史上初、太陽系外惑星をとり巻く大気の三次元構造の観測に成功!
史上初めて観測された太陽系外惑星の大気の構造 ESO/M. Kornmesser

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 「WASP-121b(通称:ティロス)」は、超高温のホットジュピターで、巨大な太陽系外惑星である。

 ヨーロッパ南天天文台は超大型望遠鏡「VLT」の観測データをもとに、史上初となるティロスの大気の三次元構造のマッピングに成功した。

 ティロスをとり巻く大気は前代未聞のもので、「鉄」と「ナトリウム」と「水素」が吹き荒ぶ三層構造は、惑星の気象メカニズムの理解をくつがえす異世界だった。

 研究チームは「まるでSFから飛び出してきたかのよう」とその衝撃をニュースリリース[https://www.eso.org/public/news/eso2504/]で伝えている。

地球から900光年先にあるホット・ジュピター「ティロス」

 WASP-121b(ティロス)は、地球から「とも座」の方向へ900光年離れた恒星「WASP-121」を公転している太陽系外惑星だ。

 木星のような巨大ガス惑星だが、1年が地球の30時間に相当するほど恒星の近くに位置している。

 そのため、表面温度が非常に高温になっており、「ホット・ジュピター」に分類されている。とは言え、灼熱地獄なのは恒星に向いた昼側だけだ。その反対にある夜側はそれよりもはるかに冷たい。

 そしてそれをつつむ大気は、これまで観測されたどんな惑星のものとも違う前代未聞のものだった。

 それは三層の気流で構成されており、一番下の層ではなんと「鉄」が昼側から夜側へ向けて吹いている。

 真ん中は最速の層で、「ナトリウム」のジェット気流が吹き荒んでいる。それはティロスの自転より速く、”朝側”から”夕方側”へ加速しながら流れ、激しく大気をかき混ぜる。その凄まじさは、太陽系最強のハリケーンですら可愛く見えるという。

 そして最上層を構成するのは「水素」で、これが惑星の外へ向かって噴き出している。

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 ヨーロッパ南天天文台のジュリア・ヴィクトリア・ザイデル氏は、「このような気候は、これまでどんな惑星でもみられていません」と、ニュースリリース[https://www.eso.org/public/news/eso2504/]で語っている。

 あまりにも異世界な大気の振る舞いは、地球はおろか、あらゆる惑星の気象メカニズムの常識をくつがえすもので、まるでSFから飛び出してきたかのようだという。

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ジェット気流のすぐ下にチタンがあることも判明

 この発見は、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」に搭載された「ESPRESSO」という分光器で、4基の大型望遠鏡の光を統合することで可能になった。

 それによる観測性能は望遠鏡単体のときの4倍で、そのおかげで遠く離れた惑星の大気を詳細に観測することができたのだ。

 また意外なことに、ジェット気流のすぐ下にチタンがあることも判明している。

 これまでの観測では見つかっていなかったため、これは予想外の発見だったという。チタンは大気の奥深くに隠れていたのだと推測されている。

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 なお、今回のティロスよりも小さな、地球に似た太陽系外惑星の大気を調べるには、もっと大きな望遠鏡が必要であるとのこと。

 たとえば現在、チリのアタカマ砂漠では欧州超大型望遠鏡「E-ELT」の建設が進められている。

 そのファーストライトは2028年の予定だ。近い将来、こうした最新の望遠鏡が太陽系の外にある惑星の素顔をもっと詳しく伝えてくれることだろう。

 この研究は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-08664-1]』(2025年2月18日付)に掲載された。

References: “Out of science fiction”: First 3D observations of an exoplanet’s atmosphere reveal a unique climate | ESO[https://www.eso.org/public/news/eso2504/]

本記事は、海外の記事を参考にし、日本の読者向けに独自の考察を加えて再構成しています。

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