
お店で見かけた観葉植物を衝動買いしたものの、あっという間に枯らしてしまったという経験がある人は少なくないだろう。
植物を育てたいのにうまく育てることができない。
この装置は、植物の葉っぱに取り付けておくだけで、植物のSOSをセンサーで検知し、その電気信号を人に伝えてくれるのだ。
植物の発するSOS信号をキャッチ
寡黙に思える植物が案外おしゃべりであることは、これまでカラパイアでも繰り返しお伝えしてきた通り。
実際、植物とコミュニケーションを交わすデバイスも開発されているし、植物のおしゃべりの決定的瞬間が目撃されたことだってある。
植物は嫌なことに対しても黙ってはいない。トマトは傷付けば悲鳴をあげるし、辛い記憶を次の世代に伝える植物だっているし、実は雄弁なのだ。
植物は、気温の急激な変化や干ばつ、病害虫の被害を受けると、ストレスの兆候として過酸化水素を放出する。これは植物細胞に備わった防御メカニズムを発動させるためのシグナルだ。
アイオワ州立大学の研究チームが開発しているウェアラブルデバイスは、植物が発した過酸化水素を検知し、電気信号として知らせてくれる。
ウェアラブルデバイスの仕組み
ウェアラブルデバイスは、柔らかいベース部分に極小のプラスチック製マイクロニードル(微細の針)をいくつも並べた構造になっている。
マイクロニードルの表面は、キトサンと植物由来の特殊な酵素を混ぜた金でコーティングされており、過酸化水素に触れると電流が流れる。
デバイスを植物の葉っぱにつけておけば、ストレス反応が起きた時、組織内に刺さったマイクロニードルがそれを検出する。
その性能を確かめる実験では、タバコと大豆にデバイスを取り付け、病原菌(シュードモナス・シリンガエ)に感染させてみた。
するとデバイスは速やかに過酸化水素に反応し、植物のSOSを検出することに成功したという。
デバイスに流れる電流は過酸化水素の量に応じるため、ストレスの大きさを知ることもできるようだ。
さらに、このデバイスは1回の使用で終わるのではなく、最大10回まで繰り返し使用できる耐久性を持っている。
研究チームの一員であるリャン・ドン氏は、「この技術によって、1回あたり約150円という低コストで、1分以内に植物のストレス状態を測定できる」と述べている。
これにより、園芸愛好家や農家がリアルタイムで植物の健康状態を監視し、適切なケアを行うことが可能になると期待されている。
農業の未来を支える新たな技術
この技術の重要性は、ただの趣味を助けるツールに終わらないところだ。農家がリアルタイムで作物の健康を管理することもできるようになる。
現在、世界の作物生産の約20~30%は病害や害虫の被害によって失われており、その経済損失は年間約33兆円(2200億ドル)にも及ぶとされている。
今回のデバイス技術を大規模農業に応用すれば、広大な農地を歩き回ることなく、建物の中から植物の健康状態をモニターできるようになる。
また、農業分野では近年、AIを活用した監視システムや自動化ロボットの導入が進んでいるが、このデバイスと組み合わせることで、より効率的な作物管理が実現する可能性がある。
研究チームは今後、この技術のさらなる改良と実用化を目指し、より多くの作物や環境条件に対応できるようにしていく予定だ。
この研究は『ACS Sensors[https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acssensors.4c02645]』(20253月19日付)に掲載された。
References: Pubs.acs.org[https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acssensors.4c02645] / Plants can now tell you when they're stressed out | Popular Science[https://www.popsci.com/environment/plant-stress-patch/]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。