
西アフリカのガボンにあるアバンダ洞窟で発見された小型のオレンジ色のワニが研究者たちを驚かせている。
このワニは完全な暗闇の中でコオロギやコウモリを食べながら暮らし、時にはコウモリの排泄物が混ざった水の中を泳ぐ。
その奇妙な生態と進化の過程についての研究が進められている。
洞窟内で独自の変化を遂げたニシアフリカコビトワニ
ニシアフリカコビトワニ(Osteolaemus tetraspis)は通常、西アフリカの森林に生息する小型のワニで、体長はおよそ1.5 mほど。最大でも2mを超えることはないという。主に魚類、甲殻類、小型の哺乳類などを食べている
しかし、アバンダ洞窟にいるワニたちは、暗闇の洞窟内で、壁に張り付くコウモリやコオロギを主食とし、コウモリの糞が堆積してできたグアノ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%8E] がいっぱいの水たまりの中で泳ぐ。
この変化は、洞窟内に住むことで起きた適応の結果と考えられる。洞窟内には外敵が少なく、森林に住む仲間よりも健康状態が良いとされる。
洞窟ワニの子供たちは洞窟の入口で孵化し、成長するにつれて奥深い暗闇へ移動する。成体になるとほとんど洞窟から出ることはないと考えられている。
オレンジ色の皮膚と進化の兆候
洞窟に住む成体のニシアフリカコビトワニはオレンジ色の皮膚を持つ。
その理由は、洞窟内の水たまりにあるコウモリの糞の堆積物(グアノ)の成分が皮膚に影響を与え、長期間泳ぎ続けることで色が抜け、オレンジ色に変化したと考えられている。
また、遺伝子解析の結果、この洞窟ワニは森林に住むワニとは異なる遺伝的特徴を持つことがわかった。
ある特定のハプロタイプ(親から受け継いだ遺伝子のまとまりで、生物の特徴を決める鍵となるもの)は、森林のワニには見られないものだった。
これらの遺伝的変化は、洞窟ワニが新しい種に進化しつつあることを示唆している。研究者たちは、数千年前に洞窟ワニが外部の個体群から分岐した可能性が高いと見ている。
生息環境の保護と今後の研究
地元住民は洞窟を恐れて近づかないため、この個体群はある程度保護されているが、ワニの肉が珍味として取引される野生動物食肉(ブッシュミート)市場による脅威は無視できない。
研究チームは2015年に新たな洞窟通路を発見し、洞窟ワニが雨季の間も洞窟内で活動していることを確認した。
現在、研究者たちはこの地域を野生動物保護区として指定し、洞窟ワニの生態と進化の研究をさらに進めている。
この奇妙で魅力的な生物が未来に向けてどのような進化を遂げるのか、今後の調査に期待が寄せられている。
追記:(2025/01/13)ワニの大きさを訂正しました。
References: Orange dwarf cave crocodiles: The crocs that crawled into a cave, ate bats, and started mutating into a new species[https://www.livescience.com/animals/alligators-crocodiles/orange-dwarf-cave-crocodiles-the-crocs-that-crawled-into-a-cave-ate-bats-and-started-mutating-into-a-new-species] / Orange cave crocodiles may be 'mutating' into new species | Environment | The Guardian[https://www.theguardian.com/environment/radical-conservation/2018/jan/29/orange-cave-crocodiles-gabon-bushmeat-africa]