ポパイとタンタンも!2025年1月1日から著作権切れでパブリックドメインに
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 2025年1月1日、1929年に発表されたおよそ数千点の作品の著作権が切れ、1924年の録音物と共に、アメリカのパブリックドメインに入ることになった。

 これで1920年代に出版された書籍やコミック、映画や楽曲などの作品は、そのほとんどがパブリックドメイン扱いになったことになる。

 今後アメリカにおいて、これらの作品を誰でも自由に共有したり、活用したりできるようになるわけだ。

アメリカで数千点の著作物がパブリックドメインに

 今回、米国のパブリックドメインに入ることになった主な作品には、小説や楽曲などを含め、以下のものが挙げられる。

 これにより、アメリカでは今後上記を含めた数千点にも上る作品やキャラクターを、自由に活用できるようになる。

キャラクター作品ではポパイとタンタンが

 今回注目されているのがポパイとタンタンだ。

 2022年1月にくまのプーさんや、2024年1月にパブリックドメインとなったミッキーマウスの初期作品は、これらのキャラクターを使ったホラー映画が作られており、既にポパイに関してもホラー映画の企画が進んでいるそうだ。

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 ただし、気をつけなければならないのは、あくまでも「1929年」時点のポパイだ。

 例えば、「1929年時のポパイが持っていた特徴」はすべて今回パブリックドメインになる。

 ポパイの典型的なビジュアルである、錨のマークのタトゥーやセーラー服でパイプを咥えている姿などは、パブリックドメインに入ると考えられる。

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 ただし、おなじみの「ポパイがほうれん草の缶詰でパワーアップする」設定は、1931年まではなかったらしいのだ。

 となると、もしかするとほうれん草とポパイの強さを関連付ける設定は、まだ自由に使えない可能性がある。

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 また、ポパイの登場人物全てがパブリックドメインに入るかというと、1929年の時点で登場していなかったキャラクターには当然まだ著作権があるということになる。

 ベルギーの漫画家エルジェによる漫画「タンタンの冒険」に登場するタンタンもアメリカのパブリックドメイン入りした。

 少年タンタンは勇敢な記者であり、犬のスノーウィとともに世界中を冒険しながら、事件を解決していく物語である。

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国によって異なる「著作権」の考え方

 ただし著作権やパブリックドメインに関する考え方は国によって異なる。

 今回、アメリカでパブリックドメインに入った漫画「タンタンの冒険」の場合、ベルギー人の作者、エルジェは1983年に亡くなっており、保護期間を「著者の死後70年」と定めているEU諸国や日本では、2054年までパブリックドメインにはならない。

 現在、ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)では、その7条において「著作者の生存期間及び著作者の死後50年」を原則としているため、これ以下の国はほとんどないそうだ。

 実はアメリカとヨーロッパなど諸外国では、著作権に対する考え方にも違いがみられる。

 ヨーロッパでは「著作者の権利」が重視されるのに対し、アメリカではコピーライト、つまり「独占的に複製する権利」がより重視されるのだ。

 そのため、著作権の保護対象の範囲もアメリカと諸外国では異なる場合が多く、日本の作品をアメリカで販売する際も注意が必要になる。

 アメリカもベルヌ条約を批准しており、原則として「著作者の死後70年間」を保護期間としているが、「無名著作物・変名著作物・職務著作物(※)」の場合は、今回のように「最初の発行年から95年」の保護期間が適用されることになっている。

  • 無名著作物:著作者が不明なもの
  • 変名著作物:ペンネームや芸名などを使って著作したもの
  • 職務著作物:著作した従業員個人ではなく雇用主を著作権者とするもの

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2025年にアメリカでパブリックドメインとなった作品

映画:サウンドフィルムの時代の到来

 1929年は映画史においても重要な年だった。この年、多くのトーキー映画が制作され、映画技術が新たな時代を迎えた。

 トーキー映画とは、映画に音声(特に人のセリフや音楽)が組み込まれた作品のことで、無声映画に続いて登場した映画技術だ。

 2025年にパブリックドメインとなる映画には以下のような名作が含まれる

  • アルフレッド・ヒッチコックの初めてのトーキー映画「Blackmail」
  • セシル・B・デミルの「Dynamite」
  • ウォルト・ディズニーの「The Skeleton Dance」(シリー・シンフォニーシリーズの最初の作品)
  • クララ・ボウ主演の初トーキー映画「The Wild Party」
  • ブロードウェイ・メロディー(アカデミー賞作品賞を受賞した初のトーキー映画)
  • キング・ヴィダー監督の「Hallelujah」(主要スタジオが制作した初の全員黒人キャスト映画)

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文学:戦争文学とミステリーの名作

 文学分野では、以下の著名な作品がパブリックドメインに加わる。

  • アーネスト・ヘミングウェイの「武器よさらば」
  • エーリッヒ・マリア・レマルクの「西部戦線異状なし」(英語版初訳)

 これらはどちらも第一次世界大戦を題材にした作品であり、戦争の悲惨さを描いた名作として知られる。また、ミステリー分野では以下の作品が注目される:

  • ダシール・ハメットの「マルタの鷹」
  • アガサ・クリスティの「Seven Dials Mystery」

 さらに、ジョン・スタインベックのデビュー作「Cup of Gold」など、著者の初期作品も含まれる。

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音楽:ジャズ、ショーチューンの黄金時代

音楽分野では、1929年に発表された以下の楽曲が自由に利用できるようになる

  • ジョージ・ガーシュウィンの「An American in Paris」
  • モーリス・ラヴェルの「ボレロ」
  • アーサー・フリードの「雨に唄えば」
  • コール・ポーターの「What Is This Thing Called Love?」

これらはジャズやショーチューン(ミュージカルのために特に書かれた曲)の黄金時代を代表する楽曲であり、新しいアレンジやパフォーマンスが期待される。

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 今回のパブリックドメイン入りも、「アメリカにおいては」ということなので、我々日本人からしてみたらだから何?といった感は否めない。

 ともあれ、多くの著名な作品がパブリックドメインとなったことで、それらをオマージュした豊かな作品が生まれ、我々を楽しませてくれることを期待したい。

References: Popeye, Tintin and more will enter the public domain in the new year[https://www.npr.org/2024/12/26/nx-s1-5231543/copyright-public-domain-2025-cartoon-popeye-tintin-faulkner-hemingway] / Popeye and Tintin enter the public domain in 2025 along with novels from Faulkner and Hemingway[https://apnews.com/article/public-domain-2025-popeye-tintin-e71ca89b7a430e68e66a7c6ce45a98eb]

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