最先端のロボットだった!
実はこのメカジンベエザメは、「中国航天科工集団」傘下の国営企業、「瀋陽航天新光集団有限公司」が開発したものらしい。
最初のモデルは既に2022年、上海にある水族館、海昌海洋公園でお披露目されていたようだ。
全長約5m、重さは約350kg。7つの稼働関節を駆使してジンベエザメの自然な動きを再現している。
そしてさらに今年の8月には、知能を供えたさらに高性能なメカジンベエザメの開発に成功。時速2.4kmで泳ぎ、水深約20mまでの潜水が可能なんだとか。
このロボットには情報収集用のカメラやセンサー、ソナーも搭載され、水質の監視や海底の地形のマッピングなど、海洋調査や環境科学への応用が期待されているそうだ。
中国ではジンベエザメ以外にも、イルカやシャチ、スナメリといった海洋生物ロボットの開発を進めているという。
日本でもバイオミメティクス(生物模倣)を応用した、スクリューを使わずに海の生き物の動きを再現して動く水中ロボットの研究は行われているのだが、今回のメカジンベエザメを見ると感嘆を禁じ得ない。
今回の展示には文句を言う人がいる一方で、体長5mの自立型ロボットが泳ぎ回っていることを知り、「むしろこっちを見たい!」と感心する声も上がっていたようだ。
水槽内の飼育環境を懸念する声も
この水族館に関しては、もう一つ気になる声が来場者から聞こえてきている。それは飼育されている生き物たちの健康状態について懸念するものだ。
- 魚の中には、健康状態が良くないように見えるものがいたんだ
- 水槽にいる魚の中には、身体に白い斑点があるものがいた。
専門的な世話がされていないんじゃないか?- ほとんどの人は気づかないかもしれないけど、熱帯魚を買ったことのある人なら、それが白点病だってことはすぐわかるよ
白点病はアクアリストなら誰でも知っているであろう、寄生虫による病気である。環境の変化が引き金になると言われていて、放置しておくと命にもかかわってくる。
水質や水温、混泳によるストレスなどさまざまな要因が考えられるが、このまま放っておくと水槽内にまん延する事態にもなりかねない。水族館側が迅速に、適切な対応をしてくれることを祈るばかりである。
下は今回の「事件」を報道する香港のニュースチャンネルの動画。
ところで日本国内では、2024年10月時点で、以下の3つの水族館で、本物のジンベエザメを見ることができるようだ。
- 海遊館(大阪府)
- いおワールド かごしま水族館(鹿児島県)
- 美ら海水族館(沖縄県)
石川県の「のとじま水族館」でも2頭飼育されていたのだが、能登半島地震の際に水族館が大きな被害を受け、残念ながら死亡してしまった。水槽での飼育の限界を目の当たりにさせられた出来事だった。
海遊館といおワールドでは、成長したジンベエザメは海へ帰す方針なので、今いるジンベエザメは何代か代替わりしているとのこと。本物を見たい!という人は、足を運んでみてはどうだろうか。
References: This aquarium's star 'whale shark' turns out to be a robot, leaving visitors outraged[https://www.indiatimes.com/trending/wtf/this-aquariums-star-whale-shark-turns-out-to-be-a-robot-leaving-visitors-outraged-643811.html] / 陸水族館為環保巨資造「人造鯨鯊」 遊客花千元看假魚[https://news.tvbs.com.tw/china/2649694]