カニにも痛覚がある?最新研究で脳から痛みへの反応を確認
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 それが人間と同様のものかはわからないが、甲殻類も痛みを感じている可能性があるとして、スイス、ノルウェー、ニュージーランドなどの一部の国ではロブスターを生きたまま調理することは違法となっている。

 新たな研究では、カニの脳が痛みに対してどう反応するかが調べられた。

 その結果、カニのような甲殻類は、傷つけられた体の痛みを処理する器官を持っており、痛みを感じている可能性があることが改めて確認された。

甲殻類は痛みを感じるのか?ただの反射なのか?

 痛みの感覚については、長い間議論されてきたが、近年、これまで脊椎動物にしかないとされてきた認知レベルの痛覚が、魚類、両生類、タコ類にも備わっているとする研究結果も報告されている。

 例えば、浜カニは電気ショックや明るい光に不安を示し、その刺激を避けることを学習していることが判明した。

 これは、甲殻類が痛みを感じているという仮説と矛盾がないように思える。だが、これはただの反射反応だという学者もいる。

 最低限の基本的な神経系統をもつ生き物でさえ、痛みの刺激に反応してそれを避けることを学ぶ。

 これは生物の生存にとって非常に重要なことで、痛みや危害を避ける反応は末梢神経系によって無意識に引き起こされると考えられている。

 傷つけられる危険を「意識的に」認識するには、中枢神経系からの統合が必要で、今回の実験で浜ガニはそれが可能であることが実証された。

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カニを使った痛みの実験

 今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学の動物生理学者、リン・スネドン氏ら研究チームは、ヨーロッパミドリガニ(Carcinus maenas)の甲羅に穴をあけ、中枢神経系に脳波計(EEG)のような電極を取りつけて、その活動を記録した。

 まずは化学刺激の実験を行った。さまざまな濃度の酢酸をカニの軟組織に塗りつけると、末梢神経の痛み受容体が脳の各部位に信号を送るのか確認でき、酸の濃度が濃くなるほど、中枢神経系の反応が大きくなった。

 次に機械でつついて痛みを伴う刺激を与えた場合、カニの中枢神経系は異なるパターンでコード化されていたのに、さらに高い振幅の電気活動が示された。

 その結果、 カニの脳の活動が化学刺激を処理しているのか、機械刺激を処理しているのかを判断することもできた。

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 現時点では、機械的な刺激への脳の反応が単に触覚によるものか、痛みによるものかははっきりしない。

 さらなる研究が必要だが、カニには、侵害受容器(痛みを起こす刺激の受容器)が存在している可能性があるという。

 これは電気生理学的信号によって生きたカニの体全体が痛みに対する反応らしきものを示すことを示した最初の実験といえよう。

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あらゆる生き物にとって、危険を回避するために何らかの痛みシステムを備えているのは当然という研究者の見解もある。

甲殻類は構造が似ているので神経系も似ていると思われるため、エビ、ザリガニ、ロブスターも痛みの刺激に対する外部信号を脳に送り、その情報を処理できていると推測できます(リン・スネドン氏)

 2021年にはイギリスで、全ての動物が意識と感覚を持つ「衆生」であることを認める法案が可決されたが、甲殻類や頭足類などの非脊椎動物も法案に含めることを検討していることが報じられた。

 甲殻類を今後も食べ続けるなら、料理するときにできるだけ苦痛を感じさせない方法をとるべきであると、リン・スネドン氏も主張する。

 先進国では生きたまま丸ごとゆでるようなやり方は徐々になくなっていくのかもしれない。

この研究は『Biology[https://doi.org/10.3390/biology13110851]』(2024年10月22日付)誌に掲載された。

References: Brain test shows that crabs process pain | University of Gothenburg[https://www.gu.se/en/news/brain-test-shows-that-crabs-process-pain] / Scientists Confirm Crabs Really Can Experience Pain After All : ScienceAlert[https://www.sciencealert.com/scientists-confirm-crabs-really-can-experience-pain-after-all]

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