奇跡の聖水としてインドの人々がありがたく飲んでいたのは、エアコンの結露水だった

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 古来より「奇跡」と呼ばれる現象は、世界中でイロイロ報告されている。例えば聖なる像が血の涙を流したとか、花びらや宝石が出現するとか。

 そして今回、そこに新たな奇跡の1ページが加わることに、なりかけた。

 インドにあるヒンドゥー教の寺院にある象の彫像から、聖水が湧き出しているとして、人々は行列を作ってまで飲んでいたのだが……。

象の彫像から「聖水」が滴り落ちている?

 インド北部のウッタルプラデーシュ州にあるヴリンダーヴァン。あのタージマハルのあるアーグラーから、北西に50kmほどの場所にある街である。

 ここにはシュリー・バーンケ・ビハーリー寺院というヒンドゥー教のお寺があるのだが、寺院内の壁にある象の彫像から、聖水が滴るという奇跡が起こっているというのだ。

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 信者の善男善女たちは、「チャラナームリタ(聖なる水)だ!」「奇跡だ!」と寺院を訪れ、大勢で押し寄せ、老いも若きも、象の像からこぼれる水をすくっては飲んだり額にかけたりした。

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 ちなみにこのシュリー・バーンケ・ビハーリー寺院の創建は16世紀頃らしいが、現在の建物ができたのは1862年のことで、それほど歴史的に古い建造物というわけではない。

 もちろん、通路の壁の装飾である象の彫像にも、特別な伝説などはない。なのになぜこのような「奇跡」が起こるのだろうか?

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その正体はエアコンから出た水だった

 信者たちの信仰心に水を差すのは悪い気もするが、実はこの水は聖水などではなかったことが判明した。エアコンの結露で生じた水が、古い配管を伝って象の口から滴っていたのだ。

 寺院の世話人であるディネーシュ・ゴスワミ氏、は次のような声明を発表した。

皆さんが神を信じる気持ちは尊重しますが、これをお知らせしなければなりません。皆さんがチャラナームリタだと信じている水は、実はエアコンから出た水にすぎません。

本物のチャラナームリタには、ホーリーバジルやバラの花びらなどの成分が含まれているのです

 この水が聖水ではないと知った信者たちの中には、失望や怒りを露わにする人たちも現れた。

 だがその一方で、それでも水を求める人たちも後を絶たない。たとえエアコンが原因だとしても、聖なる場所に生じた水は、彼らにとっては聖水なのだ。

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 問題は、この水がとてもじゃないが衛生的なものだとは思えないこと。当局も「雑菌やバクテリアが含まれており、健康に重大な影響を与える恐れがある」として、口に入れないよう呼びかけている。

 さすがにインド国内でも、「科学的な視野が欠けている」「信じやすいにもほどがある」などと、庶民の信仰心を批判する意見も出ているようだ。

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インドの聖水ってこんな感じ

 チャラナームリタとは、もともとは神の足(チャラナ)から湧き出る甘露(アムリタ)のこと。この寺院のご本尊はクリシュナ神なので、信者たちはクリシュナ神の足から滴る聖水だ!と信じているらしい。

 インドでは神像にガンジス川の水やカード(ヨーグルト)、ハチミツ、ギー(バターオイル)などをかけてお参りするのだが、お寺によってはこうした液体を、ありがたいチャラナームリタと称して分け与えてくれたりする。

 下の動画は、ご家庭で簡単に作れるチャラナームリタ(正確にはパンチャームリタ)。牛乳、ヨーグルト、ハチミツ、砂糖、ガンジス川の水にドライフルーツやナッツを混ぜるだけ。

 ガンジス川の水さえなければ普通においしそうである。

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 ところでこの寺院、SNSを駆使して情報発信などを行っている意外とモダーンなお寺みたい。

下のはSNSに掲載されていたクリシュナ神とその恋人ラーダーのイラストだが、これどう見てもAIアートだよね。

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References: Indian Temple Goers Mistake AC Condensation Dripping on Sculpture for Holy Water[https://www.odditycentral.com/news/indian-temple-goers-mistake-ac-condensation-dripping-on-sculpture-for-holy-water.html]

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