イスラエルの洞窟の奥深くで3万5000年前の儀式の痕跡が残された遺跡が発見される
Credit: Assaf Peretz, Israel Antiquities Authority.

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 イスラエルとレバノンの国境付近にあるマノット洞窟の最深部から、カメの甲羅のように見える模様が彫刻された岩が発見された。

 ここは太陽の光も届かない建物8階分に相当する深部で、3万5000年前の旧石器時代の人々が集い儀式が行われた場所だと推測されている。

 しかもこの洞窟からは、我々の先祖、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人両方の痕跡が発見されている。

洞窟の最深部に潜んでいた儀式のための場所

 イスラエル、ハイファ大学の考古学者オムリー・バルジライ氏率いる研究チームは、マノット洞窟の謎に迫った。

 この洞窟の奥深くでは、当時の人々がただ食べて生きるだけでなく、集団でなにかを崇め、普通の日常生活を超えたシンボルを生み出していたことがうかがえるという。

 洞窟に住んでいたのは、おそらく初期のホモ・サピエンスと最後のネアンデルタール人だったと思われ、洞窟の入口付近を住居にしていたようだ。

 そこには、使っていた道具や、動物をさばいたり、調理していた痕跡が残っていた。

 それとは別に洞窟の最深部に安置された彫刻が施された石の存在は、トーテムや霊的存在を表している可能性をうかがわせる。

 地上付近の日常生活とはかなり離れた場所にあることから、それが特別な崇拝の対象だった可能性がある。

 最深部では長期にわたって火が使われた痕跡は見つからなかったが、石筍(せきじゅん:鍾乳洞の床にタケノコ状に成長した岩石)に煤(すす)が残っていたことから、松明あるいは一時的な炉が設置されていたのではないかと考えられる。

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物言わぬ儀式の証人

 カメの岩と呼ばれるこの石は一見単純なように見えるが、慎重に配置されていることや、周囲に残されていた証拠から、象徴的な深い意味を暗示しているようにみえる。

 洞窟の広さやここで発生する自然の音響からは、人々が儀式のために集まるのに都合が良かったことがうかがえる。

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ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交流をもった場所

 マノット洞窟はこの地域特有の物語を語ってくれる。

 レバント地方(地中海東部およびその沿岸諸国)にいた初期の人類が単に移動していただけでなく、文化を育み、アイデアを交換し、そしておそらくはネアンデルタール人と融合していたであろうことを想像させてくれる。

 ネアンデルタール人はおよそ4万年前に姿を消したが、完全に滅亡してしまったわけではないことを示す証拠がある。

 彼らの遺伝子は現代の私たちの中にも生き続けている。

ということは、歴史のどこかでホモサピエンスと交わりがあったということだ。

 2015年にマノット洞窟内で発見された5万5000年前の頭蓋骨の破片が、こうした交わりを示すもっとも明確な証拠のひとつとなった。

 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの両方の特徴が見つかったのだ。

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 マノット洞窟の発掘においては、アメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学歯学部の協力が大きな助けになった。歯は骨よりも硬いため、非常によく保存されることが多いからだ。

 歯をベースとした人骨研究は、洞窟居住のタイムラインと儀式の背景を探るのに役立ったのだ。

 全体として、マノット洞窟の発見は初期人類の文化の物語に新たな側面を加え
ている。

 カメの岩が表すなんらかの儀式からは、先史時代の人々が、ただ生きるための食糧や住居だけでなく、人間同士のつながりや精神性を暮らしの中に求めていたことがうかがえるからだ。

本研究は、『Proceedings of the National Academy of Sciences[https://www.pnas.org/doi/epub/10.1073/pnas.2404632121]』誌(2024年10月25日付)に掲載された。

References: Hidden 35,000-Year-Old Ritual Site Found Eight Storeys Deep Inside an Israeli Cave[https://www.zmescience.com/science/news-science/hidden-35000-year-old-ritual-site-found-eight-storeys-deep-inside-an-israeli-cave/]

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