逆効果だった。スマホのダークモードはより多くのバッテリーを消費するという調査結果

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 「スマホのバッテリーの消費を減らすためにはダークモードに設定した方が良い」と言うライフハック動画をSNSでよく目にする。事実私もそれを見て、ダークモードにしていたのだが、最新の調査によると逆効果であることが判明した。

  画面上に黒色が多いほど消費電力が少ないため、ダークモードにした方がバッテリーがその分長持ちするというのが、これまでの定説だった。

 そういわれると納得してしまいがちだが、実際にはかえってバッテリーを消費してしまうという。それはいったいなぜなのか?詳しく見ていこう。

ダークモードが逆にバッテリーを消費してしまう理由

 今回の研究は、英国の公共放送BBCの技術研究部門「Research &Development」によって行われ、2025年2月19日に発表されたものだ。

 この研究では、参加者に「BBC Sounds」のサイトをライトモードかダークモードで閲覧してもらい、彼らが普段どのようにして画面を見ているのか分析した。

 その結果、ダークモードを利用する人は、かえって電力を消費することがわかったのだ。

 ダークモードが省エネにつながるというのは、黒い画面(暗いピクセル)は白い画面(明るいピクセル)よりも消費電力が少ないと考えられているからだ。

 暗いピクセルはそれだけ光を放っていないのだから、電力の消費が少なくて済むという考え方は理にかなっており、普通に納得できる。

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ダークモードにすると画面の明るさを上げる傾向にあるため

 なのに、なぜダークモードは省エネにつながらないのか?

 盲点だったのは、画面全体の明るさ(輝度)である。ダークモードを利用する人は、画面全体の輝度を上げる傾向にあるのだ。

 今回の研究では、ダークモードにすると、約80%の人がダークモードの際に画面の明るさを大幅に上げていたことが分かった。

 画面が暗いと視認性が下がるため、明るさを上げる「リバウンド効果(rebound effect)」が発生し、その結果、ダークモードの方が消費電力が高くなってしまうのだ。

 私も試しにダークモードからライトモードに変更したところ、明るすぎてたので、やはり「明るさ」のゲージを下げた。

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バッテリーを長持ちさせる本当に有効な方法とは?

 ではバッテリーを長持ちさせるにはどうすればいいのか?とても単純なことだ。

 研究では、バッテリーを長持ちさせる最も確実な方法は「画面の明るさを下げること」だという。

 たとえダークモードを使っていても、画面の明るさを高く設定すれば電力消費は増えてしまう。バッテリーを長持ちさせたいのなら、ダークモードの有無にかかわらず、画面の明るさを抑えれば良いのだ。

 BBCによると、画面を低輝度にすれば、輝度最大のときに比べて、電力の消費を2分の1に抑えられるそうだ。

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 BBCの研究は2021年にアメリカのパデュー大学が行った調査結果[https://www.purdue.edu/newsroom/archive/releases/2021/Q3/dark-mode-may-not-save-your-phones-battery-life-as-much-as-you-think%2C-but-there-are-a-few-silver-linings.html]とも一致している。

 この調査では、ダークモードのバッテリー節約効果は「最大輝度で使用した場合、最大輝度のライトモードと比べて最大47%の節電効果があるが、一般的な輝度設定(30%~50%)の場合は同じ輝度のライトモードと比べて3%~9%程度しか節電にならない」ことが示されていた。

 BBC研究開発部の技術者、ザック・ダットソン氏は、「環境に優しい方法を考えることは大切だが、多く出回っている一般的なアドバイスは、実際には期待通りの効果を得られない」と語る。

 ダークモードの省エネ効果に関する誤解もその一例で、我々が実際にどのように画面を見ているのか、全体的な視点から考えなければならないという。

 また大きな画面のものより小さな画面の方が消費電力は抑えられるため、小型のデバイスのほうが良いという。老眼だときついけど。 ただしギンギンに明るくしてたら同じことなので、やはり「輝度」が鍵となる。

この研究は『BBC Media Centre[https://www.bbc.com/mediacentre/2025/bbc-rd-dark-mode]』(2025年2月19日付)で紹介されている。

ダークモードは目にやさしいは本当か?

 なお、ダークモードのほうが目にやさしく、眼球疲労を軽減するとも言われているが、こちらも科学的根拠は得られてないそうだ。

 アメリカのコンピューターユーザーインターフェース、およびユーザーエクスペリエンスのコンサルティング会社、ニールセン・ノーマン・グループ[https://www.nngroup.com/articles/dark-mode/]が様々な研究論文をもとに2020年に発表した結果によると、ダークモードが必ずしも読みやすさや眼精疲労の軽減に効果的ではないことが示されている。

 文字の読みやすさは正常視力(眼鏡やコンタクトで矯正された視力を含む)を持つ人の場合、ライトモードの方が優位性が高く、小さい文字が読みやすいことがわかったそうだ。

 疲労度に関してもそうだ。

 人の瞳孔は光が明るければ収縮して小さくなり、暗ければ瞳孔は拡張して大きくなり、より多くの光を取り込もうとする。

 ライトモードでは画面が明るいため、瞳孔が小さくなりピントを合わせやすくなる。これにより、視界がくっきりし、目の負担が軽減されるという。

 カメラの絞り(F値)と同じ仕組みで、小さな絞り(瞳孔が小さい状態)ほどピントが合いやすいそうだ。

 ダークモードに見慣れちゃうと、ライトモードが逆に見づらいと感じるよね。これは、瞳孔が常に拡張モードになっちゃっていて、明るいと逆にピントを合わせづらくなってるのかもしれない。

 実際私も見づらいと感じてしまって、すぐにダークモードにもどしてしまったのだが、ライトモードにして明るさを下げて、しばらく目を慣らして様子を見てみようと思う。

 ただしライトモードの方が全てにおいて優れているというわけではない。長期的には近視のリスクを高める可能性があるという。

 ドイツのテュービンゲン大学の研究では、ライトモードで長時間読書をした場合、網膜の後ろにある「脈絡膜」という組織が薄くなることが確認された。脈絡膜の薄化は、近視の進行と関係しているとされる。

 特に、すでに近視の人はライトモードで長時間読書をすると、さらに脈絡膜が薄くなる傾向があった。つまり、ライトモードを使い続けることで、近視が進行する可能性があるということだ。

 また、視力障害者に関する研究は限られているものの、特に白内障などの疾患を持つ人にとっては、ダークモードの方が有利であるとされている。

 いづれにせよ、スマホやパソコンの画面を長時間見続けること自体が、眼球疲労を引き起こす原因であることは間違いないので、眼球疲労に関していえば、使用時間を減らすのが一番効果的なようだ。

References: Bbc.com[https://www.bbc.com/mediacentre/2025/bbc-rd-dark-mode] / Nngroup[https://www.nngroup.com/articles/dark-mode/]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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