超大質量ブラックホールから放出された高速のジェットが、暗闇の中で何かに命中する瞬間がNASAのX線観測衛星によって確認された。まるでデス・スターのレーザー砲を彷彿とさせる。
場所は、地球から約1200万光年離れた電波銀河「ケンタウルス座A」だ。その中心に存在するブラックホールは、太陽の1000万倍の質量を持ち、巨大な宇宙ジェットを放出している。
奇妙なのは、X線で観察すると、その衝突地点がV字に枝分かれしていることだ。
これまでこのような現象が観察されたことはなく、なぜこのような形状になるのか現時点ではわかっていない。
超大質量ブラックホールが放出する宇宙ジェットが謎の物体に衝突
この画像は、NASAが打ち上げたチャンドラX線観測衛星が1200万光年の彼方で観測したものだ。
その光はX線を可視化したものだが、ピンク > 紫 > 青になるほどエネルギーが高くなる。
青っぽいもやに包まれた一番目立つ白い点が、ケンタウルス座Aの中心にある超大質量ブラックホールだ。
そこから光速に近いスピードで2方向に宇宙ジェットが放出されている。
その前に宇宙ジェットについて補足しよう。
ブラックホールは周囲の物質を引き込む強力な重力を持っているが、その周囲には吸い込まれずに回転するガスやプラズマの円盤(降着円盤)が形成される。
この円盤内の物質が非常に高温・高圧になり、一部のエネルギーがブラックホールの極方向に強力な流れとして放出される。これが宇宙ジェットで、光速に近いスピードで進み、遠く離れた宇宙空間にまで到達する。
1本は、地球の方向に放出されているもの。
だが、今回の主役はこうした派手な特徴ではない。
左上のジェットとは逆方向、すなわち地球から遠ざかる方向に放出されているものだ。だんだんと細くなり、やがて霞んで消えてしまうためわかりにくいが、こちらは画像の右下へ向かって伸びている。
その途中をじっと見つめると、何やらV字に枝分かれしたラインがあることがわかるだろうか?
米国ミシガン大学をはじめとする国際的なチームは、これに大いに注目した。
画像では小さく地味に見えるが、V字の腕は700光年もの長さがある(ちなみに、太陽に一番近い恒星まで4光年の距離だ)。
そこに何らかの物体があり、ここにジェットが衝突したことで生じたと考えられているが、その物体の正体は謎に包まれている。
V字を作り出している何かは「C4」と呼ばれている。この銀河でこのような現象が見つかったのは初めてであるという。
暗闇の中に潜む物体の正体は何か?
仮説としては、C4は単独か連星の巨大な星だと考えられるという。
この星からもガスの風が吹いており、それが宇宙ジェットの粒子と衝突して乱流が生じる。
するとジェット内でガスの密度が高まり、それによってX線が放たれる。
だが、なぜV字になるのかがわからない。V字の下側の腕は、ジェットにほぼ平行であり、先ほどの仮説で説明できる。
ところが、もう一方の腕はジェットに対して大きな角度がついている。その理由が、頭脳明晰な天文学者たちにもわからないのだ。
ケンタウルス座Aで、恒星やガス雲と思われる物体に衝突するブラックホールのジェットが目撃されたことは過去にもある。
ただし、これらをX線で見ると楕円の斑点のように見えるのに対して、C4はV字型であるという点でユニークだ。
C4だけ形が違う理由については、ジェットが衝突している物体の種類や、直接的な衝突かどうかといった要因が関係しているのかもしれないそうだ。
この研究は『The Astrophysical Journal[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad73a1]』(2024年10月8日付)に掲載された。
References: Black Hole Jet Stumbles Into Something in the Dark - NASA[https://www.nasa.gov/image-article/black-hole-jet-stumbles-into-something-in-the-dark/]











