猫には友達が必要か?友達を作ってあげるべきなのか?動物行動学者が解説
パルモ家の飼い猫、もも(左)とけも(右)

猫には友達が必要か?友達を作ってあげるべきなのか?動物行動学...の画像はこちら >>

 猫のイメージは、「自由気まま」、「マイペース」、「つかみどころがない」、「クール」「孤独を好む」といったものがある。

 猫は約1万年前から人間とともに暮らしてきた。

その歴史の中で、害獣駆除の役割から、今では多くの家庭で愛される存在へと変化してきた。

 人間との関係性は深く、多くの人が猫を家族の一員として大切にしているが、飼い主的には、1匹だけだと寂しくないのだろうかと思うのが心情というものだ。

 猫は孤独を愛するとも言われているが、本当はどうなのだろう?猫は友達を必要としているのだろうか。他の種の動物とも仲良くなれるのか?

 ラ・トローブ大学の動物学者、ディアナ・テッパー氏らが、最新の研究をもとに、猫の社会性について解説しているので見ていこう。この記事が迷える飼い主を救うヒントになればいい。

猫は本当に孤独を好むのか?

 猫はかつて単独行動を好む動物と考えられていたが、現代では多くの猫が人間と生活を共にしている。

 アメリカやオーストラリアでは30%以上の家庭で猫が飼われており、多くの飼い主は猫を友人や家族、さらには「子ども」のように感じている[https://doi.org/10.3390/ijerph19010193]。

 この愛情は猫にも伝わっているのかもしれない。猫は人間のそばにいることを好み、体をすり寄せたり、一緒に遊んだりすることで愛情を示す。

 また、猫は飼い主との特別なコミュニケーション手段として、特定の鳴き声を使い分けている[https://doi.org/10.4142/jvs.2020.21.e18]という研究もある。

 しかし、猫は「クールで気まぐれ」というイメージが強く、人間以外の動物とも親しい関係を築くのか疑問に思う人も多い。

[画像を見る]

猫同士で友情を育むことができる、喧嘩には注意

 猫同士の友情は、いくつかの特徴的な行動によって確認できる。

・お互いの毛づくろいをする(社会的グルーミング)
・頭をこすりつける(ヘッドバンピング)
・一緒に過ごす時間が長い
・遊び合う

 一方で、常に威嚇したり追いかけたりする行動は、敵対的な関係を示している。

 最初は仲良くじゃれていたのが発展して追いかけっこになるのとは違い、本当に仲が悪いと猫は争いを避ける傾向にある。

 和解のための行動が少ないため、一度対立すると関係が悪化しやすのだ。

 愛猫に友達は必要だろうかと思案する飼い主さんにとって、ここは一つ大きなポイントになるだろう。

 猫同士が仲良くなってくれればいいが、そうならなかった時、おそらく修復することは難しい。

[画像を見る]

猫の友情を築く条件

 そもそも猫はどんな時に仲良くなってくれるのだろう? 野良猫を観察した過去の研究によると、猫同士が仲良くなるのは次のような状況であるという。

・どちらもメスである
・子猫の頃から一緒に育った
・血縁関係がある
・同じ場所で長期間生活している

 室内飼いの猫も同じような条件で友情を築くことができるが、去勢・避妊済みの猫では状況が変わってくる。

 避妊済みのメス同士は最も友情を築きにくく、逆に去勢されたオス同士だと友情を築きやすいという研究結果もある[https://doi.org/10.1016/S0168-1591(99)00030-1]。

[画像を見る]

猫は家の外に友達がいるのか?

 外で自由に行動する猫の社会的関係については、まだ研究が十分に進んでいない。しかし、多くの猫は縄張り意識が強く、基本的には他の猫と競争する傾向がある。とはいえ、争いを避けるためにお互い距離をとることも多い。

 一部の研究では、外で出会う猫同士の交流は基本的に穏やかであるが、食べ物が絡むとケンカが発生しやすいことが分かっている。

 また、外に出る猫は、他の猫と接触する機会が増えるため、家の中での関係にも影響を与える。例えば、一方の猫が外で知らない猫と接触すると、その匂いが原因で家の中の猫との関係が悪化することがある。

 さらに、猫が自由に外を歩き回ることは、環境や自身の安全にも影響を及ぼす。特にオーストラリアでは、猫が野生動物の生態系に与える影響が深刻な問題となっており、一部の地域では猫を屋外に出すことが禁止されている。

 また、交通事故や病気、他の動物とのトラブルなど、外での生活には多くのリスクが伴う。

[画像を見る]

猫と犬の友情も成り立つ

 犬と猫どちらも好きだという人もたくさんいる。そんな飼い主さんにとって気になるのは、猫と犬の友情が成り立つのかということだ。

 テッパー氏によるなら答えはイエスだ。実際に仲良く暮らしている猫と犬はいるし、ネット上でもそういった動画を良く見かける。

 ただ犬と猫を仲良くさせたいなら、できるだけ「早いうちに出会わせ」、かつ「少しずつお互いに慣れさせる」ことが重要であるという。

 また猫は「室内飼いオンリー」の方が良いかもしれない。と言うのも、外出が許された猫は、外で出会った犬に吠えられるなど、嫌なことを経験しがちなので、あまり犬を歓迎しないと考えられるのだ。

[画像を見る]

 では猫は犬以外の動物と友情を築くことはできるのか?

  この点、テッパー氏は詳しく触れていないが、ネット上では猫が他の動物たちと仲良く暮らしている動画も複数あるので、個体差はあるが、仲良くできるケースもあるようだ。

結局猫に友達は必要なのか?

 猫は他の動物と友情を築くことができることはわかった。では猫に友達は必要なのか?その答えは単純ではないという。

 うまいこと気が合って仲良くになってくれればいいが、失敗した時のリスクもあるからだ。

 それでも猫に友達を作ってあげたいという飼い主さんに向けて、テッパー氏はいくつかアドバイスをしている。

1. 猫同士の対面は少しずつ、飼い主の目の届くところで行う
 できるだけ第一印象をよくするよう配慮してあげねばならない。

2. 猫が安心できる環境を整える
十分な安全スペースを用意し、食事場所とトイレは静かな場所に分けて設置する。また、おもちゃや爪とぎもたくさん用意する。こうすることで、猫が奪い合って喧嘩になることを防ぐことができる。

 だが一番大切なアドバイスは、「猫のベストフレンドは飼い主自身[https://doi.org/10.1016/j.yasa.2024.06.014]」であるということだろう。

 確かに猫は、猫同士や犬などとも友情を育むことができる。だが、絶対に必要というわけではない。

 それよりも、猫にとって一番重要なのは飼い主との関係だ。

 飼い主から愛され、注目され、一緒に過ごしたくさん遊ぶ。それこそが猫にとって必要なことなのだ。それ以外の相手は、猫にとってさほど問題ではないという。

 どれほど社交的な猫でも、人間との絆が最も重要であることは間違いない。

猫が「クールで気まぐれ」と思われがちな一方で、実は深い愛情を持つ動物であることを忘れてはならない。

追記:(2025/03/21)本文を一部訂正しました。

References: Do cats have ‘friends’, or do they always vie for territory? Animal experts weigh in[https://theconversation.com/do-cats-have-friends-or-do-they-always-vie-for-territory-animal-experts-weigh-in-249013]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

編集部おすすめ