
1964年、イギリスの消防士ジム・テンプルトン(当時44歳)は、家族と一緒にソルウェイ湾を望むバーフ・バイ・サンズという古城の近くを訪れていた。
この時、ジムは5歳の娘エリザベスの写真を撮ったのだが、後に現像してみたところ、愛娘の頭の上に宇宙服のようなものを着た宇宙飛行士のような人物が写り込んでいたのだ。
撮影時、周囲にはこの家族以外誰もおらず、長い間この写真は多くの憶測を呼んできた。
そして今に至るまで、この謎の人物の正体は判明していない。本当に宇宙人なのか、それとも手の込んだいたずらなのか?
愛娘の写真に写り込んだ不思議な人影
1964年5月23日、イングランド北部、スコットランドとの国境にほど近いカンバーランド、現在のカンブリア州にあるバーフ・マーシュという湿地でこの写真は撮影された。
ソルウェイ湾を望む場所にあることから、後にこの写真は「ソルウェイの宇宙人」と呼ばれることになった。
この日、ジムは娘のエリザベス(当時5歳)とフランシス(同9歳)、妻のアニー(同35歳)を伴って、バーフ・マーシュの美しい風景を背景に、家族の写真を撮影しに来ていた。
この時撮影された写真の一枚が、のちに物議をかもすことになる。
なんと、娘のエリザベスを写した写真に、得体のしれない宇宙服のようなものを着た人物?が写り込んでいたのだ。
ジムはこの写真について、後に次のように語っている。
娘のエリザベスの写真を、似たようなポーズで3枚撮影したのですが、コダックから現像された写真が戻って来たとき、真ん中の写真の背景に宇宙服を着た人物らしきものが写っていてショックを受けました。
私はカーライルの警察にその写真を持って行きました。警察は多くの疑問を抱いた後、その写真を調べ、何も不審な点はないと発表しました。
地元の新聞「カンバーランド ニュース」がこの話を取り上げ、数時間以内に世界中に広まりました。写真が偽物でないことは確かですし、なぜこの人影が背景に現れたのか、他の人たちと同じように困惑しているのです
撮影当時、この場所にはテンプルトン一家以外には、湿地の向こう側に駐車中の車の中で座って新聞を読んでいた(あるいは編み物をしていた)老夫婦以外、誰もいなかったという。
撮影に使われたのは、35mmのSLRカメラ「ペンタコン F (東欧では「コンタックス F」として販売)で、フィルムはコダック社のカラーフィルムだったという。具体的には1963年発売の36枚撮りのKodacolor-X。
撮影された時間や撮影間隔は、正確にはわかっていない。地面の影の様子から、午後であるのは間違いないようだ。
コダック社はこのフィルムが加工・改ざんされていないことを確認。当時はデジタル技術がなかった時代だ。このような写真が撮影された前例もないという。
超常現象か陰謀か、はたまた誰かのいたずらか
ではこの「宇宙服を着た人物」はいったい誰なのか?この写真は数日後に現地の新聞に掲載され、すぐに大きな話題となった。
その正体についてもさまざまな説や憶測が飛び交い、まことしやかなものから眉唾物まで、当時から今に至るまでいまだに議論が続いている。そのいくつかを見てみると…
- バイクに乗っていた人がヘルメットを被り白いジャケットを来て、湿地の景色を眺めていた。ジムはこの人物に気づかずにシャッターを切った
- 背景に設置された等身大の宇宙飛行士の人形
- 母親のアニーが白い帽子を被っていて、ジムが気づかぬうちに背景に紛れ込んでいた。太陽光のせいで露出オーバーになり、白っぽい宇宙飛行士のように見えた
- 白い帽子とジャケットを着てジョギングをしている人がたまたま通りかかった
- ジムとその友人によるいたずらで、宇宙飛行士の格好をしてこっそり写り込んだ
- 未来から来たタイムトラベラー
- パラレルワールドからの訪問者
- 本当に宇宙から来た宇宙人
また、この写真が撮影された後で、説明のつかない不思議な出来事もいくつか起こったと言われている。
この写真が公開されて間もなく、ジムのもとに黒いスーツを着た2人組の男が訪ねて来た。
彼らは「ナンバー9とナンバー11」とだけ名乗り、黒いジャガーに乗っていたという。
そして写真を撮影した湿地まで案内するように要求。当日の天気や目撃者、周囲にいた動物たちなどについてジムを質問攻めにしたという。
