
大雪の中、途中から徒歩で配達したにもかかわらず、その努力が報われず、肩を落として歩くピザの配達員に声をかけたのは地元の警察官だった。
話を聞いたところ、40ドル(6,250円)の注文に対して、もらったチップはたったの2ドル(300円)だったという。
これはあまりにも気の毒すぎると、警察官はSNSを通じて彼を支援するよう呼びかけた。するとうれしい事態が発生する。支援の輪が大きく広がったのだ。
大雪の日に受けたピザの配達
2025年1月10日、インディアナ州の町ブラウンズバーグが大雪に見舞われた日、地元のピザ店ロックスター・ピザに配達の注文が入った。雪はまだ激しく降り続いている。
だが、配達員であるコナー・ステファノフさんは、迷った末に配達を決めた。
実はステファノフさん、その日は配達をしないつもりだったという。
「今日はさすがに配達は無理だ」と思ってた。雪で道路がひどいし、できるわけないって思ってたんだ
でも結局彼は、厳しい雪の中での配達を選んだ。
アメリカではチップが収入源の従業員も
日本ではあまりなじみがないが、サービスを受けた時にチップ(謝礼)を支払う慣習があるアメリカのサービス業界では、チップを念頭に基本給が低く設定されるほど、チップが大事な収入源になっている。
つまり従業員がより稼ぐには、お客により良いサービスを提供してチップを多くもらうことが重要になる。
なおロックスター・ピザのオーナーの一人、コルビー・マシューズさんは、スタッフに悪天候のときに配達をすすめるようなことはしていないと語る。
天気が悪い日はたいていチップが増えるんです。
スタッフにとって、それは望ましい変化です。悪天候は稼ぎになるので、彼らは悪天候になると店に待機したまま家に帰りません。そのあたりのことは彼らに任せています
そして今回、ステファノフさんが配達を決めたピザの料金は合計40ドル(6,250円)だった。
アメリカのチップの相場は基本、合計額の15%から20%なので、40ドルに対しては6ドルから8ドル(940円から1,250円)程度になる。
さらにお客によっては、前述したとおり、この大雪の中でピザを届けてくれた配達員に感謝して、もっとチップをはずんでくれる可能性も充分あった。
そして彼が配達した家は、高所得者層が多く住むコミュニティーにあった。
途中から雪の中を徒歩で配達
ところが先には思いがけない困難と切ない結果が待ち受けていた。
大雪に覚悟しながら車にピザを積み、いざ出発したステファノフさんは、まず雪道運転に苦労した。それでもなんとか進み、配達先まであと少しのところで、予想外の事態が。
その先の道が、雪で滑って動けなくなったスクールバスに塞がれ、車で行けなくなっていたのだ。
だが彼はあきらめず、意を決してピザを持ち、車を降りて歩き出した。
凍えそうな寒さの中を、雪に足を取られて転びそうになりながらも、ひたすら配達先を目指した。
努力が報われず肩を落として雪の中を歩く
やっと無事に到着し、事情を話してピザを届けたステファノフさんだが、渡されたチップの額に愕然とする。
お客がくれたのはたった2ドル(約300円)。
ドアベルを押し、出てきた男性に、歩いて配達することになったいきさつを全部話しました。彼は「じゃあ除雪しないとな」とだけ言って、ドアを閉めました
その態度にもがっかりしたステファノフさんはとぼとぼと、また雪の中を15分かけて歩き、車に戻り店に帰った。
彼の努力に感激した警察官が資金集めを開始
なんとも切ない話だが、この話には続きがある。
実はステファノフさんの献身的な行動を知り、その顛末に憤慨した人物がいた。警察官のリチャード・クレイグさんだ。
スクールバスの事故のため、現場に出動していたクレイグさんは、ステファノフさんに声をかけ、雪の中を15分も歩いてピザを配達したと聞き感激した。
しかしその努力が報われず、40ドルのピザにたった2ドルのチップしか受け取らなかったことを知り、怒りがこみ上げた。
信じられませんでした。これほどの献身と仕事への姿勢は、若者の間でもまずみられません。それを聞いた時は腹が立ってしょうがなかった
420万円の支援金と応援のメッセージが集まる!
怒りに燃えたクレイグさんは即行動を起こした。
この話をTikTokで共有したのだ。
それは瞬く間に広がり、この地域を中心とした善意の人々からたくさんの「チップ」が寄付された。
その額は、当初の目標500ドル(7,800円)をすぐに超え、20日の時点で27,000ドル(約422万円)以上にもなっている。
GoFundMeでこの若者に「チップ」を寄付してくださった皆様に感謝します。 1月10日金曜日、バス事故の現場で、この若者が吹雪の中、ピザを届けるためだけに800メートル以上も歩くのを目撃しました。こうした献身は私にとって驚異的なことでした (クレイグさんのX投稿より)
一方、祖母と暮らしていて、仕事で彼女の家計も支えているステファノフさんはこうコメント。
祖母は「おかげで生活も助かるし、ほんとうにありがたい」と言っています。私も同じで、皆さんのおかげで私たちは幸せになれそうです
GoFundMeには、地元の人はもちろん、別の州の人などからもステファノフさんへの応援やクレイグさんへの感謝のメッセージが寄せられている。
「自分は5ドルしか寄付できないけど、このアイデアは大成功だ。このお金をもとにビジネスを始めて大きくしなよ!」「感謝の気持ちを持つ人はこのようにたくさんいますよ。警察官のかたにも感謝します」といった励ましの声も届いているようだよ。
アメリカでは銃犯罪など悪い一面もあるが、こういった人々の善意の輪が大きく広がるといった良い一面もある。
特に困っている人や動物を助けるための、寄付活動は積極的におこなわれており、SNSは良い一面を広げることにも役立っているようだ。
References: Sunnyskyz[https://www.sunnyskyz.com/good-news/5660/Officer-Raises-Over-20K-For-Delivery-Driver-Who-Only-Got-A-2-Tip-In-A-Snow-Storm] / Gofundme[https://www.gofundme.com/f/support-rockstar-pizza-drivers-dedication]