2023年2月にトルコを襲った大地震。この地震で自宅を失った男性が、「人工の建物には住みたくない」と、天然の洞窟に居を構えた。
いざ住み始めてみると、洞窟での生活は快適そのもの。彼は同居を拒否した家族と離れ、大地震から2年経った今も、一人きりの洞窟暮らしを満喫している。
大地震で自宅が倒壊。もう人工の家には住みたくない!
2023年2月6日、トルコ南東部とシリアとの国境付近で発生した「トルコ・シリア地震」は、本震がマグニチュード7.8、その後もマグニチュード7級のものを含めた余震が1万回以上も続き、両国で大きな被害が出た。
この地震で約6万人が犠牲となり、震源地に近い地域では多くの建物が倒壊した。それからちょうど2年経った2025年2月の段階でも、まだ約65万人が仮設住宅での暮らしを余儀なくされている。
当時南部のハタイ県に住んでいたアリ・ボゾグランさん(55)も、この地震で家を失った。幸いなことに、家族に犠牲者は出なかったものの、アリさんはこの地震が原因で、人工の建物に住むのがトラウマになってしまった。
そんなアリさんは、住んでいた町の郊外で小さな洞窟を見つけた。地震でも崩れなかった、小さくて居心地の良い空間だ。
もう地震で家が倒壊するのはまっぴらだ。そう思ったアリさんは、この洞窟に住むことにした。
家族の反対を押し切り、1人で洞窟に「移住」
だが、アリさんの家族は大反対。説得を試みたものの、「普通の家に住みたい」という家族の思いを無視することはできなかった。
そこでアリさんは、自分一人でこの洞窟に引っ越した。映像を見てもらえばわかる通り、洞窟は小高い岩山の中腹にある。
入口にたどり着くには、急な岩の斜面を降りなければならない。重い水のボトルを担いで、えっさほいさと入り口を目指すアリさん。
見ている方がハラハラするが、アリさんは「こうやって斜めに下りればいいんだよ」と軽い足取りで下りていく。
洞窟の中には家財道具が揃えられており、日常の生活を送るのに十分な設備が整っている。
キッチンにはボンベ式のコンロが設置され、食品や調味料もそろっている。家族と離れて暮らすアリさんは、しっかり自炊生活をしているそうだ。
水道こそ引いていないものの、汲み置きした水で洗濯や洗い物も済ませている。流しには洞窟の外に続く排水管が設置されているが、以前浄化槽を作ろうとした際、誤って村のパイプを壊してしまったこともあるんだとか。
一度やったらやめられない洞窟生活
窓のない洞窟内は気温が一定に保たれており、外が雪が降ろうが霜が降りようが、寒さを感じることもないらしい。
私は結婚していて、3人の子供がいます。
最初の妻との間に2人、2番目の妻との間に1人です。
家族とは別居していますが、私はここで穏やかに暮らしています。毎日仕事に行きますし、皿洗いや洗濯をし、掃除をし、食事を作ります。人々から離れて、自然の中で、自然だけを相手に美しい思い出を作っています。
地震の後からもう2年間ここで暮らしていますが、ここで安らぎを見出しました。この洞窟は何千年も前から存在していますが、(地震で)崩壊したことはありません
洞窟暮らしを満喫しているアリさんだが、もちろん良いことばかりではない。周囲からは白い目で見られることもある。
無学な人たちは、私が洞窟で暮らしていることを悪く言います。でも彼らは私のことを知りませんし、一緒に座って話すこともありません。だから意見が異なるんです
蛇やネズミや虫たちとの同居生活
さらに洞窟の中には蛇も出るしネズミも来る。ある時などは蛇がベッドに入り込んでいたこともあったそうだ。だがアリさんは、そんな環境にも慣れてしまったという。
ベッドマットの下にはペットボトルが置いてあって、ベッドに侵入するネズミ対策に有効なんだそうだ。
また、篤志家がバイクを1台買ってくれたそうで、それまでは自転車に乗っていたアリさんだったが、現在はバイクで歩けるようになった。
この洞窟暮らしの様子を見たネットユーザーたちは、思い思いの感想をコメント欄に綴っている。
- 1つアドバイスさせて。洞窟の中にテントを張った方が良いと思う。少なくとも、寝ている間に蛇は入って来られないよ
- 蛇もテントの中に入ってくる可能性はあるよ
- 質の良いキャンプ用テントなら、密閉されているから侵入できないよ。安全で快適な睡眠にはテントが必須だ
- 彼を笑ったり非難したりしないでください。アッラーが誰かの無知を試されることがありませんように
- このテクノロジーの時代、洞窟に住めるような人なら何にだって対処できる。おめでとう
- 世界で最も強固で、最も平和な住まいだね
- でもどうやって洗濯機や冷蔵庫を運び込んだの?
- あの地震は私たちから多くのものを奪ったね
- 電気が来たら、ぜひYouTubeで動画を作ってほしい
- 猫を飼ってみたらどうかな、ネズミや蛇がいなくなるかも
- 犬や猫を飼ったら、ネズミや蛇はいなくなるし、安全上の問題も解決だ。でも動物を飼うには経済力が必要だけど
- どなたか慈悲深い人が、洞窟の入り口に引戸をつけて、ネズミや蛇が入って来ないようにして、さらに階段にも手すりをつけてくれたらもっと素晴らしい家になる
- そうなると洞窟じゃなくなるみたい
- でも、この洞窟の家には保険はかけられるのかな
- ていうか、この家に税金はかかるの? 家賃はいらないの?
- 需要が増せば、洞窟暮らしでも税金が課されることになるだろうね
次の目標は電気を引くこと
当面の課題は電気がないことだ。だがアリさんは既にソーラーパネルを調達しており、そのうちに太陽光発電ができるようにするつもりだという。
アリさんの洞窟にはすでに冷蔵庫や洗濯機があり、電気さえ確保できれば、より文明的な生活が送れるはずなのだ。
実は一度、地元の知事がアリさんの話を聞き、街中のコンテナハウスを提供してくれたことがあった。
洞窟での暮らしを続ける以上、今後もずっと家族と離れ離れの生活を余儀なくされるわけだが、アリさんはもう洞窟以外に住むことは考えていないそうだ。
References: Man Traumatized by Earthquakes Has Been Living in a Cave for 2 Years[https://www.odditycentral.com/news/man-traumatized-by-earthquakes-has-been-living-in-a-cave-for-2-years.html?]
本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。











