
飼い主が何を言おうが我が道を行くタイプに見える猫だが、実際にはちゃんとわかっている上で、無視している可能性も浮上してきた。
日本の麻布大学の動物科学研究チームが、飼い猫は餌やおやつなどの報酬を与えなくても、人間の言葉と画像を関連づけることができる、つまり言葉を速く覚えられることを実験によって発見したのだ。
しかも言葉を学び始めた人間の赤ちゃんよりも速く覚えることができるという。それでは詳しく見ていこう。
飼い猫は知っている
麻布大学の特別研究員である高木佐保氏は、過去にも、猫は一緒に住んでいる人間の人間や猫の名前を認識できることを明らかにしている。
さらに猫は、知っている人間の顔と名前を一致させることができるという。
2021年の研究では、猫は家のどこにいても飼い主の位置を把握していることが示された。
これらのことから、猫が一緒に暮らす人間にいつも興味を抱いて観察するほど、愛着があることがうかがえる。
人間の幼児に使用する単語テストを応用して猫で実験
このたびの新たな研究では、猫は人間に話しかけられた言葉の多くをちゃんと理解できている可能性が示された。
実験では、猫が物体と単語を結びつけられるかどうかを調べるために、おとなの家猫31匹を対象に短いアニメーションを見せ、生後14ヶ月の人間の赤ちゃんの単語連想能力を知るために考案された単語テストを行ってみた。
画像が表示されている間、意味不明な言葉が一緒に聞こえてくる。猫たちはこうしたアニメーションと音声を2種類見せられるが、ひとつには「ケラル」という言葉、もうひとつには「パルモ」という言葉が付随している。
パルモ?私のこと?っとドキッとしたが話を戻そう。
このアニメーションは猫が飽きて目をそらすまで繰り返し再生される。
次に猫たちに休息を与えた後、再びアニメーションを見せる。今度は画像と言葉が入れ替わっている、つまり、「パルモ」=曇り、「ケラル」=晴れのアニメーションだ。
14ヶ月の赤ちゃんよりも速い?
猫たちの様子を観察してみると、最初に覚えた「パルモ」=晴れ、「ケラル」=曇りのアニメーションを見たときよりも、画像と言葉が入れ替わっている映像のほうを長く見つめていることがわかった。
どうやら、映像と言葉が前とは違うことをちゃんと認識していて、それに戸惑って、どうしてなのかその理由を見出そうとしているかのようだ。
つまり、たとえ報酬がもらえなくても、猫が自ら進んで言葉と画像を結びつけようとしている証拠だといえる。
生後14か月の赤ちゃんの実験では、特定の単語と画像を結びつけるには16~20回程度の繰り返しが必要で20秒かかったという。
一方で今回の猫の実験では、わずか9秒間の映像と音声の組み合わせを数回見せただけで、猫たちはこれを認識していた。
ただし実験条件が異なるため、完全に比較するのは難しい
これらの実験からは、猫が人間の赤ちゃんよりも速く人間の言葉と画像を関連づけることができる可能性を示している。
だが、赤ちゃんに対する90年代の実験と今回の新たな実験とでは、直接比較できない重要な違いもある。
例えば、赤ちゃんには1音節の単語しか与えられず、見知らぬ人間のさまざまなイントネーションで発音されたが、猫の場合は自分の飼い主の3音節の言葉を聞いているといった点だ。
猫は我々が思っている以上に人間を理解しようとしている
猫と人間、どちらが速く単語を覚えるかは別として、猫が私たち人間が日常生活の中で話していることに注意を払い、私たちが思っている以上に人間を理解しようとしているらしいということは、かなり興味深い事実だといえる。
こうした能力が猫共通のものなのか、それとも個体による個性なのかは、異なる種の間の認知コミュニケーションを理解するのに役立つ可能性がある。
この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-024-74006-2]』(2024年10月4日付)誌に掲載された。
References: Cats associate human words with images, experiment suggests[https://phys.org/news/2024-10-cats-associate-human-words-images.html] / Cats Can Learn Words Faster Than Human Babies, Study Suggests : ScienceAlert[https://www.sciencealert.com/cats-can-learn-words-faster-than-human-babies-study-suggests]