
この患者の蘇生を犬が…飼い主の体に肉球の跡が残るほど「CPR」をがんばってたペットの子犬(当時1歳、現在3歳)に、救助隊員たちもさすがに驚いたそうだ。
カナダで心臓発作で倒れた飼い主に、独自のCPR(心肺蘇生法)を根気よく続け、飼い主の命を救ったお手柄子犬の行動が感動を呼んでいる。
献身的で賢いペットは、ときに人間顔負けな機転をきかせることがある。とりわけ大好きな飼い主のピンチや体調の急変などもすぐに察知し、全力でできる限りの行動を起こしたりするものだ。
2年前カナダのオンタリオ州で夜明け頃、命取りになる心臓発作で倒れたダレンさん。それにいち早く気づいたのが当時1歳だったベアだ。
ベアの遠吠えを頼りに、階下に降りた妻のジャニスさんが見たものは、意識を失った夫ダレンさんの胸の上に、何度もくりかえし飛び乗るベアの姿だったという。
家族の就寝中に心臓発作で倒れた飼い主
先日海外メディアで取り上げられたこの出来事は、2022年8月にカナダのオンタリオ州ボンフィールドのあるご家庭で起きたことだ。
午前4時ごろ、具合が悪く寝付けずにいた退役軍人のダレン・クロッパーさん(当時55歳)が致命的な心臓発作を起こした。
当初家族はみんな眠っており、唯一気づいたのは飼い犬のベア(当時1歳)だけだったが、ベアはすぐダレンさんを救う行動を起こした。
倒れたダレンさんの胸の上でジャンプしていたベア
上の階で寝ていたダレンさんの妻のジャニスさんは、息子のマシューにさんに起こされた。
マシューさんはベアの遠吠えで目を覚ましたという。ただ事ではないと感じたジャニスさんは、ベアの声を頼りに階下に降りてショックを受けた。
まず目に飛び込んで来たのは、意識を失って床に倒れている夫、そしてその胸に遠吠えしながら懸命にジャンプして飛び乗るベアの姿だった。
ソファを飛び越えて夫の上に飛び乗るベアを見たときは「何てことなの!」と驚きました (ジャニスさん)
緊急手術を受け無事に退院
ジャニスさんが911に連絡すると、すぐに救急隊員が到着し、ダレンさんを病院に搬送してくれた。
医師の診察の結果、ダレンさんは、右肺から心臓に至る動脈が閉塞したため、重い心臓発作を起こしたことがわかり、心筋梗塞のリスクを下げる緊急バイパス手術を受けた。
その手術は5時間もかかる長いものだったが、幸いにも手術は成功し、後にダレンさんは無事退院できた。
ベアの独自のCPRを受けた記憶
心臓手術でダレンさんの命を救ってくれたのは医師たちだが、その手術もベアの独自のCPRがあったおかげで受けられたもの、とダレンさんは語る。
ベアが私の胸に飛び乗ってこなかったら、私は生きていなかったでしょう。つまり彼は子犬なりのCPR(心肺蘇生法)で私の心臓の血流を良くしてくれたのです (ダレンさん)
ベアは救助犬ではない。なのでCPRを習ったり教わったこともない。飼い主を救いたい一心で胸を押し続けた行動が図らずも命を救ったのだ。
実は、ダレンさんは病院に運ばれる前のことをおぼろげに覚えている。それはベアに胸の上でジャンプされているときの記憶だ。
目が覚めたとき、ベアが私の胸の上で繰り返しジャンプしているのを感じました。彼は何も訓練を受けていなかった。それなのにひたすらジャンプを続けてたんです
ダレンさんの体に肉球の跡が
実は駆けつけた救急隊員や医療スタッフたちも、初めのうちは(妻が未亡人になるという意味から)「ウィドウ・メーカー」とも呼ばれる致命的な心臓発作を起こしたはずのダレンさんが、なんとか生き延びていたことに驚いていた。
ところがその後隊員らも、ベアが何時間もダレンさんの胸を強くしっかり飛び跳ね続けたと思うようになり、そのおかげでダレンさんが生存できたと考えるようになった。
その理由は、ダレンさんが後に救急隊員から聞かされたことだが、なんと搬送されたダレンさんの胴の部分、胸の周辺にベアの肉球の跡がついていたからだという。
数時間飼い主の胸を押し続けたベア
ベアがCPRを続けていた、という見解は、医師の見立からも推測できる。医師によると、ダレンさんが発作で気を失っていた時間はおそらく3時間以上だという。
その間、もし誰にも気づかれず、放置されていたとしたら、ダレンさんはそこで亡くなっていた可能性が高い。
つまり、ベアがいつからCPRを始めたのかは正確にはわからないが、妻のジャニスさんが来るまで数時間ジャンプを続けていたと考えられる。
小さな体で遠吠えしながら辛抱強くCPRを続けていたかもしれないベア。ひょっとしたら途中でダレンさんが時々反応したのかもしれないし、それで何度も続けるようになり、足が痛くなっても続けていたかもしれない。
ダレンさんがいうように、ベアはCPRなど習っていない。だがそのジャンプが、基本的な心肺蘇生法の役割を果たしていたことは救急隊員らも認めている。
その後、1年かけて健康を取り戻したダレンさんは、命を救ってくれたベアにとても感謝している。
退院して家に帰ったときも「おかえり!」とばかりにやってきたベアを抱きしめて、泣いてしまったそう。
家に帰って最初にベアを見たら、ベアもすぐに私の腕に飛び込んできたので、私も泣き崩れました
この出来事は今年11月に話題になり、ベアはペットフードやペットケア製品の企業から、飼い主の命を救った勇敢な犬として表彰された。
ベアの両親は元サービスドッグだった
ベアはゴールデンレトリバーとハスキーのミックスのオスで、毛並みもいろんな色をしている。さらに目はハスキーの父親から受け継いだ明るいクリスタルブルーと暗めブラウンのオッドアイだ。
しかもその両親ともに元サービスドッグ(補助犬)だったそう。
ベアは普通のペットとして、とても可愛がられて育ってられてるが、その聡明さや優しさ、飼い主への献身的で我慢強い行動は、遺伝的な素質の現われなのかもしれない。
実際にこうした場に出くわしたことはないけれど、話ではCPRって頭でわかってる人間でも、実際その場面ではうろたえてすぐにできなかったり、できてもけっこうハードだから一人でやるのは大変だって聞く。
そこいくと子犬なのにがんばっていたベアの行動には頭が下がるわ。元気になったダレンさんや家族も表彰されたベアをとても誇りに思っているそうだよ。
References: Hero Dog Performs CPR To Save Owner During Massive Heart Attack[https://www.sunnyskyz.com/good-news/5593/Hero-Dog-Performs-CPR-To-Save-Owner-During-Massive-Heart-Attack] / https://www.msn.com/en-ca/health/other/canadian-military-vet-saved-by-bear-who-jumped-on-his-chest-so-hard-during-heart-attack-that-it-left-paw-prints/ar-AA1qQS0p?ocid=BingNewsVerp[https://Canadian%20military%20vet%20saved%20by%20Bear%20who%20jumped%20on%20his%20chest%20so%20hard%20during%20heart%20attack%20that%20it%20left%20paw%20prints]