オランダの浮島の底で、まるでマグマや溶岩流のようなオレンジ色に光る風船のような巨大な物体が発見された。
SF映画やB級映画に登場しそうなそのぷにぷにした形状と色彩は、まさにエイリアンの卵のうを彷彿とさせるが、いったいこれは何なのだ?
エイリアンは地球外生物、つまりは外来種ということになるが、あながち間違いではなさそうだ。
実はこれ、アメリカ原産で、ヨーロッパと日本においては外来生物となる「オオマリコケムシ」の一種なのだ。
オランダの運河でオオマリコケムシ発見!
今回発見されたオオマリコケムシは、オランダ、ユトレヒトのライチェ・ライン地区の運河に浮かぶ浮島の底で見つかった。
まるでマグマかエイリアンの卵嚢(らんのう)のようなこの塊に、研究者たちは困惑を隠せなかったという。
地元の生態学者アン・ナイスさんは、この発見について次のように語っている。
これは浮島の底にぶら下がっていました。集まって一つのコロニーを形成する動物で、オオマリコケムシと呼ばれるものです。アメリカでは「ブロブ」とも呼ばれています
大きな袋は、複数の個体が一つに集まって形成されています。 ある時点でコロニーを形成し、さらに別のコロニーがくっつくこともあります。最終的に、直径が2mになることも。そして(今回発見されたように)何かに付着するんです
ヨーロッパで生息数を増やす外来種
元々の生息地であるアメリカでは珍しいものではないが、ヨーロッパでは外来種であり、ユトレヒトで発見されたのはこれが初めてだという。
だが初めてにしては巨大なカタマリに成長していたため、研究者たちもさぞかしびっくりしたのだろう。
もともとドイツでは1883年に存在が確認されており、1990年代以降、ヨーロッパでも急速にその数を増やしているそうだ。
オランダではオオマリコケムシ以外にも、何種類かのコケムシの生息が確認されている。
この生き物、見た目はインパクトがあり過ぎるが、幸いにして環境に害を与えることはないそうだ。
オオマリコケムシは雌雄同体であり、有性生殖も行うが、1匹しかいなくても「出芽」して個体を増やしていくことができる。
さらに「休芽」という、植物で言えば種のようなものを作って増えることもする。休芽は乾燥にも強いため、あちこち運ばれた先で「芽」を出し、そこで増えて定着するのだ。
日本でもすっかりおなじみに
日本でも1971年に河口湖で初めて発見されて以来、全国で移入が確認されるようになった。当初はUMA扱いされたこともあるらしい。
現在では琵琶湖や霞ケ浦をはじめ、各地で生息が確認されており、時には大発生することも。 そのせいもあって、日本にもともといたコケムシの数が減少しているそうだ。
下の動画は2010年に佐賀城の濠に大発生したときのニュース映像だ。
こちらは2013年の宮城県化女沼で撮影されたもの。既に日本列島各地に定着してしまっているようだ。
日本ではオオマリコケムシは、水質が悪化しかけている場所で多く発生すると言われている。
彼らは水中の微生物を濾過して摂取しているため、微生物が増えると彼らの数も増えるのだ。つまり湖や池、沼の富栄養化の指標として使われている面がある。
今回の発見の舞台となったユトレヒトは、運河とともにある美しい街だ。その運河で巨大なオオマリコケムシが発見されたということは、彼らの餌となる微生物が豊富にいるということなのだろう。
微生物を濾過することで、水質の改善にも一役を買っていると言われるオオマリコケムシだが、日本や欧州にとっては外来生物には違いない。
ユトレヒトでも、彼らの今後の生息状況を見守っていく必要があるだろう。
References: WHAT THE SACK? Creepy ‘glowing’ orange sack of self-cloning hermaphrodite slime hauled from river leaving experts baffled[https://www.thesun.co.uk/tech/31307694/glowing-orange-animal-bag-found-by-ecologists-netherlands/]











