アメリカを脅かした侵略的外来種「オオスズメバチ」の根絶作戦が成功
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 日本でも驚異的存在であるアジア原産のオオスズメバチがアメリカで初めて発見されたのは5年前だ。

 その圧倒的な攻撃力と毒性から「殺人スズメバチ」と恐れられ、アメリカでは官民一体となって根絶作戦が展開されていた。

 そしてついに、2024年12月18日、ワシントン州と米国農務省は遠隔記者会見で、アメリカ国内からオオスズメバチを完全に根絶したと正式に発表した。

アジア原産の最強の蜂、オオスズメバチ

 日本では身近で驚異な存在であるオオスズメバチは世界最大のハチで、日本全国および、インドから東南アジア、東アジアにかけて広く分布する。

 強い毒性を持ち、攻撃性も高い危険な種で強力な大顎で噛み付くこともある。

 飛行能力も高く、時速約50kmで飛翔し、狩りをする時は1日で約100kmもの距離を移動できる持久力も持つ、最強のハチなのだ。

 最近では侵略的外来種として、欧米などを中心に世界中に生息域を広げており、英名が「Northern giant hornet(キタオオスズメバチ)」に改められた。

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アメリカに侵略したオオスズメバチ、根絶に成功

 アメリカにとっては侵略的外来種で、2019年にワシントン州のカナダ国境近くで初めて目撃されて以来、アメリカでは地道な駆除の取り組みが続けられてきた。

 その甲斐あって、2021年以降オオスズメバチの報告は一度もなかったという。

 アメリカ国内でのオオススメバチ駆除作戦は、専門家と住人たちの協力によって進められたものだ。

 地元住人たちは、自宅の敷地内にワナを設置することを快く受け入れ、オオスズメバチを見つけ次第すぐに当局に通報するなど協力を惜しまなかった。

 一方、駆除を行う専門家たちは、スズメバチを捕獲すると、デンタルフロスで小型の発信機を取り付けあえて逃した。

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 その狙いは、追跡して巣を見つけ出すことだ。そうやって発見した巣を破壊すると、中では複数の女王バチが羽化を始めていたという。

 ワシントン州農務省の害虫対策を担当するあるスヴェン・スピチガー氏は、この勝利は非常に珍しいものとオンラインの記者会見で語ったという。

昆虫学者として25年以上この仕事をしてきましたが、人間が昆虫に勝利するのなんて滅多にありません(スヴェン・スピチガー氏)

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植木鉢や貨物コンテナに紛れて侵入か?

 日本では毎年100人以上が刺され、数十人の死者を出している危険なオオスズメバチ。このハチが北米で初めて発見されたのは、2019年8月のこと。

最初の発見地は、カナダのブリティッシュコロンビア州である。

 同年12月に米国ワシントン州の住人によってスズメバチの標本が提出され、米国にも侵入していることが確認される。

 さらに2020年夏には、養蜂家からも巣箱が攻撃されたとの報告と標本の提供があった。

 現在までに米国内でオオスズメバチが確認されたのはワシントン州のみで、2020年と2021年には4つの巣が発見された。

 DNAの解析によるなら、カナダと米国で発見されたハチには関係がないことが明らかになっている。

 そのため、それぞれ別の国から侵入してきた可能性がある。なおオオスズメバチは日本だけでなく、アジアにも生息するので、必ずしも日本出身とは限らない。

 侵入経路は不明だが、植木鉢や貨物コンテナに紛れて北米に到達したのではないかと考えられている。

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外来種のスズメバチとの戦いはまだ終わりではない

 日本では身近にある危険生物で、畏怖の対象であるオオスズメバチだが、アメリカやカナダの人々にとっては外来種であり、殊更警戒感が強かったようだ。

 とりわけミツバチの首を切って殺し、90分で巣を壊滅させてしまうオオスズメバチは、養蜂家にとっては迷惑以外の何者でもない。

 その毒針は、一般的な養蜂用防護服を貫通し、ミツバチの7倍近い毒液を繰り返し注入してくる危険なもの。

 その対策のために、ワシントン州当局は中国からわざわざ特注の強化防護服を取り寄せていたそうだ。

 スピチガー氏によれば、当局によって駆除完了が発表されたが、ワシントン州は今後も引き続き警戒を続けるとのこと。

 その正しさを証明するかのように、2023年10月にはキツァップ郡でオスズメバチの目撃情報が寄せられたそう(ただし、実物は確認されていない)。

 またオオスズメバチ以外の種に目を向けるなら、ジョージア州とサウスカロライナ州ではやはり外来種である「ツマアカスズメバチ」への対応に追われている最中であるそうだ。

References: News Releases | Washington State Department of Agriculture[https://agr.wa.gov/about-wsda/news-and-media-relations/news-releases?article=41658]

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