専門家が予測する2025年の「ブラックスワン」もし起きたら世界に衝撃を与える5つの事象
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 「ブラックスワン」とは、通常なら起こりえないと考えられていた出来事が、突如として現実となり、想像を超える衝撃と影響をもたらす現象を指す。この言葉は、リーマンショックやパンデミックのような歴史的出来事を説明するために広く使われてきた。

 2024年、ドナルド・トランプの大統領復帰や急速に進化するAI技術は、数年前なら「ブラックスワン」と呼ばれていたかもしれない。では、2025年にはどのようなブラックスワンが待ち構えているのだろうか?

 POLITICO[https://www.politico.com/news/magazine/2025/01/03/15-unpredictable-scenarios-for-2025-00196309]誌では、未来学者や科学者、外交政策アナリストたちが予測するいくつかのブラックスワンを特集している。

 これらの事態が現実になれば、世界を根底から揺るがすようなる。とにかく起きないことを祈りつつ、日本も関係するであろう5つのブラックスワンを見ていこう。

1. 史上最大のサイバー攻撃

 アメリカの認知科学者で人工知能分野での実績で知られる、ゲイリー・マーカス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%B9]氏によると、2025年、史上最大のサイバー攻撃が発生し、重要なインフラが機能不全に追い込まれるかもしれないという。

 サイバー攻撃の狙いは、身代金を要求したり、金融市場を操作したりして、莫大な利益を上げることだ。

 サイバー犯罪はすでに数100兆円規模の被害をもたらしているが、被害者によってその実態が語られることはあまりない。

 AIの出現は、この状況をさらに悪化させる恐れがある。2025年、生成AIはますます普及し、コストも低下するだろう。すなわちそれは、犯罪者が容易にそれを悪用できるようになるということだ。

 一方、こうした大規模言語モデルが「ジェイルブレイク(制限を解除し許可されていない操作やアプリケーションのインストールを行う)」や「プロンプト・インジェクション(意図的に悪意ある内容を混ぜて、AIが本来意図していない操作や応答をするよう誘導する行為)」といった攻撃にきわめて弱く、それに対する有効な解決策がまだ存在しないことも、サイバー攻撃を助長する要因となる。

 また生成AIが作成するコードも問題を引き起こす。そうしたAIツールは便利だが、しばしば開発者が生成されたコードを理解しないまま利用してしまうことがある。

これが危険なセキュリティの穴を生み出すのだ。

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2. 新たな感染症のパンデミック

 アメリカ公衆衛生協会の事務局長、ジョージ・C・ベンジャミン医学博士が予測するのは、新たな感染症パンデミックだ。

 それはワクチン接種率が低い農村地域で始まるかもしれない。当初、その感染症はインフルエンザと診断される。だが間もなくして、じつは海外から帰国した旅行者が感染源で、その地域ではすでに100人以上もの犠牲者が出ている危険なものであることが判明するのだ。

 にもかかわらず、地域の保健当局は、住民の反発や法律上の制約により、対策に消極的で、感染拡大を許してしまう。

 一方、SNSによって誤情報が拡散され、敵対的な外国勢力が郵便物を利用して、感染を広めているといったデマが広まる。

 やがて感染症は、地方から周辺の大都市にまで広がり、死者が増加。ついに学校や企業が学級閉鎖や休業を余儀なくされるようになる。

 この感染症には実験的なワクチンが存在する可能性もある。だがそれを使用するには、緊急使用許可が必要だ。

 ワクチン懐疑派の妨害もあって、行政の対応は遅れることになる。ほかに有効な治療薬があったとしても、法的保護と財政的支援の保証がないことを理由に、製薬会社はその生産をためらう。

 結果、危険な感染症は瞬く間に全国に広がり、新型コロナウイルスに匹敵するような犠牲者と、社会経済的な停滞を余儀なくされる。

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3. 市場崩壊が引き起こす世界的パニック

 ニューヨーク大学スターン経営大学院の戦略的予測の教授、エイミー・ウェッブ氏が予測するのは市場の崩壊だ。

 2025年、トランプ政権による規制緩和と政府の縮小が進む中、悪意ある勢力がAIを利用して金融市場を狙うだろう。

 AIは経済指標やリアルタイムの市場データのほか、SNSの感情分析まで組み合わせて、財務的に脆弱な企業や弱みのある企業を特定。人事・製品・財務などに関連するデマを拡散して、これに付け込もうとする。

 AIの攻撃はきわめて用意周到だ。攻撃の前にすでに数百万のシナリオを自動生成し、デマ拡散の最適なタイミングと手法を検証している。

 その上でAIが超高速取を行い市場パニックを誘発。これにはヘッジファンドが追随するが、トランプ政権は自体を軽視して、対応は後手に回ることになる。

 こうして市場が暴落すると、パニックは世界へと広がっていく。

 ロンドンや東京市場に対しても同様の攻撃が実行され、金融システム全体が不安定化することになる。

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4. 気候変動対策が当たり前になる時代

 テキサス工科大学の教授であり、自然保護団体の最高科学者を務める気候科学者、キャサリン・ヘイホー氏によると、2025年は、気候変動対策が当たり前のものとなり、社会的な「新しい常識」へと移行していく重要な年になる可能性が高いという。

 気候変動対策に消極的とされるドナルド・トランプがホワイトハウスに復帰したにもかかわらず、アメリカ全土で気候危機への対応が加速する。その背景にあるのは、気候変動に起因する異常気象や災害が深刻化していることだ。

 温暖化のリスクと、その対策の必要性が明確になる中、米国では超党派の支持が拡大。インフレ削減法によって、持続可能エネルギーへの投資は前代未聞の規模となる。しかも驚いたことにその85%がトランプ支持の地域でのものだ。

 こうした超党派の動きは、そう簡単にはくつがえらないだろう。

 気候変動に対する世論は急速に転換点に近づいており、その対策はもはや常識となりつつある。

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5. 量子コンピュータによって情報がダダ漏れに

 シカゴ大学の法学部教授、アジズ・フーク氏は、2025年に量子コンピューティングの分野で画期的な進展が起こり、世界経済と政治の地図を劇的に変える可能性を予測している。

 フーク氏によれば、中国の清華大学が2025年末に実用的な量子コンピューターを開発した場合、その技術はすぐに国家や企業によって武器化される可能性があるという。

 量子コンピューティングは現在の暗号技術を一夜にして時代遅れにし、国家間のデータ保護や通信安全性に大きな危機をもたらす。

 例えば、インターネットでよく目にする「HTTPS」の暗号化通信を守るパッドロックアイコンは、量子コンピューターによって無効化される可能性が高い。この進展は金融、政府、さらには個人情報保護の面で深刻な影響を及ぼすだろう。

 さらに、この技術が競争優位性を持つ国々によって使用されれば、既存の国際秩序が揺らぐ可能性がある。

 特に量子技術を武器化する形での経済戦争やスパイ活動が加速し、各国の対応が試される局面となる。

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 ということでこれらのブラックスワン、起きないことを祈ろう。

References: The Incredible, World-Altering ‘Black Swan’ Events That Could Upend Life in 2025 - POLITICO[https://www.politico.com/news/magazine/2025/01/03/15-unpredictable-scenarios-for-2025-00196309]

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