2025年1月3日、アメリカのルイジアナ州にあるシュリーブポート水族館で、スウェルシャークというサメの赤ちゃんの卵が孵化した。
だがこの水槽の中に、オスのサメはいない。
卵が孵化に至ったのは、単為生殖によるものなのか、それとも何か別の要因があったのか?謎深き赤ちゃん誕生に研究者たちも驚いている。
メスしかいない水槽でサメの赤ちゃんが誕生!
こちらがその「孵化」の瞬間である。飼育スタッフの助けを借りて、卵から元気な赤ちゃんが誕生した!
スウェルシャークはトラザメ科に属するサメで、日本では「ナヌカザメ(ジャパニーズ・スウェルシャーク)」と呼ばれているサメの仲間である。
生息しているのは北米のカリフォルニアから南米チリにかけての太平洋沿岸で、体長は1m前後。体にある独特な斑点模様と金色の眼が印象的なサメだ。
最大の特徴は、敵に襲われると体内に水や空気を吸い込み、膨らんで自らを守ることだ。このユニークな防御戦略が名前の由来となっている。
今回孵化したのは、メスのスウェルシャークが2匹飼育されている水槽だ。水族館のスタッフによると、どちらも最低でも3年間は、オスと接触していないという。
この水槽で、卵が初めて確認されたのは約8カ月前のこと。以来、水族館では卵を厳重な管理下で見守り続け、1月3日の孵化にこぎつけたのだそうだ。
こちらがスウェルシャークの卵である。カプセルのようなものの中に胚(赤ちゃんサメ)が入っているため、日本では「人魚の財布」とも呼ばれている。
単為生殖なのか?それともオスが関与していた?
このサメは卵生で、一度に2個程度の卵を産む。ただし、他の多くの魚類とは異なり、オスとメスが交尾を行って胎内で受精が行われる。
そのため、オスがいない環境でも、体内に保存されていた精子を使った「遅延受精(ちえんじゅせい)」が行われた可能性もある。
遅延受精とは、メスがその体内にオスの精子を生きたまま保存し、何年も経ってからその精子を使って受精することを言う。
爬虫類においてはよく見られる現象で、カメやトカゲの仲間が、交尾後数年経ってから有精卵を産むことはよく知られている。
サメの遅延受精についてはよくわかっていないものの、ナヌカザメの場合は数年間オスと接触しなくても受精卵を産む例が確認されており、スウェルシャークもおそらく同様と思われる。
もう一つ考えられるのは、「単為生殖」が行われた可能性だ。単為生殖とは、受精していない卵の中で胚が形成され、成長して孵化に至るもの。
こちらもサメやエイの仲間ではよく見られる現象で、同じ水槽にオスがいる状態でも、単為生殖が行われた例も観察されている。
成長を待ってDNA検査を行う予定
同水族館のグレッグ・バリック館長は、次のように語っている。
この状況は信じられないもので、この種の回復力を示しています。
私たちは今後数か月をかけて、これが本当に単為生殖だったのか、それとも遅延受精なのかを確認するのを非常に楽しみにしています
今回誕生したスウェルシャークがどちらのケースなのかは、今後の研究で明らかにされる日が来るかもしれない。
ちなみに、サメのおよそ3割が卵を産む卵生で、他の7割は胎内で育てた赤ちゃんを「出産」する胎生なんだそうだ。
水族館ではこの赤ちゃんに、チュマシュ語でサメを意味する「オニョコ(onyok )」にちなみ、「ヨーコ」という名前をつけたそうだ。
チュマシュ語とは、スウェルシャークの生息地であるカリフォルニア南部の太平洋沿岸からチャンネル諸島にかけて、かつて話されていた言葉である。何となく日本人には耳馴染みのある名前だよね。
現在、ヨーコはスタッフに注意深く見守られながら、元気に育っているとのこと。数か月後にはヨーコの血液検査を行って、DNAの分析を行う予定だそうだ。その結果、単為生殖なのか遅延受精だったのかが明らかにされるはずである。
まだヨーコの姿は一般には公開されていないが、大きな水槽に移ったらSNSなどでその姿を共有してくれるそうなので、検査結果と共に楽しみに待っていたい。
References: Aquarium surprised by shark born in a tank without males[https://www.popsci.com/environment/lousiana-shark-birth/]











