NASAの1970年代の火星探査機が誤って火星の生命体を消滅させた可能性を科学者が示唆
image credit:<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Viking_spacecraft.jpg" target="_blank">NASA</a>

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 1970年代に行われたNASAの火星探査ミッション「バイキング計画」では、バイキング1号とバイキング2号が火星への着陸に成功した。だが、これらの探査機がうっかり火星の生命を消滅させてしまった可能性があると、科学者が主張している。

 これらの探査機は、生命の痕跡がないか、地表でいくつかの検査実験を行ったのだが、この過程で乾燥環境に適応した火星微生物を「溺死」させたかもしれないというのだ。

 ドイツ、ベルリン工科大学の天体生物学者ディルク・シュルツェ=マクツ氏によれば、当時行われた検査は火星の生命にとっては致命的なものだったのだという。

火星で行われた生命検出検査は混乱を招くものだった

 1976年、NASAの「バイキング計画」の名の下、火星に2機の火星探査機が送り込まれた。その目的の1つは、火星に生命の痕跡があるかどうか調べることだ。

 だがその結果は科学者らを非常に混乱させるものだった。

 代謝と光合成の痕跡を確認するための「標識元素放出実験」と「熱分解放出実験」では、なんと生命が存在することを示す結果が出たのである。

 ところが「ガス交換実験」と呼ばれる検査では、火星の土に生命の痕跡はないという結果だった。

 さらに有機化合物の有無を調べるガスクロマトグラフ質量分析では、生命の痕跡が検出されたものの、その後の分析で、この結果は洗浄による汚染が原因であるとして、否定されてしまった。

 結局、有機化合物が存在しない以上、生物が存在するはずはないとして、バイキング計画の関係者は、火星に生物の痕跡はなかったと結論づけた。

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探査機の実験が火星の生命を消滅させてしまった可能性

 今回、ドイツ、ベルリン工科大学の天体生物学者ディルク・シュルツェ=マクツ氏は、こうした謎めいた結果は、NASAがうっかり火星の生命を殺してしまったことに起因すると主張している。

 同氏によれば、「標識元素放出実験」と「熱分解放出実験」の2つには不備があるのだという。

 だが、それも仕方がないことなのかもしれない。というのも、当時の常識では、生命が生きるうえで、水は多ければ多いほどいいとされていたからだ。

 ところが最近の研究では、生命はカラカラに乾燥した環境でも上手に適応できることが明らかになっている。

そうした生命にとって、水はかえって危険なものだ。そして火星はまさにカラカラに乾燥した惑星なのである。

 これについてシュルツェ=マクフ氏は、「専門的には水分過剰(hyperhydrating)と言う。要するに、彼らを溺れさせるようなもの」と、Big Think[https://bigthink.com/hard-science/accidentally-killed-life-mars/]で説明している。

 たとえば、砂漠のど真ん中で半死半生の状態でさまよっている人間がいたとしよう。それをUFOに乗っていた宇宙人が発見し、どうにか人間を救うためにこう考えた。

 「人間には水が必要だ。海に入れて助けよう!」

 これではかえって死んでしまう。火星の検査はこれと同じことをしていたかもしれないのだ。

 火星での検査に関連して、シュルツェ=マクフ氏は1つ興味深いことを指摘している。

 それは熱分解放出実験で検出されたバイオシグネチャーは、サンプルに水を加えないときのほうが強く現れたことだ。

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火星に生命はいたのだろうか?

 となると、当然のように浮かんでくる疑問がある。

はたして、バイキング計画で採取された火星の土には、実際のところ生命がいたのだろうか?

 この疑問の答えは今のところない。だがシュルツェ=マクフ氏は、これについて興味深い仮説を提唱している。

 彼によるなら、火星にはきわめて乾燥した環境の中、過酸化水素を利用して生きる生命がいると考えられるという。

 そう仮定すると、ガスクロマトグラフ質量分析で汚染による有機化合物が検出された理由もうまく説明することができるのだ。

 この検査では、事前にサンプルを加熱する。仮に火星の生命に過酸化水素が含まれていた場合、その生命は焼き殺されてしまうのと同時に、過酸化水素が周囲の有機分子と反応して二酸化炭素が発生する。

 この状況はバイキング計画で検出された結果とぴったり一致する。

 シュルツェ=マクフ氏はこうした仮説を踏まえ、NASAは水以外のもの、すなわち含水化合物や吸湿性化合物(つまりは塩類)も探すべきであると主張する。

バイキングの生物学実験からほぼ50年が経過し、火星の環境についてずっと理解が深まった今、生命検出ミッションを再び行うべき時が来ている

 この論説は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-024-02381-x]』(2024年9月27日付)に掲載された。

References: We might have killed the only life we ever found on Mars - Big Think[https://bigthink.com/hard-science/accidentally-killed-life-mars/] / NASA May Have Inadvertently Killed Life on Mars, Scientist Says[https://www.sciencealert.com/nasa-may-have-inadvertently-killed-life-on-mars-scientist-says]

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