
雪が降ると自然と作りたくなる雪だるまだが、最初に雪だるまがつくられたのはいつだろう?そしてどんな姿をしていたのだろう?
太昔から作られていた可能性もあるが、記録に残されているものとしては7世紀の中国、14世紀の中世ヨーロッパ、ミケランジェロまで遡ることができる。
この記事では、ユーモラスで時に奇妙な雪だるまの姿を通して、人間と雪の深い関わりを紐解いていこう。
雪だるまの歴史と進化
2000年代始め、世界唯一の雪だるま史家であるボブ・エクスタイン氏は雪だるまの創造主を探し求め、14世紀後半の中世の時祷書(じとうしょ)[https://manuscripts.kb.nl/zoom/BYVANCKB%3Amimi_ka36%3A078v]にたどり着いた。
時祷書は中世ヨーロッパで使用されたキリスト教の祈りや礼拝のための手引書で、挿絵や装飾が施された写本である。
それはハーグ王立図書館が所蔵するもので、溶けかけた腕と脚を持つ雪だるまが火に焼かれている様子が描かれている。
だがさらに古い雪だるま先祖がいる可能性がある。
文章による記述だけなら、7世紀初頭の中国道教の文献『奉道科戒[https://books.google.fi/books?id=8ns8DwAAQBAJ&pg=PA98#v=onepage&q&f=false]』に、象牙を彫って作った像、木を削って作った像、さらに「雪を積み上げて作られた像」の記述がある。
もしかすると雪だるまの起源はさらに遡り、旧石器時代の人々ともつながりがあるのかもしれない。人
人間が最初に何かを真似て作ってみたいという衝動にかられたとき、雪という素材は簡単に利用できる手軽な材料となったのだろう。
多種多様な変化を遂げた雪だるま
雪だるまは溶けてしまえば痕跡が残らないため、その発展の過程を追跡するのは非常に難しい。
宗教的な人物を除けば、雪だるまは世界でもっともよく知られている肖像といえよう。
ヨーロッパからアメリカ大陸、アジアからオセアニアまで、何世紀にもわたって冬の風物詩である雪だるまの個性は、それを作った人たちと同じくらい多様だ。
1511年、ブリュッセルの祭りで地元の人々は、疫病が蔓延する長い冬の間の不満を100体以上の雪だるまを作ることで表現した。
その中には、性的な内容や風刺を含むものも多く、当時の社会状況が反映されていた。
ルネッサンス期にはミケランジェロも雪だるまを作る
ルネッサンス期(14~16世紀)には、10代のミケランジェロが1492年の吹雪の後、ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチのためにとても美しい雪だるまを作った。
当然のことながら数日後には溶けてしまったが、この溶けた雪だるまがフィレンツェのこの大芸術家特有の技法の鍵を握っているとされた。
この雪だるまはミケランジェロの他の彫刻作品にも影響を与えたと考えられており、「未完成の美」を象徴するものとしてアートの歴史に残っている。
今だったら、大変価値のある雪だるまだったことだろう。
世界最古の雪だるま写真
19世紀になって写真が発明されると、春がやってきても雪だるまは溶けてしまうことなく、写真の中で永遠に凍りついたまま残されることになった。
その場にいなくても、のちの人間が雪だるまの証拠を目にすることができるようになったのだ。
最古の雪だるま写真は、ウェールズ初の女性写真家メアリー・ディルウィンが1853年頃に撮影したものだ。
その他、フー・マンチュー(中国人)を表した「ミスター・スノウ」、アゼルバイジャンの巨大な雪だるま「氷河の父」、1906年のモスクワのロシア風雪だるま、オーストラリアの警察に手錠をかけられた犯罪者の雪だるま、雪でできたビクトリア女王などの写真が残っている。
その他、フィンランド、フランス、トルコ、中国、ドイツ、日本などでさまざまな雪だ
るま写真が撮影されている。
子どもや兵士、芸者など一般の人たちが溶けかけた少し不気味な雪だるまの前でポーズをとっている構図が多いようだ。
20世紀になると、男女の区別のない中性的だった雪だるまは、実際の人間の姿を写すさまざまな形で描かれるようになった。
グリーティングカード、ポスター、雑貨にも採用されるようにもなり、逆に世間の不満のはけ口のスケープゴートにされることもあった。
雪だるまの人気は現在でも残っている。チューリッヒのゼクセロイテン祭りでは、春の訪れを祝うために担ぎだされ、バーニングマン・オン・アイスのように、巨大な雪だるま像を焼いて、冬を追い払う行事がある。
映画においても、ジョルジュ・メリエスの1899年の『La Statue de Neige』から、2024年のネトフリのロマンス『ホット・フロスティ』まで、スクリーン上の雪だるまの意味合いは常に変化し続けていて、絶えることはない。
芸術人類学者アルフレッド・ゲルは、「ホムンクルスの原理」ついて説明している。
雪だるまにも同じような魔法の変化がある。空から落ちてきた白い物体をボール状に丸めて積み重ね、目には果物や石、鼻はニンジン、帽子などを頭に乗せればできあがり。ゴーレムやピノキオとは違って、雪の粘土でできた雪だるまは春がくれば溶けて土に帰っていく。写真を撮って残さない限りは。
最新の雪だるまは?
ここまで、古き良き時代の雪だるまにノスタルジーを感じていただいたが、ここからは最新の雪だるまだ。
AI生成技術が発達した今、雪だるまはカルトと化した。昔の人はこんな雪だるまが誕生するとは思いもよらなかったことだろう。
以下の映像は、デジタルクリエイターのdoopiidoo[https://www.instagram.com/doopiidoo#]さんがAIで作り上げた、カルト的雪だるまである。これも後世に伝わったりしちゃうんだろうか?
References: “How He Came to Life One Day”: Photographs of Snowmen (1854–1950) — The Public Domain Review[https://publicdomainreview.org/collection/photographs-of-snowmen/]