当時、誰も「宇宙飛行士」らしき姿を目撃した人はいないと説明すると、男たちの態度が急変。ジムのでっち上げだと非難すると、彼を湿地に残して立ち去った
写真が撮影されてから数日後、オーストラリアのウーメラ実験場(南オーストラリアにある軍の実験施設)の技術者たちが、射撃場で2人の謎の人影を発見し、ミサイルの発射実験を中止した。
その後、地元の新聞で「ソルウェイの宇宙飛行士」の写真を見た彼らは、自分たちが遭遇した人物との類似性に唖然としたという
ウーメラ実験場で発射しようとしていたミサイルは、イギリスのブルーストリーク・ミサイルで、写真が撮影されたバーフ・マーシュから遠くないスパーデアダム空軍基地で作られたものだった。この2つの事件には何か関連があるに違いない
最有力は一緒にいた母親が写り込んだ説
だが今日に至るまで、ソルウェイの宇宙人がいったい誰、あるいは何なのか、決定的な結論は出ていない。
技術の進歩に伴い、多くの人がこの写真を分析し、再現を図り、加工ソフトを駆使して答えを見つけようとしている。
その中で一番有力なのは、この人影はエリザベスの母親のアニーであるという説だ。
同じ時に撮影された3枚目の写真を見てみると、アニーは袖なしの青っぽいワンピースを着ているのがわかる。
レタッチソフトなどを使って加工してみると、露出オーバーで白く飛んでしまってはいるが、謎の人影は袖なしの服を着ているように見える。
しかしこの写真が「宇宙飛行士」だと言われている最大の理由は、頭に丸いヘルメット状のものを被っているように見えることだ。
これについては、撮影当日の1964年5月23日の「月」の位置に説明を求める人たちがいる。
たまたまその昼の月とアニーの頭が重なった結果、宇宙飛行士のヘルメットのように見えたのでは?というのが、現在「一番納得がいく」とされている一つの説である。
とは言え、これで解決!というわけではない。確かにありそうな話ではあるが、実際に月を撮影しようとした経験のある人ならわかる通り、レンズを通した月は非常に小さい点のように見えてしまう。
また、エリザベスと比較した場合、この「宇宙飛行士」だけが真っ白に飛ぶほど露出オーバーする理由がわからないという声もある。
さらにこの日、月は午後の遅い時間にならないと見えなかったはずなので、もし撮影時間が昼過ぎなら、そもそもこの仮説は成立しない。
そしてもしこれがアニーだとしたら、なぜ撮影していたジムには見えていなかったのかという疑問もあった。
最後に関しては、彼が使っていたカメラでファインダーを覗いた時に、実際に写る画角の70%ほどしか見えないためではないかと言われている。
真相が究明される日は来るのだろうか
当時ジムはカーライル市の消防士として尊敬を集めており、またアマチュアのカメラマンとしても知られていた。手の込んだいたずらをするとは考えにくい。
ジムは2011年に亡くなったが、2002年に取材を受けた際、「ソルウェイの宇宙人」についてこのように語っていたそうだ。
この写真が公開されてから40年が経ちますが、世界中からさまざまなアイデアや可能性を記した何千通もの手紙を受け取りました。
そのほとんどは、私にとってほとんど意味をなさないものでした。
また、私はこの写真を撮影したことで、報酬を受け取ったことは一度もないことを付け加えておきます
References: In 1964, a dad's photo of his daughter captured a figure in a spacesuit — a mystery that still baffles[https://boingboing.net/2024/12/20/in-1964-a-dads-photo-of-his-daughter-captured-a-figure-in-a-spacesuit-a-mystery-that-still-baffles.html] / The 1964 Solway Spaceman Photograph: Case Report[https://jamesaconrad.com/media/Solway-Spaceman-photo.html]